なぜ中国は日本を「最大の攻撃対象」としたのか?…中国にとって「格下の存在」だった日本への「屈折した感情」(クーリエ・ジャポン)

ベネズエラ攻撃・グリーンランド領有・ウクライナ侵攻・台湾統一……トランプ、プーチン、習近平らストロングマンたちの傍若無人がまかり通る「荒れ野時代」がやってきた。 【画像】なぜ中国は日本を「最大の攻撃対象」としたのか? 「なぜ世界はここまで急に揺らぎはじめたのか?」 『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』(講談社現代新書)では、共同通信社の国際ジャーナリスト、川北省吾が、混迷する国際政治の謎を解き明かすために、国際政治学者や評論家、政治家や現場を知る実務家へのインタビューを敢行。辿り着いた答えとは? ※ 本記事は、川北省吾『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』より抜粋・編集したものです。

人民服姿の毛沢東の肖像画が掲げられた北京の天安門。1949年10月1日、毛はその楼上に立ち、中華人民共和国の建国を宣言した。2021年7月1日、毛と同じ色の人民服を着た習が同じ場所に現れた。 中国ではこの日、1921年7月の中国共産党創立から100周年を祝う記念式典が開催された。習は天安門広場に集まった7万人規模の大群衆を見下ろしながら、重要講話を語り始めた。 「同志の皆さん、友人の皆さん、中華民族は5000年以上の長きにわたる文明の歴史を持ち、人類文明の進歩に不滅の貢献をしてきました。しかし、1840年のアヘン戦争以降、中国は次第に半植民地・半封建社会となり、国家は辱めを受け、人民は苦しみ、文明は闇に沈みました。以来、中華民族の偉大な復興の実現こそが、中華民族の最も偉大な夢となったのです」

アヘン戦争当時、大英帝国は植民地のインドでアヘンを栽培し、中国大陸に輸出して利益を上げていた。清が禁輸を断行し、イギリス商人のアヘンを処分したため、英側は一方的に戦端を開く。帝国主義の幕開けを告げる侵略戦争だった。 清は17世紀の建国以来、中国大陸を300年近く統一支配してきたが、体制の〝腐食〟が既に始まっていた。大英帝国は開戦から2年ほどで難なく勝利を収め、南京条約を押し付けた。 主な内容は、①イギリスへの香港割譲 ②上海など5港の開港 ③賠償金支払い──である。典型的な不平等条約だ。清はこれを機に衰退し、1911年から始まる辛亥革命を経て12年に滅亡する。 アヘン戦争こそ、中国の「国恥」の始まりだった。西洋や日本などの帝国主義列強に蹂躙され、地べたに額を押し付けられ、第2次大戦終結後の建国に至るまで、筆舌に尽くし難い辛酸をなめた。 この間の1世紀を指して「百年国恥」と呼ぶ。習の唱える「中国の夢」には恥辱をすすぎ、昔日の栄光を取り戻し、「中華民族の偉大な復興」を成し遂げる野望が秘められているのだ。


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冷戦終結の黎明を告げる天安門事件後、中国共産党の生き残り策として編み出された愛国主義教育キャンペーンだったが、影響は海外にも及ぶ。最大の攻撃対象となったのが日本だった。 その理由ははっきりしている。イギリスが仕掛け、「百年国恥」の扉を開いたアヘン戦争より抗日戦争の方が長期に及び、中国大陸の広大な地域が戦場となり、はるかに多くの中国人犠牲者を出したからだ。 辛酸をなめた要人もいる。胡錦濤政権で首相を務めた温家宝もその一人だ。旧日本軍の侵攻後、家や祖父が築き上げた小学校は焼き払われた。温はいつも、当時のつらい体験を口にしていた。 日本への「屈折した感情」もあったと汪は言う。歴史の一時期、日本は中国を師と仰ぎ、貢ぎ物を献上する朝貢国だった。四大文明の一つである中国は長い間、「日本を格下の存在と見なしていた」。 ところが、その国が近代化に成功し、19世紀末の日清戦争で勝利した。20世紀に入ると、中国東北部に「満州国」という傀儡国家をつくった。「〝弟子〟に敗れた悔しさが自尊心を傷つけ、対日感情を複雑にした」と汪は語る。 1998年11月、愛国主義教育キャンペーンの「仕掛け人」江沢民が国家主席として初めて国賓来日し、宮中晩餐会に出席した際の〝事件〟は、関係者の間で今も語り草となっている。 未来志向のお言葉を述べられた天皇陛下(現在の上皇さま)に対し、江は「日本軍国主義は対外侵略拡張の誤った道を歩み、中国人民とアジアの他の国々の人民に大きな災難をもたらした」と返した。(注7) 中国では90年代から反日デモが断続的に発生し、2000年代には頻発した。愛国主義教育による思想改造が影響したのは確かだろう。「社会の主旋律」となった愛国主義思想は、大きな副作用ももたらした。 注6 『鄧小平文選 1982–1992』(テン・ブックス)P307~312 注7 1998年11月26日配信の共同通信記事

Shogo Kawakita

クーリエ・ジャポン
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