気候変動がもたらす「新たな季節」 四季の概念を見直すときが来ていると科学者

この画像を大きなサイズで見るPhoto by:iStock

 猛暑真っ盛りの夏だが、そういえばその前の春も夏のように暑くはなかったか? 冬だってさほど寒くないし、秋はいつまで経っても涼しくならない。

 春夏秋冬という季節の流れが、現代の気候とはかけ離れてきているのではないか。そんな疑問から、「新たな季節」という考え方が学術的に提案された。

 イギリス、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの地理学者たちは、気候変動によって従来の季節感が崩れつつある現実を見据え、文化的・社会的に季節のとらえ方を見直す必要があると訴えている。

 地球にはもともと、四季という明確な季節の移り変わりが存在する。これは地球の自転軸が太陽に対して23.5度傾いていることによる。

 赤道付近ではこの変化が少ないが、温帯や極地では大きな季節の差が見られる。

 この傾きのために、1年を通じて、ある地域が太陽に近づいたり遠ざかったりする。近づいた時には昼が長くなり、太陽から受ける熱も多くなるし、遠ざかればその逆になる。その結果として春や夏、秋や冬といった四季が生まれる。

 もちろん、こうした地球の運行そのものは変わっていない。

 今回、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの地理学者たちが主張しているのは、地球の運行ではなく、従来の季節から感じられるイメージが、現代人の実感と大きくかけ離ているということだ。

 四季が豊かと言われた日本だが、春がやってきたかと思えば、すぐさま真夏のような暑さになり、夏は身の危険を感じるほどに暑い。

 秋は深まるどころか、いつまで経っても涼しくならず、冬もかつてのような寒さは感じられなくなってしまった。

 もちろんその主な要因は気候変動で、季節感の乖離は世界的なことだ。こんな実感できない時代遅れの季節感をいつまでも引きずっていていいものか?

この画像を大きなサイズで見るimage credit:Pixabay

 そこで、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究チームが提唱しているのが、今の時代に即した次の「新しい季節」の枠組みだ。

・新興季(Emergent season):これまでその地域になかった全く新しい季節パターン

・消滅季(Extinct season):従来の季節がほぼ消えたり、形を変えてしまったもの

・不整季(Arrhythmic season):時期や期間が予測不能になった季節

・変調季(Syncopated season):強さや特徴が不規則に変化する季節

 従来の季節を新たな季節で置き換える。

 一見過激な発想だが、実はそれなりの合理性がある。なぜなら現実に即した季節感を育むことで、その時期を快適に過ごせるようになるからだ。

 たとえば、衣替えになれば、あなたはクローゼットの奥からその時期にふさわしい服装を引っ張り出すだろう。

 そうすることで、その季節の寒さや暑さから身を守ることができる。だが、これは正しい季節感があってのことだ。

 世界に目を向けると、これまでになかった季節の1つの例として、東南アジアの「ヘイズ・シーズン(Haze Season)」が挙げられる。

この画像を大きなサイズで見るimage credit:unsplash

 インドネシア・マレーシア・シンガポールといった国々では、森林や泥炭の火災による大気汚染が毎年の恒例行事のようになり、今ではひとつの「季節的リスク」として社会に認識されているという。

 こうして新たな季節が一般に認知されるようになったことで、空気清浄機が普及し、その時期になれば公衆衛生キャンペーンがうたれるようになった。

 研究チームの狙いも、従来の春夏秋冬を否定し、新たなカレンダーを作ろうというのではなく、社会が季節を柔軟に捉え直すきっかけを与えることだ。

 私たちは季節に応じて衣替えをする。春夏秋冬の四季もまた、そんな衣替えの時期にきているのかもしれない。

 この研究は『Progress in Environmental Geography』(2025年6月12日付)に掲載された。

References: Journals.sagepub.com / These Are The "New Seasons" Scientists Think Are Emerging Because Of Climate Change

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

Facebookが開きます。

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

関連記事: