高市首相が衆院解散へ 大義欠いた権力の乱用だ
国民の暮らしを顧みず、解散を強行しようとしている。大義は見当たらず、禁じ手に近い。権力の乱用だと言わざるを得ない。
高市早苗首相が、23日召集の通常国会で早期に衆院を解散すると与党幹部に伝えた。週明けの記者会見で正式表明する。
Advertisement解散理由として挙げられているのは、首相交代と政権枠組みの変更である。
衆参両院選挙で大敗した石破茂前政権が退陣し、昨秋に高市首相が選出された。その際に公明党が連立を離脱し、自民党は日本維新の会と新たな合意を結んだ。
首相の掲げる「責任ある積極財政」などの政権運営方針や、自維合意で列挙された右派的政策などが、選挙での審判を受けていないのは確かだ。
それならば、なぜ昨年中に解散しなかったのか、つじつまが合わない。連立合意の多くは具体化されておらず、国民が評価するための材料も乏しい。政権発足3カ月目という中途半端さを正当化できまい。
「予算審議前」の異常さ
衆院で自維が過半数ぎりぎりの勢力にとどまる中、首相は「政治の安定」の必要性について強調してきた。参院で与野党が拮抗(きっこう)する状況は当面変わらないが、衆院選で勝利すれば求心力が強まるとみている。
政権基盤の弱い首相にとって、高い内閣支持率を維持していることが最大の支えだ。有権者の「期待値」が剥げ落ちる前に、権力の座を固めたいというのが本音ではないか。
際立つのは、わざわざこの時期に国政選挙を行うことの異常さである。
本来であれば、通常国会で予算が審議される1~3月は、首相や閣僚が連日、野党の追及にさらされる。高市政権も、予算の膨張に伴う物価高や財政悪化への懸念、対中国、対米国など国際情勢への対応が厳しく問われたはずだ。
スキャンダルや失言も求心力低下につながる。与党の政治資金問題や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民の関わりなども改めて取り沙汰されている。
予算審議前の解散には、国会論戦で失点を重ね、有権者の支持を失うことを避けようとの思惑が透けて見える。支持率が高いうちに議席増を狙う「自己都合解散」だと言われても仕方がない。
首相が年度内成立を訴えていた来年度予算案の審議は、例年より1カ月程度は遅れる。成立が4月以降にずれ込む公算が大きく、弊害は多い。
過去、多くの政権は国民生活に直結する予算を重視し、年初の解散・総選挙は自重してきた。永田町でも解散は今春以降との見方が大勢だったが、首相は野党への「不意打ち」戦術を優先した。
補正予算の執行も途上だ。首相が「効果を実感してもらう」としていた物価高対策などは、国民にまだ届いていない。
各自治体は、政府予算案を踏まえて自前の予算策定に追われる時期だ。煩雑な選挙事務との両立を迫られ、悲鳴が上がる。
厳冬期の衆院選では、投票率の低下も懸念される。若い世代にとって大切な受験期とも重なる。
問われる自民政治の姿
解散権を巡る問題も改めて浮かんだ。内閣不信任決議案可決によるもののほか、憲法7条の解釈上、「首相の専権事項」としての解散も認められてきた。都合の良い時期を選び、恣意(しい)的に解散することの弊害が指摘される。
現在の衆院議員は任期4年の折り返しにも達していない。解散すれば、在職日数は現憲法下で3番目に短く、「7条解散」としては最短になる。
特に近年の自民政権の下では、トップの思惑で毎国会のように解散論が浮上する。選挙目当ての人気取りで政治の方向性が迷走し、長期的視野を欠いている。選挙の都度、数百億円の国費が投じられることも見過ごせない。
投開票日が最速の2月8日となった場合、解散からの期間も戦後最短の16日間だ。与野党の公約は生煮えとなり、政策論争も深まりにくくなってしまう。
権力維持を優先してのなりふり構わぬ振る舞いは、前言を翻して就任直後に解散した石破前政権と変わらない。それでも「国民のため」だと言い張るつもりなのか。
来る衆院選において、まずは首相のそうした政治手法が問われなければならない。