KDDIが「au Flex Style」で“とがったスマホ”を扱う理由 単に「SIMフリーを持ってきた」とは違う安心感とは(1/3 ページ)
キャリアが販売するスマホは、基本的にキャリア側の仕様にのっとったもので、一部の機種を除くと、そのキャリアごとに専用型番も付与される。それぞれのアプリも内蔵されるのが一般的だ。こうしたキャリアモデルとは別に、オープンマーケットで流通する端末を、キャリアが販売する動きが顕在化している。KDDIが4月にスタートした「au Flex Style」も、その1つだ。
au Flex Styleは、アクセサリーやIoT機器を販売する「au +1 collection」の枠組みで、オープンマーケットモデル(SIMフリーモデル)を販売するブランド。もともと、au +1 collectionでも、ASUSやTCLが手掛けるスマホを販売していたが、それを独立させてブランド化した形になる。第1弾として、Nothing Technologyの「Nothing Phone (4a)」や、OPPOの「OPPO Find N6」をそろえており、話題を集めた。
AI端末などの製品販売は、KDDIの中期経営戦略でもコンシューマー向けの「パーソナルグロース領域」に定められており、今、同社が注力している分野。au Flex Styleで販売するスマホも、その一環と捉えることができる。その方針や戦略を、KDDIでau Flex Styleを担当するコア事業推進本部 商品需給部 部長の梅垣亘隆氏と、同関連商品2Gのグループリーダー 西田麻衣氏、同コアスタッフの高久沙央理氏に聞いた。
―― もともと、au +1 collectionは、アクセサリーを販売するブランドでした。au Flex Styleの前身として端末販売も行っていましたが、なぜキャリアモデルがある中で、オープンマーケットの端末を手掛けていたのでしょうか。
高久氏 これはau Flex Styleにも通じるところがありますが、キャリアの端末は、幅広いお客さまに受け入れられるモデルを今まで提供してきましたし、これからも提供していきます。一方で、そういった端末ではアプローチできなかった、より機能面でとがったものをチャレンジの一環として採用したのが始まりになります。
梅垣氏 auのラインアップにしようとすると、ネットワークの試験から始まり、アプリのプリインストールまで、工数が増え、それなりのロットが必要になってきます。ただ、そこまでの数を用意できないものの中にも、ファンがいる製品はたくさんあります。その中で、より早く、そして確実に、コストをかけることなくお客さまにお届けしようとすると、そのまま持ってくるのが一番早い。他で出ているものを変更せず、そのまま届けています。
ただし、ネットワークの接続性だけは担保しなければなりません。「au Starlink Direct」を発表した際にお話ししていたことですが、KDDIでは、「au OPEN DEVICE DEVELOPER SITE(ODDS)」という仕組みがあり、ここでいわゆるIOT(インターオペラビリティテスト=相互接続性試験)を行っています。SIMフリーモデルも、このODDSでKDDIのネットワークでの接続性を担保した上で販売しています。
単にSIMを挿したら動きました、というのではなく、きちんと通信のプロトコルに準拠しているかどうかの試験も行っています。ある程度試験内容は簡略化されていますが、きちんと接続性を担保できるかどうかの項目については、一般にも公開しています。
西田氏 日本独自の緊急呼や、緊急地震速報への対応などは守らなければなりません。この試験を消化することで、対応できていることが担保されます。ですから、単に「SIMフリーモデルを持ってきました」というものとは安心感も違ってきます。
私はau +1 collection歴が長いのですが、パートナーの数で言えば、auモデルでお付き合いする方がよりもたくさんいらっしゃります。各パートナーから、こういうモデルがあるというお話はいただいたのですが、ODDSができるまでは指をくわえて見ているだけの状態でした。このサイトがあることで、連携を取れるようになりました。
今回、au Flex Styleとしてブランド化することで、改めて多くの方に広げていきたいと思います。緊急時に使えないということがなく、かつとがったモデルもご用意しています。
―― 実際、au Flex Styleとして始めたOPPOのFind N6は、すぐに完売してしまいました。手応えは大きかったのではないでしょうか。
高久氏 Find N6のオレンジ(ブロッサムオレンジ)は、われわれの期待を大きく超える好評ぶりでした。大変ありがたいと思っています。
―― Nothingも入れて、ラインアップが拡大しています。とがっていることは確かですが、スペック的には一般受けもしそうだと思いました。
高久氏 ラインアップの拡充は積極的にやっていこうと考えています。今まではROG Phoneのように、機能に特化したギークな端末が多かったのですが、だんだんとSIMフリーの端末を購入される方も裾野が広がっています。Nothingさんにはコアなファンもいるので、そういった方々にアプローチしていく試みとして採用しています。
梅垣氏 キャリアが取り扱うメーカーの端末は似通ってきているため、店頭の展示でも差別化ができていない状況です。そんな中、Nothingさんは楽天モバイルさんが店舗でも展開し、特色ある魅力的なメーカーだと感じていました。auショップ、au Styleの店舗に行ってみよう、足を運んでみようという動機づけになってくれればいいなということで、一部店舗では展示、販売することになりました。
―― オープンマーケットモデルは、リアルな店舗での販売が弱かったりもするので、これはNothingにとってもいい話になりそうですね。
梅垣氏 Nothingさんからも、ありがたいというお声をいただいています。われわれにとっても店舗の魅力化になり、あそこに行けば見られるという差別化にもつながります。
高久氏 Nothingさんのお話だと、認知度がまだまだこれからという状況だとうかがっています。日本の多くの方々に新しい選択肢があることを知っていただく役割ができたらうれしいですね。
梅垣氏 Nothingさんとは方向性も合致しました。
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―― あえてauから買うという点で、何か経済的なメリットはあるのでしょうか。
梅垣氏 現時点では経済的なメリットを見いだせる状況にはなっていませんが、今後は、ソフトバンクさんがやられているようなキャンペーンでPontaポイントを付与することなども検討しなければならないと考えています。
―― ただ、Find N6はOPPOから直接買うよりも安いですね。30万円を切っていたことが一部で話題になりました。
梅垣氏 意識的にあのようにしました。家電量販店で買われるとポイントが付きますが、われわれだとポイントがない。その代わりに30万円以下を意識して価格設定しています。30万円に壁が1つあるというお声は、X(旧Twitter)でも拝見しています。ただ、ポイントが付かない分安くしているのであって、プライスリーダーになろうと思っているわけではありません。
―― 買いやすさという観点だと、分割払いもあると思います。
梅垣氏 はい。基本的な部分に、au +1 collectionで培ってきた割賦があります。高額なものでも、導入部分としてのハードルは低くなると考えています。
―― 現状だと20万円までとなっていて、Find N6のような端末の割賦が組めません。先に10万円を払い、残りを割賦にするというような形にはできないでしょうか。
梅垣氏 そういったものにも対応していきたいと思います。スマホに限らず、PCなど、扱うものが高額化してきているからです。また、メモリの需給状況を見ても、価格の上昇は避けられません。
西田氏 ここ数年で、扱う商材が急速に多角化しています。15年前だとスマホのアクサセリーとしてフィルムやケースぐらいでしたが、現在はスマートTVなどの大型デバイスにも拡大、拡張しています。いろいろな売り方は、積極的に広げていきたいですね。
―― 店舗での販売もしていますが、こういった取り組みはキャリアショップを運営する代理店からも評価されているのでしょうか。
梅垣氏 はい。物販として、物販益をお出しできる座組になっています。通信の獲得収益だけでなく、物販益が上がる新たな販売モデルとして取り組んでいます。
―― KDDIの中期経営計画でも、端末販売はパーソナルグロースに含まれていました。今後もさらに広がりが出るのでしょうか。
梅垣氏 昔から変なことをしている自信はあります(笑)。スマートTVのようなものも含め、あまり今までの概念にとらわれることなく、使っていただいて楽しいものや体験価値を向上できるものを取りそろえていきたいですね。KDDIは日頃からLTV(ライフタイムバリュー)と言っているように、体験価値をいかに上げていくかを最重要視しています。個人的には、スマホの箱を開ける瞬間が一番楽しい(笑)。あのときのワクワク感は、いろんな人に体験してもらいたいと考えています。
―― そういえば、以前auショップで端末の下取りをお願いした際に、スマートバスマットをかなりプッシュされたことを思い出しました。機能的に面白かったので、思わず話を聞いてしまいました。
梅垣氏 そういったお客さまとの接点が重要になります。よりお客さまとの接点が持てるのが、ショップチャネルのメリットです。しいては、ローソンにもつながりますし、より重要視していかなければいけないと考えています。
―― au +1 collectionがローソンで販売されることもあるのでしょうか。
梅垣氏 中計の資料にも書かせていただきましたが、今、POC(新しいアイデアの実証)という形でAppleさんの純正品を30店舗で販売しています。
西田氏 KDDIの入ったビルの6階にあるローソンでも販売していますが、そこもわれわれが協力しています。
―― さすがに、これをau Flex Styleに拡大することはないですよね。
梅垣氏 コンビニ側からお話をうかがうと、扱うものの単価には限界があります。例えば、過熱式タバコのデバイス(3000円前後)でも高い部類に入るようです。そう考えると、スマホを取り扱うハードルはかなり高いですね。
一方で、今、povoの「ギガチャージカード」がご好評をいただいています。その延長線で、例えばインバウンド向けの安価なWi-Fiルーターのようなものは、可能性として考えられるかもしれません。
―― 現状、スマホから入ってそのままauの契約もできるというような流れになっていませんが、契約獲得につなげるような動きは考えているのでしょうか。
西田氏 確かに導線がまだありません。おっしゃるように、au Flex Styleはブランド化したこともあるので、オンラインショップのチームとは適宜会話をしながら、そのまま回線を選べるようにすることの検討は進めています。
―― povoは端末を販売していないので、そこからの導線もあるとよさそうですね。
梅垣氏 弊社のサイトではありませんが、中古端末を訴求する導線はあります。そういう形で、povoからの導線も作れると思っています。自社サービスの中で循環させていくことは、考えなければなりません。
キャリアモデルだと端末のバリエーションがどうしても限定されてしまう中、KDDIはオープンマーケットモデルを取り入れ、ラインアップ全体の魅力を底上げしている。メーカーとの付き合いも深いだけに、セレクトの面白さが光っている印象だ。店頭の魅力化につながっているという。
こうした取り組みが続けば、auユーザーにとって、オープンマーケットモデルが“当たり前の選択肢”になっていくかもしれない。そのためには、より高額な商品で割賦を組める仕組みや、回線契約をひも付けた割引も必要になりそうだ。インタビューでは触れていなかったが、端末購入プログラムの導入など、キャリアならではの取り組みにも期待したい。
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