なぜ売れなかった!? 本気で作った『愛すべき失敗作』5選! 今見ると魅力的すぎる!!
販売不振に陥り、短命に終わってしまったクルマたち。しかし、売れなかったからといって、ダメなクルマとは限らない。むしろ、今振り返ると斬新すぎる発想や、メーカーのチャレンジ精神が詰まった魅力的なモデルが少なくないのだ。今回はトヨタ、日産、ホンダが送り出した、愛すべき「失敗作」5台を振り返ってみたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部
GMとの共同企画という珍しいスタイルで2002年に誕生した新型車ヴォルツ。当時、若者をターゲットとしていたネッツ店で販売された
トヨタが世界に誇るカローラシリーズ。その歴史のなかでも、異色の存在として記憶に残るのが2002年8月に発売されたヴォルツだ。
ヴォルツはトヨタとアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)が共同開発したモデルで、カローラ系のプラットフォームをベースに、SUVの力強さとステーションワゴンの実用性を融合させたクロスオーバーモデルである。
生産はアメリカ・カリフォルニア州のNUMMI(トヨタとGMの合弁生産会社)で行われ、日本には輸入車として導入された。アメリカではGM系ブランドのポンティアック・ヴァイブとしても販売されていた。
エクステリアは、当時のトヨタ車としてはかなり大胆。張り出したフェンダー、力強いフロントマスク、SUVを思わせる高めの車高など、いかにもアメリカンな雰囲気が漂っていた。
全長4365mm、全幅1775mm、全高1605mmというボディサイズは、当時としては幅広で存在感たっぷり。今でこそコンパクトSUVとして違和感のないサイズだが、2002年当時の日本では、ちょっと大きく見えたかもしれない。
エンジンは1.8L直列4気筒で、125psの実用型と190psの高性能型を設定。後者には6速MTも用意されており、単なるSUV風ワゴンではなく、走りにもこだわったモデルだった。
しかも4WD仕様まで用意されていたのだから、今考えればなかなか魅力的なラインナップである。
ところが、販売はまったく振るわなかった。当時の日本市場はミニバン人気が絶頂期を迎えつつあり、SUVとワゴンの中間というヴォルツの立ち位置は、消費者にとってわかりにくかったのだろう。
クラディングパネルと17インチ大径タイヤによって、スポーティさとワイド感を強調したSUVならではの力強さをアピール
さらにカローラ系でありながら、見た目はアメリカンSUV。トヨタ車らしい安心感を求めるユーザーにも、SUVの本格的な雰囲気を求めるユーザーにも、今ひとつ響かなかったのかもしれない。
結局、2004年3月に日本向け販売を終了。発売からわずか1年7カ月という短命に終わった。
しかし、現在のトヨタにはヤリスクロスやカローラクロスといった人気クロスオーバーSUVが存在する。
もしヴォルツが今の時代に登場していたら、評価はまったく違っていたのではないか。そう考えると、ヴォルツは失敗作というより、時代を先取りしすぎた不運なクルマだったのかもしれない。
3人掛け×2列シートの6人乗りというコンセプトはホンダ エディックスを先取り。だが、混迷期を迎えていた日産を象徴するかのように、僅か4年半余りで消えていった
1998年12月に登場した日産ティーノも、なかなか興味深い存在だ。当時、日産はミニバンブームに対応するため、さまざまな新ジャンルのクルマを投入していた。そのなかでもティーノは、従来のセダンやワゴンとは異なる、新しいファミリーカーのあり方を提案したモデルだった。
全長4270mm、全幅1760mm、全高1610mmというボディサイズは、現在のコンパクトミニバンに近い。しかし、ティーノの最大の特徴は、その独創的な室内レイアウトにあった。
なんと前席に3人、後席に3人が座れる「3+3」の6人乗り仕様を設定していたのだ。一般的なクルマは運転席と助手席の2人掛けだが、ティーノはその間にも座席を設け、横一列に3人が並べるようにした。
「5+1コンセプト」とされた2列6人掛けのシート
これなら小さな子供を持つ家族が、前席に親子3人で座ることもできる。発想としては実にユニークだ。
もちろん前席中央の座席は左右の座席ほどゆったりしているわけではなく、大人3人が長距離を快適に移動するには無理があった。
それでも、家族のコミュニケーションを重視した新しいパッケージングは、当時としては非常に意欲的だった。
エンジンは1.8L直列4気筒と2L直列4気筒を設定。2000年にはハイブリッド仕様も限定販売されるなど、日産はティーノにかなり力を入れていた。
ところが、販売は期待したほど伸びなかった。最大の理由は、やはり中途半端に見えてしまった商品性だろう。
広い室内が欲しいならセレナなどの3列シートミニバンがある。コンパクトで経済的なクルマなら、もっと小さなハッチバックで十分。
しかも、ティーノは全幅1760mmの3ナンバー車。1990年代末の日本では、コンパクトカーとしては幅広すぎるという印象もあった。
結果として、2003年に国内販売を終了。わずか4年余りで姿を消してしまった。しかし、ティーノの魅力は販売台数だけでは測れない。
前席3人掛けという発想は、後にホンダがエディックスで採用した3席×2列のレイアウトにも通じるものがある。今思えばティーノの前席中央の席は狭すぎたかもしれない。
家族みんなで楽しく移動できるクルマを作りたい。そんな開発陣の思いが伝わってくるティーノは、今見ても実に愛らしい存在なのである。