トランプ関税は幻に?あれもこれも「法的根拠がない」との判決(米貿易裁)

Image: wildpixel/Getty Images

日夜せっせと関税を上げたり下げたりしているトランプですが…。

4月にどっちゃり発表されたトランプ関税はそのほとんどが法的根拠希薄であることがわかり、5月下旬、米国際貿易裁判所に発動をブロックされちゃいました。 「関税引き上げは国会が決めることであって、大統領に決める権限はない」との司法判断です。

大統領は「麻薬や不法移民が流れ込んでアメリカやばい」と騒いで非常事態を宣言、非常時に大統領裁量で貿易を規制していいと定めた昔の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」なるものを引っ張り出してきて、関税引き上げ命令を大統領権限で発動しまくってるわけですが、よくよく考えてみたら別に国家存亡の危機でもなんでもないし、むしろ関税引き上げで経済やばくなってんじゃね?と貿易裁がバケツで水をぶっかけたかたち。

もちろんトランプ政権は即日上訴。控訴裁からとりあえず関税差し止めに待ったがかかりましたけどね…。

こんな宙ぶらりんのままじゃ、輸入に頼る企業は価格も決められなければ利益目標も立たず、工場をどの国に移転していいかの判断もできないわけでして。法廷バトルも大概にしないと在庫が底をつくのは時間の問題。スーパーもネットショップも企業も、どこまで体力がもつかは未知数です。

関税を上げたり下げたりが50回

政権交代後は関税税率が朝に夕に変わるので、フォローするのでひと苦労ですもんね…。

今回の判決がよっぽど腹に据えかねたのか、トランプは相変わらずやけくそで鉄鋼・アルミの関税を25%から50%に引き上げたりしています。こっちは別の法律を根拠にしているので判決の影響外。今んとこ、まだ自由にできるってことなんでしょうけどね…。

あまりにも関税税率の上下動が激しいのでWashington Postがトランプ就任後の関税変更発表回数を数えてみたら、のべ50回であることがわかりました。50回…! 5月半ばの統計なので、上記の鉄鋼・アルミなども加えたら、今はもっと増えているでしょう。

TACOトレード

「関税を上げれば各国首脳が血相変えて駆け参じ、好条件で交渉に応じる」というトランプの目論見とは裏腹に、根拠希薄な関税引き上げ命令は世界中の反感を買いました。特に中国・欧州は猛反撃していて交渉が難航中です。

はじめは強気でも、結局は税率を下げたり適用を延期したりしてるトランプ。これを見て、米国では「Trump Always Chickens Out(トランプは毎度ビビッて折れる)」の頭文字をとって「TACOトレード」という造語が生まれ、拡散中です。

考案したのは、フィナンシャルタイムズのRobert Armstrong論説委員。「関税上げて強がってもどうせトランプは長続きしないんだから急いで株を売る必要ない、なんなら株がガクンと下がったところで買えばいい」という意味で、多くの投資家がこのTACOをベースに投資判断を下しているとされます。読み方は「タコ」です。

面白い造語だけど、ホワイトハウスの記者会見で「TACOと呼ばれていることをどう思うか」と聞かれて大統領は苦り切ってました。あんまりTACO、TACOと刺激するとムキになって関税上げそうで、それも心配…。

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