米ドル/円は150円割れへじり安か。ベッセント米財務長官が介入否定も、参加者の多くはレートチェックだけと認識。米ドル/円急落でも、110円超え目指す豪ドル/円も注目
みなさん、こんにちは。
1月23日(金)、米ドル/円は159.23円まで上昇した後、わずか3日間で152.10円まで約7円もの急落を見せました。
ヘッジファンドの間に走った衝撃は、日本の政府・日銀による円安けん制そのものではありません。決定的だったのは「NY連銀が米ドル/円に関してレートチェックを行った」との観測が市場に広がったことです。
【※関連記事はこちら!】 ⇒米ドル/円は150円割れ目指して戻り売り! ベッセント米財務長官の「6σ級の変動」発言とNY連銀のレートチェックは、「米国主導の円買い介入」を連想。上値は当面重い(1月26日、西原宏一&叶内文子)
(出所:TradingView(トレーディングビュー))
レートチェックとは、中央銀行が為替介入の準備として市場参加者に為替レートを照会する行為で、「介入シグナル」として受け止められます。
しかし、今回特に市場を驚かせたのは、米ドル/円のレートチェックを米国のNY連銀が行ったという点です。
これは極めて異例です。円の為替介入は通常、日本の財務省と日銀が主導するものであり、米国の連銀が関与することは滅多にありません。
つまり、基軸通貨国である米国が、高市政権をサポートする形で日本と協調して為替介入に動く可能性が意識されたわけです。
ヘッジファンドにとって、これは完全に想定外のシナリオでした。日本単独の介入であれば、過去の経験から「一時的な円高で終わる」と高をくくっていたところ、米国まで動き出す可能性が浮上したことで、ポジション調整を余儀なくされたのです。
トランプ政権は景気の足を引っ張る米金利上昇を避けたい。円安の行き過ぎ抑制が、結果的に米金利上昇を防ぐ計算が働いた
それでは、なぜベッセント米財務長官はこのタイミングでレートチェックを指示し、高市政権をサポートしたのでしょうか。
ダボス会議での同長官の発言が鍵を握っています。「足元の金利上昇の震源地は日本の債券市場であり、その変動は6σ(※)」。この発言から読み取れるのは、日本国債市場の混乱による米金利上昇への懸念です。
(※6σ(6シグマ)とは、統計学上約5億回に1回しか起きない事象のこと)
日本の長期金利が急騰すれば、日本の投資家が米国債を売却して資金を本国に戻す動きが加速するのではという連想が働きます。これが米国債価格の下落、つまり米長期金利の上昇につながります。
トランプ政権にとって米金利上昇は景気の足を引っ張る要因であり、避けたいシナリオです。加えて、円安が進みすぎれば、日本が外貨準備の米国債を売却して円買い介入を行う可能性も高まります。
つまり、円安の行き過ぎを抑制することが、結果的に米金利上昇を防ぐという計算が働いたと考えられます。
さらに重要なのは、トランプ政権にとって高市政権が重要なパートナーであることです。高市政権は大規模な対米投資を表明しており、トランプ政権としては政治的にアシストする意図が強く働いたとみられます。
ヘッジファンドは、2月8日の衆院選まで米ドルの上値を追えず、短期的には米ドル/円の売り仕掛け活発化の可能性
この米国の姿勢変化を受けて、ヘッジファンドの戦略は変化しています。
多くのファンドは、少なくとも2月8日(日)の衆議院選挙までは、米ドル/円の急落リスクがあるため、米ドルの上値を追えないとの判断に傾いています。
むしろ、短期的には日米合同の円安阻止の動きに同調して、米ドル/円の売りを仕掛ける動きを活発化させる可能性があります。最初のターゲットは150円割れです。
(出所:TradingView)
この見方を後押ししているのが、米ドル全体の弱含みです。1月27日(火)、トランプ米大統領は「米ドル安は懸念していない。米ドルは好調だ」とコメントしましたが、この発言はかえって米ドル売りを加速させる結果となりました。
ユーロ/米ドルは一時1.20ドル台を回復し、2021年6月以来の高値を記録。ドルインデックスの下落率は、トランプ米大統領が相互関税を発表して市場が混乱した2025年4月以来の大きさとなっており、「米ドル離れ」の様相を強めています。
(出所:TradingView)
その背景には、(1)30日期限のつなぎ予算を巡る米政府機関閉鎖リスク、(2)グリーンランドを巡る米欧対立懸念、(3)NY連銀のレートチェックが意図せず米ドル安を加速させてしまったという3点があります。
ベッセント米財務長官が米ドル安加速がけん制も、米ドル/円の戻りは限定的
前述のような環境下、米ドル安が加速するかに見えた1月28日(木)、ベッセント米財務長官が登場し、以下のように語りました。
ベッセント米財務長官は、米国が外国為替市場でドル売り・円買い介入を検討しているとの観測を打ち消し、従来の「強いドル政策」を維持していると強調した。CNBCとのインタビューで、ドル・円相場への米国の介入について質問され、「絶対にしていない」と回答。そうした措置を取る可能性があるかとの質問に対しては、「強いドル政策を維持していると言う以外にコメントしない」と語った。 (出所:Bloomberg)
この米財務長官のコメントで、米ドル/円は踏み上がり一時154円台を回復しました。
ベッセント米財務長官が「米ドル/円への米国の介入は『絶対にしていない』」と回答したことで、米ドル/円は下げ止まったのですが、もともと多くの参加者はレートチェックだけで、米国が米ドル/円相場に介入していると思っていたわけではありません。
この意味においては、米ドル/円が反発する理由もありませんので、ショートカバーの後の米ドル/円はじり安となっています。
(出所:TradingView)
米ドル/円は150円割れへじり安の展開。年初から底堅く推移している豪ドル/円は110円を超えられるかに注目
今回の日米レートチェック報道で、米ドル/円が一気に7円強急落する中、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も一時大きく値を下げました。
ただ、米ドル/円の急落を横目に、本稿執筆時点での豪ドル/円は108.00円レベルで推移しており、110円をうかがう展開となっています。過去のコラムで今年(2026年)の注目通貨としてピックアップした豪ドル/米ドルが、当初のターゲットであった0.7000ドルをあっさり回復していることが要因です。
【※関連記事はこちら!】 ⇒【2026年のFX予想】豪ドル/円に注目! RBAがタカ派に転じ、リスク再始動の年で反発しそう。欧州通貨のクロス円も続伸し、スイスフラン/円は200円の大台超えの公算大(2025年12月11日、西原宏一)
クロス円は昨年まで、当コラムで推していたスイスフラン/円を中心に、欧州通貨のクロス円がオセアニア通貨のクロス円より圧倒的に強い状況が続いてきました。
スイスフラン/円の上昇トレンドは変わりませんが、最初のターゲットだった200円に到達。いったん調整に入る可能性もあるため、2026年前半は豪ドル/円がもっと注目を集めるのかもしれませんね。
(出所:TradingView)
過去のコラムでご紹介した「1月転換」のアノマリーどおり、今月(1月)の米ドル/円は反落しており、戻り売り方針。今年注目通貨である豪ドル円の動向にも注目です。
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