仙台市営バスが直面する運転士不足と全路線赤字の苦境 自動運転の導入や「まちづくり」の課題も
仙台市営バスは、苦境に立たされています。仙台市営バスは6年連続で全路線が赤字となっています。“地域の足”を守るために、人材確保の取り組みが進められる中、路線存続への課題も浮き彫りになっています。 「右スイッチいれて、ひっぱる」 高橋柾さん、25歳。今年8月に採用された、仙台市営バスの「運転士教習生」です。 この日は先輩から、タイヤやエンジン、車内設備に問題がないか、点検の手順を学んでいました。 「運転士教習生」制度は仙台市交通局が10年前から始めた採用区分です。 採用後に、バス運転に必要な大型二種免許を交通局の費用負担で取得するもので、これまでに190人以上が育成されました。 オートマ車限定の普通免許しか持っていない高橋さんも、免許の取得に向けて学んでいる途中です。 仙台市営バス運転士教習生 高橋柾さん 「基本的に運転する時はこうなんですけど、ギアを変えるときにこのレバーも使うので、あとアクセルも踏むし、クラッチとかも踏むので、大変ですね。体で覚えるしかないですね」 仙台市出身の高橋さん。高校卒業後、関東のテーマパークに就職しましたが、5年後、病気の父親を看病するため、地元に戻りました。 仙台市営バス運転士教習生 高橋柾さん 「地元で人の暮らしに役立つ仕事がしたいなって思った時に、この交通局の市バスの運転士を募集していたので。自分自身が楽しく働いて、その姿を見た人が憧れるような運転士になりたいなって思ってます」 交通局が高橋さんのような教習生を育ててきた背景には、深刻な「運転士不足」があります。 日本バス協会が試算した、全国のバス運転士の数の推計によりますと、2030年には、全国で3万6000人のバス運転士が不足するとされています。 複数の要因が重なっています。 少子化などにより大型二種免許の保有者数が20年間で4割減ったこと。 さらに「2024年問題」の影響です。 働き方改革関連で、ドライバーの労働時間の上限が厳格化され、より多くの運転士が必要になったのです。 仙台市交通局総務課 佐藤裕大課長 「やはり業界全体で規制によって確保しなければいけない人員数がそれぞれ増えている状況にあります。免許を最初から持ってる方のみを採用しようとすると、どうしても人材の奪い合いになってしまう」 交通局は待遇や採用制度の見直し、運転体験会を通じてなり手確保に力を入れてきましたが、運転士はこの10年間で、419人から385人に減少。 引退する人の数を考慮すると、今後5年間で150人ほどの採用が必要と見込まれています。 仙台市交通局総務課 佐藤裕大課長 「人材を確保するためには一定の処遇の確保は不可欠と考えておりますが、それによって費用という部分で負担が発生する。経営と人材の確保のバランスをどう取っていくかというのが非常に難しいところ」 実際、市営バスは利用者の減少などにより、6年連続、全路線で赤字となっています。 また、昨年度まで3年連続で減便を余儀なくされ、利用者の利便性にも課題がでています。 バス利用者 「年をとって車の運転も危なくなったもんですからバスを使ってますけど。でもね、ちょっと時間がね、1時間に1本とか2本とかしか無いから、それがちょっと…」 「医者通いのためにはね、バスがなくなると足がなくなるから大変なことに」 運転士不足の解決策の一つとして、近年、仙台市が力を入れているのは「自動運転」です。 現在実証されているのは、システムがハンドル操作などを制御し、事前に決められた道を走る、「部分運転自動化」まで。 緊急時などの対応として、運転士も乗車することが必要です。 市内で運転士の乗車が必要なくなるまでには時間がかかる見込みです。 宮城大学事業構想学群 徳永幸之特任教授 「ドライバー不足という点に関しては、自動運転に期待すべき点はありますけれども。それ以前にバス利用者が維持できるか、増やすことができるかというと、なかなか厳しいのかなと」 地域交通に詳しい宮城大学の徳永幸之特任教授です。 バスをめぐる問題について、郊外に住む人の増加を背景に病院や学校などが、路線と結びつかない場所に立地してきた「まちづくり」の課題を指摘します。 宮城大学事業構想学群 徳永幸之特任教授 「公共交通を軸にして、そこの沿線に行きたい施設があるというような、そういうまちづくりになっていかないと、なかなか公共交通は厳しい。まちがどうあるべきかとか、その中で交通がどういうふうにあればいいのかとか。そこをいま一度考えていく必要はあるんだろうということだと思うんですけどね」 岐路に立たされている市営バス。地域の足を守るための模索が続いています。
仙台放送