米国株:アンソロピック・ショックは押し目買いの好機となるか?(土信田雅之)

 2月相場入りとなった今週の株式市場ですが、日米ともに「迷い」が感じられたり、「波乱」含みの展開となっています。

 国内株市場では、日経平均株価は週初2日(月)の取引で、節目の5万3,000円台を下回ったかと思えば、翌3日(火)には歴代5番目の上げ幅となる2,000円超の急反発を見せ、最高値を更新する場面がありました。

 そして、より荒い値動きを見せているのが米国株市場です。

<図1>米主要株価指数の値動き比較(2025年末を100)(2026年2月4日時点)

出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 ダウ工業株30種平均やS&P500種指数が最高値をうかがう動きを見せる場面があった一方で、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数の軟調さが目立ち始め、4日(水)の取引では1カ月半ぶりの安値を付けるなど、株価指数の間に「温度差」が生じています。

 日米ともに株価水準自体はまだ高値圏に位置してはいるものの、上値を追うにも下値を探るにも決め手を欠き、中途半端な印象となっています。

 また、図1を見ても分かるように、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の下落が目立っていますが、こうした値動きの背景にあるのは、これまで相場をけん引してきた「AI・半導体関連銘柄」に対する視線の変化でした。

 特に、今週の米国株市場で象徴的な出来事となった「あるショック」が、投資家の強気姿勢に冷や水を浴びせています。

AI相場のムードを変えたアンソロピック・ショック

 この冷や水の震源地は、AI企業アンソロピック社(Anthropic)が引き起こした、いわゆる「アンソロピック・ショック」です。

 同社は1月末、新型の自律型AIエージェント「Claude Cowork(クロード・コワーク)」の新機能を発表しました。このAIが市場に衝撃を与えたのは、単なる対話や補助ツールにとどまらず、「人間のようにPCを操作し、業務を完結させる能力」を実現した点にあります。

 具体的には、財務分析や法務契約書のレビューといった専門性の高い業務において、AIが自律的に複数のタスクを実行し、エクセルやワードなどのソフトウエアも人間に代わって操作してしまうというものです。

 これを受けて市場では、「人間がソフトウエアを使う時代が終わり、AIが直接業務を行えるなら、従来のSaaS(Software as a Service)企業のビジネスモデルそのものが破壊されるのではないか?」という見方が急速に高まりました。

 これにより、顧客管理ソフト大手のセールスフォース(CRM)をはじめ、会計ソフトのインテュイット(INTU)、PDFやデザインソフトのアドビ(ADBE)、業務管理のサービスナウ(NOW)など、これまで「AIの恩恵を受ける側」と思われていた優良ソフトウエア企業の株価が軒並み急落していきました。市場の一部では、こうした動きを「SaaSの死」と呼んでいるようです。

 さらに、ピークを迎えつつある企業決算でもAI・半導体関連銘柄の明暗が分かれています。

「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大テック企業では、マイクロソフト(MSFT)が決算後に下落した一方、メタ・プラットフォームズ(META)は上昇の初期反応を見せるなどまちまちとなりました(その後のメタ・プラットフォームズの株価は上昇分を打ち消す下落となっています)。

 両社とも、決算内容は悪くなかったのですが、業績が市場の期待を上回れず、成長鈍化や投資コスト増(財務リスク)がくすぶっています。

 また、半導体関連でも3日(火)の米国株取引終了後に決算を発表したアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が、営業費用の増加懸念から翌4日(水)の取引で一時17%安と急落、これにツレ安する形で、直近まで株価が好調だったマイクロン・テクノロジー(MU)などのメモリーやストレージ関連銘柄も、その上昇・拡大ペースに急ブレーキがかかり、勢いが鈍化しつつあります。

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