「梅毒」感染者増加…どんな症状?専門医「最初は陰部に傷やしこり、数週間経つと手や体に発疹が出てくる」検査のハードルを下げるには

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 近年、ある感染症が激増し、深刻な問題になっている。それは「梅毒」。厚生労働省などによると、5年ほど前から急増し、2022年から3年連続で報告数が1万件を超えている。年代別では、20代前半の女性の感染報告が突出している。

【映像】性器周辺のしこり、全身の発疹…“梅毒”の症状(実際の写真)

 感染経路は、おもに異性との性的接触。症状は、性器周辺などのしこりや全身に広がる発疹など。治療せずに放置していると、脳や心臓、血管など様々な臓器に障害を起こすことがある。

 先日行われた性感染症に関するシンポジウムでは、現役の医師が、梅毒陽性患者からのアンケートをもとにした、感染の傾向を報告。KARADA内科クリニック院長の佐藤昭裕医師は、誰でも感染の可能性はあると強調した。その上で、こまめな検査を推奨。国や自治体に対しても、保健所の人員不足や検査体制の脆弱さを指摘し、改善を求めた。

 梅毒の増加について、SNSでは「まずはパパ活とか風俗とか、原因をなんとかしろ」「男も責任をもって検査に行こう」「感染予防薬を使い始めたけど、副作用が不安」との声が上がっている。どうすれば梅毒を抑えることができるのか。『ABEMA Prime』で専門家とともに考えた。

■梅毒とは?

 佐藤医師は、梅毒の増加について、「ここ数年ずっと言われている。最初の頃は男性の同性間での性行為で移るのがメインだったが、ここ1、2年は若い女性、特に20代の方が大きく増えてきた。?それに対して男性は30〜50代ぐらいでピークを迎えている。その背景には、例えばパパ活やSNSなどの出会い系サイトの普及が1つの原因として言われている」と説明する。

 主な感染経路は、「性行為がメインだが、人によってどういう行為をするかは全然違う。例えば喉に梅毒を持っていた場合、キスでも移ってしまう。あとはパートナーが感染していた場合、自分にとって性行為の相手は1人だけど、パートナーは不特定多数との行為があってもらってきたことになる。?なので、1人の相手しか性行為はしないけれど、移ってしまうこともある」。

 さらに、「梅毒の怖いところは、他の性感染症と違って粘膜だけじゃない。通常の皮膚に梅毒が接触しても感染をしてしまう。そういった意味でも、梅毒はコンドームだけでは防ぎきれない性感染症とも言える」と付け加えた。

 どんな症状が出るのか。佐藤氏は「最初の症状は陰部に出来物や傷、しこりができる。でも、ほっといても治るので、病院に行かない人が多い。それから数週間経つと、手や体に発疹が出てくる。この段階で病院にいらっしゃる方は多い。ただ、無症状の人が多いので、そこは検査をしないとわからない」と答えた。

■性風俗店に勤務しているアイさん

 性風俗店に8年勤務しているアイさんは、2020年に梅毒に感染した経験を持つ。自覚症状はなかったが、月1回の検査で早期に発覚した。治るまでには「注射が一般的じゃなかったのか、薬を飲んで1ヵ月ぐらいかかった」と明かす。

 お店に来るお客さんについて、「意識がそんなにないのと、『俺、大丈夫』ってよく言われる」といい、「働いてる私たちは頻度が高い。接する人数も多くなってしまうが、普通の人は多分通っても月数回。頻繁に来る人ばかりじゃないので、それでもらってしまうのは相当運が悪い」。

 接客中に検査を勧めることはできないのか。アイさんは「そういうことを言うとちょっとムードが…。だから、なかなか言いにくい。お店によってはアンケートもあるので、評価が悪くなっちゃったりすることもある」と答えた。

■「日本は性の問題をオープンしにくい風潮がある」

 お笑い芸人のケンドーコバヤシは、お客側の立場から「性風俗産業ユーザーだが、すごく気を使っていて、実はいろんな検査を受けてる。お店は最近、義務化されてることがすごく多いが、問題なのは個人のパパ活や立ちんぼ。あの辺からすごく広まっているとお医者さんはおっしゃっていた。それこそ行政が、『風俗へ行こうキャンペーン』したら、ガクンと減ると思う」との見方を示す。

 港区議の斎木陽平氏は、「そう思う。きちんとした性産業にアクセスしていただく方が合理的だ」と同意し、「性産業がダメだって抑え込んでも、性欲はあり続けるものなので、それをむしろ需要して認めて、管理していく政策をした方が、実は公衆衛生的にもいいことはあると思う。でも、それを港区議会で言ったら、年配の先生方に怒られて終わる」。

 佐藤医師は、「どうしても日本は他の国に比べて、性の問題をオープンしにくい風潮がある。感染してから行くのも恥ずかしいが、それを予防するため病院に行くのは、かなりハードルが高いと思ってる。なので、“誰にも会わない”のオンライン診療を使っていただき、検査もオンライン診療で行う。薬の処方もオンライン診療でしっかり自宅に届ける。新しい性感染症予防のセーフティネットはいくつもあった方がいいので、そのうちの1つとしてオンライン診療は今始まっている」。

 予防薬については、「性感染症、梅毒、クラミジアの3つを予防する『DOXY-PEP』がある。性交後、72時間以内に2錠の抗生物質を飲むことで、梅毒・クラミジアが70〜90%程度で、淋菌が50〜60%程度は防げる。?ただ、抗生物質なので、むやみやたらに使ってしまうと耐性菌っていう問題も出てくる。なので、まずは自分自身が性感染症にかかっていないか検査をしっかりしていた上で、こういったものを使うのが大事になっている」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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