ADHDは「何回まちがえたか」より「どうまちがえたか」

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この記事で一番重要なことは?
ADHDの子どもの特徴は正解数だけでなく、誤りの続き方や反応の揺れ、探索の仕方まで見ることで、困りごとを具体的に理解できる可能性がある。
研究でADHDの子どもに見られたまちがい方の特徴は?
まちがいがまとまって続き、正解とまちがいを行き来し、問題ごとの成績のばらつきも大きくなっていました。
このゲームだけでADHDを診断できますか?
いいえ。ゲームによる評価は医師などの判断に置き換わらず、機器や環境で結果も変わるため、さらなる検証が必要です。

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ADHDの子どもの特徴を調べるとき、

「正解はいくつだったか」 「反応するまで何秒かかったか」

といった数字だけを見ることがあります。 しかし、もっと細かく、

「まちがいが続けて起きたのか」 「正解とまちがいを何度も行き来したのか」

「どんな順番で場所を探したのか」

まで見ると、これまで見えにくかった特徴がわかるかもしれません。

イラン・テヘラン大学などの研究チームは、7歳から10歳までの174人の子どもに、画面上で遊ぶ記憶ゲームをしてもらい、その一つひとつの操作を詳しく分析しました。 研究に参加したのは、ADHDと診断された子ども116人と、比較対象となる子ども58人です。

使われたのは「Honey Memory」というゲームです。 画面には、たくさんの六角形が並んでいます。

そのうち、いくつかの六角形だけが黄色くなります。

子どもは、その場所を覚えます。 数秒後には黄色が消えて、すべて同じ色になります。

そこで、

「さっき黄色だったのは、どこだったか」

を思い出して、順番にタップしたりクリックしたりします。

ゲームが進むにつれて、

覚えなければならない場所が増えたり、 場所が離れたりして、

少しずつ難しくなっていきます。

研究者らが注目したのは、単純な正解率だけではありませんでした。

  • 一度まちがえたあと、さらにまちがいが続くのか
  • 正解したあとにまちがえ、また正解し、またまちがえるというように、反応が揺れ動くのか
  • 最初のまちがいまでに、いくつ正しい場所を覚えていられたのか
  • クリックする場所から場所へ、どのくらい大きく移動しているのか

そうした細かな行動まで記録しました。 その結果、ADHDの子どもたちには、比較対象の子どもたちとは異なる、いくつかの傾向が見つかりました。

まず、覚えて正しく選べる場所の数が少なく、全体として正解率も低くなっていました。 そして特徴的だったのが、「まちがい方」です。 ADHDの子どもたちは、一つだけまちがえて次は正解するというよりも、まちがいがまとまって続くことが多くなっていました。

さらに、

正解、 まちがい、 正解、

まちがい、

というように、正しい反応と誤った反応を行き来する回数も多くなっていました。 また、ある問題ではよくできても、次の問題では大きく成績が落ちるなど、問題ごとの成績のばらつきも大きくなっていました。

一方で、意外な結果もありました。

「ADHDの子どもは、単に急いで答えているからまちがえる」

という説明ではなさそうだったのです。 最初の一回をクリックするまでには、ADHDの子どものほうが時間がかかりました。 しかし、その後のクリックを含めた平均的な反応時間や、まちがえたときの反応時間には、はっきりした差がありませんでした。

研究者らは、

「速く答えすぎたから正解率が低かった」

という単純な関係では説明できないとしています。

もう一つ興味深かったのは、場所の探し方です。 一つの実施場所では、すべての子どもに同じ配置の問題を出したため、クリックした場所から次の場所まで、どのように移動したのかも比較できました。

すると、ADHDの子どもたちは、大きく離れた場所へ移動して探していくより、

「いま選んだ場所の近くを次に選ぶ」

という、近い場所を中心に探す傾向が強くなっていました。 研究者らは、記憶した場所を確信をもって次々と選ぶというよりも、近くをたどるような探索になっていた可能性を指摘しています。

そして、この研究でもっとも興味深い結果の一つは、 難しすぎる問題よりも、「少し難しい問題」のほうがADHDの特徴をとらえやすかった

ことです。

簡単すぎれば、多くの子どもが正解できます。 逆に難しすぎれば、誰にとっても難しくなります。

その中間くらいの難しさになると、

まちがいがどのように続くのか、 正解と不正解がどのように入れ替わるのか、

どこまで安定して覚えていられるのか、

といった違いが見えやすくなりました。

機械学習を使ってADHDと比較対象の子どもを分けたところ、一つの実施場所では、簡単な問題と中程度の問題を組み合わせた場合に90.1%の正解率となりました。 とくに機械学習が判断材料として強く利用していたのは、中程度の難しさの問題で見られた、

「まちがいがまとまって起きる回数」 「まちがいが連続する長さ」

「正解率」

などでした。 ただし、この「90.1%」という数字だけを見て、

「ゲームだけでADHDを90%の精度で診断できる」

と考えることはできません。

別の場所の子どもに同じ仕組みを使うと、正解率は約70%まで下がりました。 その大きな理由の一つとして、片方ではタブレットを指で操作し、もう片方ではマウスを使っていたことが挙げられています。 実際、マウスを使った子どもたちは全体として反応が遅く、正解率も低くなっていました。

機器や実施環境が変わるだけでも、行動の数字はかなり変わってしまうのです。

研究にはほかにも重要な限界があります。 参加者数は174人と大規模とはいえません。 比較対象となった子どもは全員男子でした。

また、一つの実施場所では、比較対象の子ども全員について標準化されたADHDの評価を行っていませんでした。

さらに、難しい問題まで進めるかどうかが、それ以前の成績によって決まっていたため、最難関の問題まで到達したADHDの子どもは少なくなっていました。 そのため、今回の結果は、より多くの子どもを対象に、条件をそろえて確かめる必要があります。

それでも、この研究が示した考え方は重要です。 子どもの行動を見るとき、

「何問できたか」 「何回まちがえたか」

だけでは、わからないことがあります。

  • 一度まちがえたあと、どうなるのか
  • うまくできるときと、できないときの差はどのくらいあるのか
  • 迷ったとき、どんな順番で探すのか
  • 簡単な課題ではできていても、少し負荷が増えたときに、どのように行動が変わるのか

そこまでを見ることで、その子がどこで困っているのかを、もっと具体的に理解できる可能性があります。 ADHDを、

「集中できない」 「落ち着きがない」

という大きな言葉だけで見るのではなく、

どんな状況になると行動が不安定になるのか。 そして、どんな形でその不安定さが現れるのか。

それを一つひとつ見ていく。

研究者らは、こうしたゲームによる評価が、医師などによる判断に置き換わるものではなく、将来的には臨床的な判断を補う、客観的で利用しやすい手段になる可能性があるとしています。

(出典:Journal of Neurodevelopmental Disorders DOI: 10.1186/s11689-026-09727-8)(画像:たーとるうぃず)

たしかに、「間違いが多い」という指摘だけでは、それの繰り返しになるように思います。

この研究のように、もっと細かく考え、見ることが、かかえる困難を軽減する効果的な方法につながるように思えます。

ADHDの子どもの「話す力」、絵が物語を組み立てる助けに

(チャーリー)

記事中の困りごとや利用場面と直接関係があるものだけを表示しています。合う・合わないを確かめながらお選びください。

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この記事について

この記事は、発達障害、知的障害のある子どもの親であるたーとるうぃずの運営者が、発達障害、自閉症、ADHD、知的障害に関する研究・報道・一次情報をもとに、専門外の読者にも読みやすい日本語で再構成したものです。医療上の判断や診断を行うものではありません。必要な場合は、医療・福祉・教育の専門機関にご相談ください。

出典:Journal of Neurodevelopmental Disorders DOI: 10.1186/s11689-026-09727-8

公開日:2026年8月29日 更新日:2026年8月29日 著者:チャーリー

運営:たーとるうぃず

この記事を、うちの場合で考える

「何問できたか」だけでなく、まちがいのあとや、少し難しくなったときの様子を見ると、助け方を考える手がかりになるかもしれません。診断や評価ではなく、日常の観察として見てみましょう。

この問いで考える人: お子さん

  • まちがえたあと、お子さんにはどんな様子が見られますか?
  • 簡単な課題から少し難しい課題に変わったとき、どんな変化がありますか?
  • 迷ったときや思い出せないとき、お子さんはどのように探したり助けを求めたりしますか?

気づいたことは、「まちがいが続いた」「できるときと難しいときの差があった」「迷うと近くのものから探した」など、できるだけ具体的にメモしておくと、家庭や学校・園で助け方を相談するときに役立つかもしれません。ゲームの結果だけで判断せず、疲れ、道具、時間、周囲の環境なども一緒に見ていけそうです。

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