自民総裁選、小泉農相が立候補の意向を表明-「党まとまる環境作る」
小泉進次郎農相と林芳正官房長官は16日、自民党総裁選(22日告示、10月4日投開票)に立候補する意向を相次いで表明した。茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相に続き、4人が名乗りを上げた。
小泉氏は閣議後の記者会見で、12日に地元の後援会役員らに「私の意向を伝えた」と述べ、今後正式な表明に向けて支持する議員らと政策などを積み上げたいとした。
林氏も16日午後、立候補表明の記者会見を行い、「経験や実績を全て使ってこの国のために仕事をしたい」と述べた。具体的な政策は改めて記者会見し、発表する方針を示した。
石破茂首相の辞任表明に伴って臨時で行われる総裁選は小泉氏らに加え、高市早苗前経済安保相も立候補に向けた準備を進めている。昨年の総裁選で上位につけた小泉、高市両氏を軸に5人の争いとなる公算だ。物価高対策や米関税措置への対応に加え、少数与党の国会運営で連立拡大を含めた野党との連携の在り方などが争点になる。
16日の日本市場では円相場が1ドル=146円台後半まで上げ幅を拡大した。小泉氏が総裁選に出馬する意向を表明したことを受け、日銀が利上げをしやすくなるとの見方から円が買われた。債券相場は下落した。
高市氏はこれまでに日銀の利上げ方針に批判的な姿勢を示しており、市場関係者の間では、今後の利上げペースを緩める可能性のあるリーダーと見なす向きもある。一方、小泉氏は、日銀の金利政策に介入する姿勢は比較的薄いと見られている。
公式に見解を示していない高市氏に関しては、出馬する意志を固めたと黄川田仁志衆院議員が11日に明らかにしている。
世代交代の旗手
44歳の小泉氏は、自民の世代交代をもたらす候補と見られている。石破政権下では農相としてコメ価格の引き下げや増産への転換方針を打ち出すなど、農家や地方有権者の反発を招くこともいとわず、変革を試みてきた。
昨年の総裁選では選択的夫婦別姓を認める法案の国会提出や解雇規制の見直しを含めた労働市場改革を掲げたが、党内から反発を受けた経緯がある。
16日の会見で小泉氏は、自民は大変厳しい状況にあるとして「党内がしっかりまとまること、皆が一つになれる、そういった環境を作れるかどうかが今回は重要だ」と指摘。今回の総裁選では党内で意見の割れる政策を封印する可能性もある。
保守層
総裁選は党所属国会議員の295票と同数に換算した党員・党友票の計590票を争う。与党が大敗した参院選では「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進。総裁選では同党などに流れたとされる保守層の支持を引き戻すか、改革推進で党の刷新を前面に出すのかも問われる。
こうした中、小泉氏は、加藤勝信財務相に対し、自身の陣営の選対本部長就任を要請し、承諾を得たことも明らかにした。加藤氏は安倍晋三政権下で官房副長官、党総務会長などの要職を歴任した。加藤氏の陣営入りでリベラル色を薄める狙いがあるとみられる。
加藤財務相は16日の閣議後会見で、「今回は応援団という立場で総裁選に当たっていきたい」と述べた。昨年立候補した総裁選や財務相としての経験を踏まえ、小泉氏の支援に回る判断に至ったという。小泉氏は「心強く思っている」と述べた。
一方、既に出馬の意思を示していた小林氏は午後の記者会見で「新たな所得税制」などを柱とする公約を発表。中間層・現役世代を支援するため、期限を区切った定率減税と控除・税率構造を含めた抜本見直しに取り組む考えを明らかにした。消費税減税も、内需喚起の選択肢で俎上(そじょう)に乗せることもあり得るとした。
共同通信が11、12両日に実施した世論調査で、「次の自民総裁にふさわしい人」として高市氏と回答した人が28.0%でトップだった。小泉氏が22.5%、林氏が11.4%と続いた。
— 取材協力 Takashi Hirokawa