【安野貴博・現代の肖像】心やさしい工学(エンジニアリング)の人 チームみらい党首・参議院議員・AIエンジニア

 2月8日投開票の衆議院選挙で議席を伸ばしたチームみらい。党首・安野貴博の「現代の肖像」(AERA2025年12月15日号掲載、文=佐々木俊尚)を特別に全文公開する。 【写真】チームみらい党首・安野貴博さんの写真はこちら  AIエンジニア、起業家、SF作家。そこに今年、参議院議員という肩書も加わった安野貴博。多彩な経歴の背景には、「工学の人」ならではの哲学がある。目の前に課題があり解決方法への糸口が見えそうであれば、すぐさま手を動かしてみたい。政治への進出は、そのような実践の先にあった。 *  *  *  散歩中の何気ない会話がきっかけだった。2024年春、ちょうど東京15区などで衆院補選が行われていた時のことである。選挙の話になり、安野貴博(あんのたかひろ・35)は妻の黒岩里奈(35)に言った。 「選挙期間中ってマスコミ報道も多いし、せっかく政治について考える良い時期なのに、一票しか投じられないのってなんだかもったいないよねえ」 「一票しか?」「もっと選挙っていろんなことができるはずなのに、ひとり一票でしか関わり方がないのっておかしいよ」  東大生だった2000年代終わり、本郷キャンパスの安田講堂でウェブ学会というシンポジウムに参加したことがあった。ミクシィやツイッター(現X)などのSNSが普及しはじめ、ネットの持つ双方向のパワーが注目され始めた時期のことだ。後にAI研究の国内第一人者となる松尾豊(50)や、スマートニュースを創業する鈴木健など多彩な有識者たちが登壇していた。鈴木は『なめらかな社会とその敵』(2013年、勁草書房)という著書で、ひとり一票ではなく個人の内面に存在する多様な側面に応じて一票を分配して投票するという新しい選挙システムを提唱している。  テクノロジーによって、新たな政治のシステムが作れるのではないか。長く続いているそういう活発な議論が、安野の「一票しか投じられない」というつぶやきの背景にあった。夫婦の散歩は選挙をめぐる面白い議論にも発展しそうだったが、黒岩の受け止め方はちょっと違っていた。「珍しく評論家チックだなあ」「(政治を)口で批評するだけなのは彼のあり方とは違う」と思ったのである。  それを素直に口にした。「そんなに言うんだったら、自分で出ちゃえばいいじゃない」  安野は「何を言ってるんだろう?」と思ったが、ひと晩考えてみて「確かに自分がチャレンジする意味があるかもしれない」と考えるようになり、翌朝にはもう意思は固まっていた。「7月の東京都知事選に出る」と妻に告げた。  黒岩も一瞬は驚いたが、すぐに「いや、そう来たか! これはワクワクするしかないな」と思い直して即答した。「出ればいいじゃん!」  黒岩は言う。「やっぱり行動を起こす人、手を動かす人なんだなあと思いました。安野はどこまで行っても『工学の人』なんです」

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