年間300万人訪れる高尾山でもクマ出没…東京都が公表する「くまっぷ」でわかる「目撃情報多数」の要注意エリア(プレジデントオンライン)|dメニューニュース

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ramustagram

PRESIDENT Online 掲載

今年8月、東京都西多摩郡奥多摩町の川で釣りをしていた50代の男性が、クマに襲われる被害が発生した。北海道や東北地方だけでなく東京都内でもクマの出没件数は増えている。都内に生息するクマの実態とはどのようなものか。ライターの中野タツヤさんが取材した――。

■東京都内でも「クマ被害」が発生

もはや、「東京だけは安全」とは言えなくなったのだろうか――。

北海道・知床半島の羅臼岳で8月14日、都内在住の26歳男性がヒグマに襲われ死亡するという痛ましい事件が発生したが、その後もクマによる被害は日本各地で相次いでいる。9月2日には岐阜県中津川市で帰宅途中の男子高校生がクマに襲われ怪我をするという事件が発生し、地域社会を震撼させている。

実は東京都内でもクマ被害が発生している。8月23日に奥多摩で渓流釣りをしていた男性がツキノワグマの子グマに襲われ、顔を引っかかれる事件が発生した。怪我の程度について「血の雨」という報道もあったが、男性は青梅市の病院で手当てを受け、命に別条はなかった。

場所は奥多摩町の「奥茶屋キャンプ場」から北西に200メートルほど行った、大丹波川沿いの地点で、埼玉県との県境付近、ギリギリ都内にあたる。

■世界的にも珍しい「クマが生息している首都」

都内に住んでいる方はあまり意識しないと思うが、実は東京都内にはツキノワグマがいる。

東京都HPによると、多摩地域(奥多摩町、檜原村、あきる野市、青梅市、八王子市、日の出町)にはツキノワグマが生息しており、東京都は世界でも珍しい「クマが生息している首都」であるという。

東京都の資料によれば、東京都内のツキノワグマの棲息数は「平均値161頭(128〜181頭)」(2020年の調査結果)とされている。

161頭前後という数字は、決して多いものではなく、東京都はツキノワグマを絶滅危惧種と評価している(※)。

しかしながら、「だから都内は安全」とはならず、都内でも長年にわたりクマ被害が発生しているのが実情だ。

※:東京都の保護上重要な野生生物種(東京都レッドリスト2020年版)において、南多摩地域で絶滅危惧2類(VU)、西多摩地域で準絶滅危惧(NT)として評価。 「絶滅危惧2類(VU)」とは、「現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来『絶滅危惧1類』のランクに移行することが確実と考えられるもの」。

「準絶滅危惧(NT)」とは、「現時点での絶滅危惧度は小さいが、生息条件の変化によっては『絶滅危惧』として上位ランクに移行する要素を有するもの」。


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■昨年度は211件のツキノワグマ目撃情報

環境省の資料によれば、東京都内では平成20年(2008年)に1件、平成22年(2010年)に1件、平成26年(2014年)に1件、平成29年(2017年)に1件、令和元年(2019年)に2件、令和4年(2022年)に2件、今年1件(冒頭でご紹介した奥多摩での事故)と、ここ18年間で累計9件のクマによる事故が起きている。死亡事故は発生していない。

ちなみに、日本各地でクマ出没件数が増加傾向にあるとされるが、東京都内でもクマ目撃件数は増えている。

東京都の資料によれば、2024年度には211件のツキノワグマの目撃情報があったとされている。

2025年の目撃件数は、読売新聞の報道によると、奥多摩町だけで7月の時点で約70件に達しているという。2024年には年間約130件だったことを考えると、少なくとも例年並みか、ややハイペースでクマの出没が続いていると考えられる。

■「TOKYOくまっぷ」を見れば一目瞭然

東京都は都内のクマ目撃等情報を地図上にマッピングした「TOKYOくまっぷ」を公開している。

青い丸印は「3か月以前」、黄色の丸印は「3か月以内」、赤い丸印は「1か月以内」をあらわしているが、クマ目撃等情報は多摩地域全体に広く分布していることが分かる。

特に日の出町周辺において、「1か月以内」を示す赤い丸印が多く見られる。

日の出町はあきる野市の西側に位置し、秩父多摩甲斐国立公園の玄関口にあたる。1983年に当時の中曾根康弘首相とアメリカのロナルド・レーガン大統領が会談し、「ロン―ヤス」関係をアピールしたことで有名な「日の出山荘」はこの地にある。

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