トランプと米国右派が「ジョージ・ソロスへの陰謀論」を拡散し続ける理由(Forbes JAPAN)

ジョージ・ソロス(95)はハンガリー生まれのビリオネアで、Open Society Foundations(OSF)創設者だ。OSFは人権と法の支配、民主主義の定着を掲げる、グローバルな助成ネットワークである。その活動は、世界各地の市民団体や研究・調査・政策提言などへ資金を配分するものだ。ソロスは、世界各地の人権・司法改革・市民参加に資金を配分してきた大規模フィランソロピスト(=公益のために寄付や助成を行う個人)であり、OSFの累計支出は242億ドル(約3.7兆円)となっている。2017年には、ソロス自身の資産から180億ドル(約2.7兆円)をOSFに移した。米国政治では進歩派の主要な支援者として知られ、保守・右派の一部の政治家や論客が批判の文脈で繰り返し取り上げる。 一方でソロスは、「抗議活動の黒幕」「資金提供者」という主張を含む根拠のない陰謀論に長年さらされてきた。本人とOSFは一貫して否定しており、陰謀論を裏付けるような信頼できる一次情報や検証可能な証拠は現時点で確認できない。こうした主張の一部は、反ユダヤ的トロープ(“ユダヤ人が世界を操る”などの定型的偏見)が絡む。ここでいうトロープとは、繰り返し使われて定型化した「お約束の表現・構図」を指す。 2025年には、トランプ米大統領がソロスやOSFを「国内テロ」の文脈で名指しし、連邦捜査を示唆した。ただし、司法省が根拠として言及した報告書にも違法行為を立証する記述は見当たらない。本稿では、トランプ政権下で高まったソロス批判の流れを追う。寄付の規模と対象を整理し、陰謀論が成立・流通してきた文脈(反ユダヤ的トロープなど)についても解説する。 ここではまず、2025年に入ってからのソロスをめぐる動きを時系列順で振り返る。 ●9月30日 トランプ大統領は、米軍の高官に対し、民主党が統治するシカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスの各都市で「内部からの侵略」が起きていると発言した。トランプは、これらの都市が自身の政権に反対する抗議活動の中で「非常に危険な場所」になったと述べ、根拠を示さないまま「多くの反乱参加者はソロスや他の人物から金を受け取っている」と主張した。 ●9月15日 JDヴァンス副大統領は、OSFが「暴力を伴う活動に関与している」団体ネットワークの一部だと主張した。ヴァンスは移民・税関執行局(ICE)職員への抗議活動を扇動した「扇動者たち」にOSFが含まれているとし、「暴力行為に関与するNGOネットワークを追及する」と述べた。 ヴァンスは、ソロスの慈善活動が2つの問題点を持つと主張。1つは「過剰な税優遇」を受けていること。もう1つは、雑誌『ザ・ネーション』に資金提供していることだ。ヴァンスによれば、この雑誌は先月暗殺された保守系活動家チャーリー・カークの発言を誤って引用したという。しかし同誌はポリティコに対し、ソロスやOSFから支援を受けた事実はないと明言している。 ●8月27日 トランプは、ジョージ・ソロスとその息子アレックス・ソロスが全米で「暴力的な抗議活動」に資金を提供したとして、組織的犯罪および汚職の罪に問われるべきだと主張した。トランプは自身のSNSに「ソロスとその精神異常者の集団は、我が国に甚大な損害を与えた」と書き込んだ。 ●3月8日 世界一の富豪であるイーロン・マスクは、ソロスと同じくビリオネアのリード・ホフマンがテスラを標的にした抗議活動を主導していると主張した。マスクは、民主党系の団体が抗議活動の背後にいると主張し、「ソロスが関与していることを証明する調査結果がある」と述べたが、具体的な証拠を示さなかった。

Forbes JAPAN
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