メタのAI「Muse」が利用者1000万人突破、ウォルマートが期待しアマゾンは拒絶する理由(Forbes JAPAN)
AIが商品の候補を探し、価格を比較し、購入手続きまで代行する。メタ(Meta)のパーソナルAIエージェント「Muse」は、消費者が買い物のどこまでをAIに任せる用意があるのかを試す存在になりつつある。米国とカナダでは、わずか6週間で1000万人を超える消費者がMuseに登録した。Museは人間の秘書のように利用者に代わって自発的に作業を進め、商品価格を継続的に監視したり、食品を補充したりできる。予定と予算に合う旅行も計画する。利用者が直接操作していない間にも処理を進めるが、購入には本人の最終承認が必要だ。注:メタは日本時間2026年10月23日にMuseの国内提供を開始した。日本で連携できるサービスには、Gmail、Googleカレンダー、Instagramがある。買い物や旅行関連の連携先としては、Stripe、Shopify、Trip.com、Agoda、Klookも挙げている。国内サービスでは、家計・資産管理サービス「マネーフォワード ME」が2026年10月26日にMuseとの連携を開始した。利用者が接続を許可すると、Museとの対話を通じて入出金や資産のデータを参照し、支出傾向や資産構成の確認、目標に向けた計画づくりに活用できる。金融商品の売買や出金・振込はできない。フリーマーケットアプリ「メルカリ」と「チケットぴあ」について、メタは連携を進めると発表しているが、両サービスの連携開始は確認できていない。Muse自体はiOS、Android、ウェブ版で利用できる。詳細はメタの公式発表とマネーフォワードの連携発表を参照。■メタのMuseが買い物の新たな入口になりつつあるMuseの週間利用者の4分の1超は、実際に商品の購入や旅行予約などを行っている。旅行予約を含む取引の平均金額は200ドル(約3万1500円)を超える。サービス開始後の最初の1週間には取引量が予想を大きく上回り、メタは決済サービスを提供するStripeと協力して信用枠を引き上げ、需要に対応することにした。メタの最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグは、2026年第3四半期の決算説明会で「成長は引き続き力強く、ほぼ毎日、App Storeで首位になっている」と述べた。「利用状況と継続率も好調な滑り出しだ。Museの設定を済ませた人の約25%が、どの日をとっても利用している。初期の利用者を見ると、利用期間が長くなるほど継続率は高まる傾向にある」と説明している。●Museには大手小売企業だけでなく小規模ネットショップも参加Museの急速な普及に伴い、提携する小売企業が増えている。ウォルマートに加え、Best Buy、Sephora、Wayfair、Gap、Ulta Beautyが参加している。American Eagle Outfitters、Dick’s Sporting Goods、ファナティクス、マイケル・コースも提携先に名を連ねる。ネットショップを開設・運営できるサービス「Shopify」を利用する店舗も、所定の条件を満たせば参加できる。Shopify上で消費者へ直接商品を売る小規模事業者にとっても、大きな販売機会となる。●Museは買い物客と小売企業のAIをつなぎ、購入成立で手数料を得る小売企業にとってMuseは、単に販売経路を追加するサービスではない。メタのFacebookやInstagramが消費者の商品探しの入口となったように、顧客がブランドや販売店と接する新たな入口になる。FacebookやInstagramは広告で消費者の関心を収益に変えてきたが、Museは仲介した購入が成立すると収益を得る仕組みだ。参加する小売企業は、成立した取引に対して手数料を支払う。
AIエージェントの開発競争を大きく変える可能性があるのは、買い物客のMuseと小売企業のAIエージェントが直接通信する設計だ。両者が連携し、商品を探し、選択肢を比較して、購入手続きを進められる。米国最大の小売企業ウォルマートなどが構想を受け入れたのに対し、米国第2位の小売企業アマゾンは参加を拒んでいる。
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■実店舗で顧客をつかむウォルマート、ネット通販に強いアマゾンAIエージェントによる買い物は初期段階にあるが、商品を見つけ、調べ、選び、購入するまでの流れを変え始めている。ベイン・アンド・カンパニーは「普及する時期や程度は不確かだが、自律型AIエージェントは検索、広告、個別対応、配送、決済、購入後の支援の仕組みをすでに変え始めている。小売企業が下す選択によって、将来を形作る側になるか、取り残される側になるかが決まる」と指摘した。●全米4600店舗を土台に、ウォルマートは販売経路を増やすウォルマートにとって、早期に外部AIと連携する利点は大きい。同社の決算によると、2027会計年度第2四半期における米国事業の売上高は1250億ドル(約19兆6800億円)で、23%がネット通販によるものだった。ウォルマートの競争力の源泉は、アマゾンと違って実店舗にある。全米4600店舗が顧客との関係を支えており、AI経由の買い物を新たに受け入れることが売り上げを伸ばす手段になる。●ネット通販の買い物を始める場所としてアマゾンが首位を維持対照的に、アマゾンの事業は主にネット上にあり、傘下の食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」は例外的な実店舗事業だ。アマゾンの強みは、ネット上で顧客と直接つながっている点にある。外部のAIエージェントに通販サイトを開放すれば、顧客との結び付きが弱まる恐れがある。長年、ネット通販の買い物を始める場所として、アマゾンは首位を維持してきた。ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、米国時間2026年3月時点で、ネットで買い物を始める際にアマゾンを利用する消費者は69%だった。グーグルは53%、Walmart.comなど他の通販サイトは33%、ChatGPTなど生成AIのチャットボットは8%だった。Museなどの急速な普及によって、消費者が買い物を始める場所は小売企業の予想以上に速く変わる可能性がある。■メタはAIに巨額投資、広告以外の収益源をMuseに託すウォルマートの開放戦略とアマゾンの遮断戦略のどちらが有利になるのか、Museが普及初期の期待に応えられるのかは、まだ明らかではない。メタ自身にとっても大きな賭けとなる。同社は2026年、主にAIのインフラ整備と開発に1350億~1450億ドル(約21兆2500億~22兆8300億円)を投じる計画だ。
Museが成功すれば、メタの収益構造が根本から変わる可能性がある。メタの売上高のほぼすべては広告収入で、2026年第3四半期の売上高646億ドル(約10兆1710億円)のうち、631億ドル(約9兆9340億円)が広告によるものだった。Museが購入を仲介することで、メタは広告配信による収益だけでなく、広告で喚起した消費者の関心から生じる商品の購入でも収益を得られるようになる。
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■ウォルマート、外部AIが安全に買い物できる専用の仕組みを構築メタはMuseをグーグルの「Gemini」や「Perplexity」より先行させようと、ウォルマートなどの提携企業と直接協力した。買い物客のAIエージェントと小売企業のAIエージェントが、安全かつ確実に通信するための「Personal Agent Protocol」を策定した。顧客と小売企業の双方が、AIに許す行動を適切に管理できるようにする。ウォルマートは、従来のネット通販サイトが人間の操作を前提に作られている点を説明している。同社は「現状でもAIエージェントはブラウザーを使い、人間向けの手順をたどってウォルマートのサイトで買い物ができる。ただし時間がかかり、誤りも起きやすく、途中で処理が止まる場合もある」と説明した。ウォルマートは続けて「AIエージェントの買い物の進め方は人間と異なる。そこで、より速く確実に買い物できる『Walmart Agent Gateway』を構築している」と述べた。●ウォルマートでは顧客がAIの支出上限や購入の承認方法を選べるウォルマートと傘下の会員制小売店サムズクラブでAIに買い物を代行させるには、顧客ごとの「Agent Profile」を設定する。顧客は、自分のアカウントへのログインと取引をAIエージェントに許可し、支出上限を決めるか、取引のたびに承認する方法を選べる。Agent Profileは、AIエージェント内に顧客の過去の購入履歴も保存する。AIエージェントは購入履歴を参考に、顧客が好むブランドを選べる。ウォルマートは顧客を保護するため、AIの権限を制限している。AIが実行できるのは、Agent Profileで顧客が許可した操作に限られる。AIがアクセスできる情報も、顧客から任された買い物を完了するために必要なものだけだ。ウォルマート側に保存されたクレジットカード情報がAIへ渡ることはなく、AIが顧客の通常の支払い方法を変更することもできない。ウォルマートは「Agent Profileを使えば、AIに許す操作を顧客自身が管理できる。Walmart Agent GatewayはAIが確実に買い物できる経路を提供する。利用条件はAIが守るべき規則を定める」と説明している。●メタは消費者の信頼を築けるのかMuseと小売企業の連携が成功するには、利用者の信頼が欠かせない。調査会社Forresterの主席アナリスト、ケイト・ウィニック(Kate Winick)は、メタへの信頼は全般に低いままだと指摘する。「顧客は、高い利便性とさまざまなサービスとの接続を得る代わりに、自分のデータを不適切に扱われることを半ば覚悟している」と述べた。
メタも信頼の低さを認識しているが、時間とともに改善できると考えている。メタの最高財務責任者(CFO)スーザン・リーは、次のように語った。「信頼できる連携が進み、AIエージェントが新たな価値や需要を生み出し、安全に機能すると示せれば、参加に意欲を示す企業はさらに増えると予想している」。
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■アマゾンはMuseのアクセスを遮断し、顧客との直接取引を守るウォルマートとは対照的に、アマゾンはMuseからのアクセスを遮断した。アマゾンはメタに対し、同社の通販サイトをMuseのサービス対象から自主的に外すよう要請したが、Museはサイトへのアクセスに成功した。テクノロジー情報サイトGeekWireの報道によると、アマゾンはその後、Museが商品検索ページを読み込めないよう、AIなどの自動アクセスを防ぐ仕組みを導入した。Museでアマゾンにアクセスしようとすると、「許可されていないAIエージェントによる継続的なアクセスは、顧客が同意したアマゾンの利用条件に違反する」という警告が表示される。アマゾンはメタの安全性やプライバシー保護に関する説明にも異議を唱えている。Museが自動化されたエージェントだと明かさずにサイトを閲覧し、顧客のログイン情報を取得・保存しているように見えると主張する。●外部AIがアマゾンの通販・広告事業を脅かす理由アマゾンは、Perplexity、グーグル、OpenAIなどが提供する外部AIエージェントのアクセスも阻止しようとしてきた。外部AIが買い物の入口になれば、商品販売、広告、物流、有料会員サービス「Prime」で成り立つ事業全体が脅かされるとみている。アマゾンの2025年の小売り関連売上高は5880億ドル(約92兆5800億円)で、広告収入680億ドル(約10兆7100億円)も含まれる。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、AIエージェントが商品の検討を始める段階を変え、小売企業と顧客の直接的な関係を断ち切る恐れがあると指摘する。コンサルティング大手デロイトも、直接の顧客接点を失うことで「利益率、顧客関係管理に必要なデータの取得、ブランドへの忠誠心に重大なリスク」が生じると警告している。●アマゾンは自社アプリから一部の他社ブランドの商品も買えるようにしたアマゾンは顧客との直接的な関係を守るため、独自のAI買い物機能を開発してきた。アマゾンの買い物アプリとウェブサイトで商品を検索・比較できる「Alexa for Shopping」と、アマゾンでは扱っていない一部のブランド商品を購入できる「Buy for Me」だ。Buy for Meでは、利用者がアマゾンの買い物アプリで商品を選んで購入を依頼すると、AIがブランド側のウェブサイトで注文を完了する。外部ブランドの商品でも、利用者はアマゾンのアプリで買い物を始める。アマゾンはネット通販と広告事業を支える顧客との直接的な関係を維持できる。
ウォルマートは、外部AIとの連携による売上増加が、顧客との直接的な関係が弱まるリスクを上回ると見込んでいる。アマゾンは外部AIが商品探しから購入までを取り仕切るようになると、顧客との直接的な関係や広告事業を損なう恐れがウォルマートより大きい。