高市首相が衆院解散へ 大義欠いた権力の乱用だ

自民党の役員会に臨む高市早苗首相(奥中央)。右から有村治子総務会長、麻生太郎副総裁、奥左から小林鷹之政調会長、鈴木俊一幹事長=同党本部で2026年1月6日午前10時52分、平田明浩撮影

 国民の暮らしを顧みず、解散を強行しようとしている。大義は見当たらず、禁じ手に近い。権力の乱用だと言わざるを得ない。

 高市早苗首相が、23日召集の通常国会で早期に衆院を解散すると与党幹部に伝えた。週明けの記者会見で正式表明する。

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2025年度補正予算案が審議された衆院予算委員会。中央は質問に答弁する高市早苗首相=国会内で2025年12月11日午前9時35分、平田明浩撮影

 解散理由として挙げられているのは、首相交代と政権枠組みの変更である。

 衆参両院選挙で大敗した石破茂前政権が退陣し、昨秋に高市首相が選出された。その際に公明党が連立を離脱し、自民党は日本維新の会と新たな合意を結んだ。

 首相の掲げる「責任ある積極財政」などの政権運営方針や、自維合意で列挙された右派的政策などが、選挙での審判を受けていないのは確かだ。

 それならば、なぜ昨年中に解散しなかったのか、つじつまが合わない。連立合意の多くは具体化されておらず、国民が評価するための材料も乏しい。政権発足3カ月目という中途半端さを正当化できまい。

「予算審議前」の異常さ

 衆院で自維が過半数ぎりぎりの勢力にとどまる中、首相は「政治の安定」の必要性について強調してきた。参院で与野党が拮抗(きっこう)する状況は当面変わらないが、衆院選で勝利すれば求心力が強まるとみている。

 政権基盤の弱い首相にとって、高い内閣支持率を維持していることが最大の支えだ。有権者の「期待値」が剥げ落ちる前に、権力の座を固めたいというのが本音ではないか。

 際立つのは、わざわざこの時期に国政選挙を行うことの異常さである。

 本来であれば、通常国会で予算が審議される1~3月は、首相や閣僚が連日、野党の追及にさらされる。高市政権も、予算の膨張に伴う物価高や財政悪化への懸念、対中国、対米国など国際情勢への対応が厳しく問われたはずだ。

 スキャンダルや失言も求心力低下につながる。与党の政治資金問題や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民の関わりなども改めて取り沙汰されている。

 予算審議前の解散には、国会論戦で失点を重ね、有権者の支持を失うことを避けようとの思惑が透けて見える。支持率が高いうちに議席増を狙う「自己都合解散」だと言われても仕方がない。

 首相が年度内成立を訴えていた来年度予算案の審議は、例年より1カ月程度は遅れる。成立が4月以降にずれ込む公算が大きく、弊害は多い。

 過去、多くの政権は国民生活に直結する予算を重視し、年初の解散・総選挙は自重してきた。永田町でも解散は今春以降との見方が大勢だったが、首相は野党への「不意打ち」戦術を優先した。

 補正予算の執行も途上だ。首相が「効果を実感してもらう」としていた物価高対策などは、国民にまだ届いていない。

 各自治体は、政府予算案を踏まえて自前の予算策定に追われる時期だ。煩雑な選挙事務との両立を迫られ、悲鳴が上がる。

 厳冬期の衆院選では、投票率の低下も懸念される。若い世代にとって大切な受験期とも重なる。

問われる自民政治の姿

 解散権を巡る問題も改めて浮かんだ。内閣不信任決議案可決によるもののほか、憲法7条の解釈上、「首相の専権事項」としての解散も認められてきた。都合の良い時期を選び、恣意(しい)的に解散することの弊害が指摘される。

 現在の衆院議員は任期4年の折り返しにも達していない。解散すれば、在職日数は現憲法下で3番目に短く、「7条解散」としては最短になる。

 特に近年の自民政権の下では、トップの思惑で毎国会のように解散論が浮上する。選挙目当ての人気取りで政治の方向性が迷走し、長期的視野を欠いている。選挙の都度、数百億円の国費が投じられることも見過ごせない。

 投開票日が最速の2月8日となった場合、解散からの期間も戦後最短の16日間だ。与野党の公約は生煮えとなり、政策論争も深まりにくくなってしまう。

 権力維持を優先してのなりふり構わぬ振る舞いは、前言を翻して就任直後に解散した石破前政権と変わらない。それでも「国民のため」だと言い張るつもりなのか。

 来る衆院選において、まずは首相のそうした政治手法が問われなければならない。

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