アニメ「超かぐや姫!」ツクヨミと現実のキャラクターデザインはどのように制作していったのか――へちま氏、永江彰浩氏インタビュー

Netflixにて世界独占配信中のオリジナルアニメ「超かぐや姫!」。同作のキャラクターデザインを手掛けるへちま氏、永江彰浩氏へのインタビューをお届けする。

NetFlixでの配信がスタートして以降、劇場での公開拡大やノベライズ、公式ガイドブックが一時品薄となるなど、瞬く間に世の中を賑わせている「超かぐや姫!」。Gamerでは監督・脚本を手掛ける山下清悟氏へのインタビューを掲載しており、こちらも多くの反響をいただいている。

本作の特徴の一つとなるのが、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」と現実を行き来しながら物語が進行していくことであるが、上記のインタビューでも語られている通り、ツクヨミのキャラクターデザインをへちま氏、現実のキャラクターデザインを永江彰浩氏が担当する形式が採られている。

今回、両氏へのインタビューの機会をいただき、作品へのグラフィカルなアプローチを中心に多数の質問をさせていただいた。作品を楽しんだ人はぜひご覧いただければ幸いだ。

――Netflixでの配信が開始され、劇場公開も行われるなど大きな盛り上がりを見せていますが、反響についてはどのように感じられていますか?

永江:思った以上に反響がすごくて、楽しんでいただけているなというのがまず感じたことです。作っている最中も内容がすごく伝わりやすいものだと思っていましたし、これまでスタジオコロリドで手掛けてきた作品よりも比較的キャラクター(にフォーカスした)アニメだったので良い反応がいただけるのではないかと思いながら制作していましたが、実際の感覚としては思っていた何倍もの反響でびっくりしました。

へちま:これは私というか監督が喋っていたことなんですけど、作品が盛り上がっていく感じがかぐやが本編中で知名度を上げていくときの感覚ってこうだったのかなって思った、みたいにおっしゃっていて「確かに!」と思いました。お話で作ってたことが現実に起きてるみたいな、不思議な感じでした。

――オリジナルアニメということで、お二人が参加されることになった際にはどのくらい作品としてのかたちができていたのでしょうか?

永江:関わらせていただいた段階だと企画の大枠は決まっていて、脚本に着手する手前くらいだったと思います。かぐや姫を元にするということと、近未来でVRのテクノロジーとかを合わせて、配信者みたいなことをやるという話はありました。山下さんがバトルで魅せられる方なので、やりたいことを全部叶える装置としてバーチャル空間を採用しているとプロデューサーからお聞きしたのが最初だと思います。

――今の出来上がりはその頃のイメージに近い感じだったんでしょうか?

永江:関わり始めた段階では、もっと本格的なSF作品になるイメージを持ってました。その後山下さんにお話しを伺っていくと「SF的な要素はそんなに詰めない」というのを最初の段階でキッパリ仰られていて、なるほどという感じでした。

例えばコンタクトレンズ型のデバイス(※作中でツクヨミに入るために用いる「スマートコンタクト(スマコン)」)って結構嘘が多い装置だと思うのですが、テクノロジーを本格的に詰めず、なんとなくで見せていく演出になっています。ログインして目をつむっている間、現実ではどうしているのか気になっていたのですが、ツクヨミに入ったらそこは極力見せない作り方をすると山下さんの方針がはっきりしていました。なので、想像とは違っていたものの理解しやすかったです。

へちま:私もほぼほぼ同じ感じで詳細はそんなに分からずというところでしたが、大枠として“七色に光り輝くゲーミング電柱”というアイデアが出てきて、かぐや姫にまとまった、みたいな話は聞きました。

永江:へちまさんが最初に描かれたヤチヨの絵は自分も最初の段階で拝見させていただきました。

へちま:企画書段階の絵を書いていたときは、キャラクターデザインを担当するかは確定していなかったので、アニメのキャラというよりは一枚絵のつもりで描いていました。

※依頼の流れ(アニメーションプロデューサーの桃原一真氏より補足) ・「かぐや姫」を題材に決めた最初の段階で、へちまさんに企画書の絵を依頼

・現実を行ったり来たりすることが企画としてしっかり固まった段階で、現実世界では別のルックを作りたいという意図で永江さんに依頼

――キャラクターをデザインする上でご自身が意識したことや、山下監督からオーダーされたことなどがあればお聞かせください。

へちま:ちょっと話題がそれるかもしれないのですが、現実とVRで全然違う絵柄でやるということが個人的にはすごい心配でした。同一のキャラとして見てもらえるのかなという部分があって。永江さんとは結構長くご一緒していて、絵柄を合わせることのほうが多かったので、あえて全然合わせないということを今回初めてやるというのが、新鮮でもあり心配でもあるみたいな感じでしたね。

VRのほうに限って言えば、かぐや姫なので和風モチーフというのは前提にありました。かぐやはギャルだということとかを伺って、最初は自分のほうでラフ出しとかしてたんですけど、山下さんのほうでビジョンがあったのか、だんだんと山下さんからラフをいただけるようになって、それをたたき台に作るという流れになっていた気はします。芦花や真実は永江さんの現実のデザインが先にフィックスしていて、それをもとに描きました。

永江:逆に、ブラックオニキスの3人はへちまさんのほうで先にデザインされていて、それを現実に持っていくみたいな順番でした。

へちま:かぐやは結構並行してましたね。

永江:細かな時系列は分からないんですけど、意外なほどにやり取りをしなかったんですよね。

へちま:そうなんですよ。

永江:心配というかどうなるんだろうと思いながらやっていましたが、監督が媒介になって最終的にまとまっていった感じですね。監督がすごくしっかり伝えてくださるので、自分視点では質問し合う必要があまり発生しなかったという感じでした。

現実パートのほうも山下さんからかぐや、彩葉などのざっくりとしたイメージは渡されてから入っているので、そこからそんなには動かしていません。彩葉の髪短いバージョンとかは描いてみましたけど、山下さんのイメージとは違うかなという感じですぐ却下になりました(笑)。

――現実とツクヨミは画面上の表現としての方向性が違う部分もあるとは思うのですが、デザイン段階で意識されたことはありましたか?

へちま:違いを意識したっていうこともなかったです。全く打ち合わせないことによって、そもそもが全然違っていいからと言われていた気がします。だから監督の中ではあるんじゃないかと思うんですけど。あと美術とかの描きぶりの違いは見ていて感じました。

差別化しようともしてなくて、なんならちょっと寄せたほうがいいのかと思って身長とかの設定も聞いたのですが、等身も全然違っていいと言われたのでそれぞれやっていったという感じです。

永江:補足すると、現実パートでは監督から最初のほうに言われてたのが、「現実パートは崩していいけど、VRパートは崩れちゃダメ」ということでした。

へちま:確かに逆の言い回しで「ギャグ的なデフォルメは現実に任せる」みたいなことは仰ってました。

永江:作画の精度の話でも、「VRのほうは絶対顔の作画を緩くしてはいけない、、現実のほうは崩れが許容できるようにしたい」と仰られていて、現実は漫画的に描く、VRはゲーム的に描くという説明はありました。

なので自分の方は漫画の表現とかをベースに作っていることもあり、監督の指示がそもそも最初からそういう描き分けをしてくださいねという感じです。実際、へちまさんのデザインが上がってきたのを見て、最初に自分が受けた印象というかびっくりしたのが、「あ、等身高っ」て思ったんですよ。

へちま:そうですよね(笑)。

永江:先ほども話に出ている通り結構長くご一緒させていただいてるので、「へちまさんがこんな等身高い絵描くの新鮮だな」と思いながら、見てました。

へちま:それは私が勝手に高くしたというよりは、ちょっと等身上げていいという采配があった気がしています。

――お二人がそれぞれデザインされたキャラクターの中で、特にここに注目してほしいと思うキャラクター、もしくはデザインに苦労したキャラクターはいますか?

へちま:苦労で言うと、かぐやは最初に手をつけたので、形になるのに結構時間がかかったと思います。ただ、苦労だとは思っていないだけで、それぞれ試行錯誤はしているという感じが近いんだと思います。

その中でも雷のアバター衣装はパッと決まらなかったイメージはありましたね。山下さんからもお任せされていたような感じで、2つくらいの路線で探っていって(イメージを)揉んでいたというのはあるかもしれないです。

他はわりとすんなりで、細かい調整とかで色とかは練りましたけど、顔はラフでいただいた感じでいってるので、最終的にうーん、となったのは雷の衣装でした。

――乃依のような男性だけど可愛らしい感じのアバターデザインは面白いなと思ったのですが、こちらもイメージ通りの感じでしたか?

へちま:乃依は一番すんなりいきました(笑)。女子を全体的にあまりフリフリさせてなかったので、素直に和風で可愛いアイドル衣装みたいなのを持っていったら乃依になったという感じですね。

永江:僕も一緒で、最初は絵が山下さんの大ラフしかなく、等身をどのくらいのバランスでいくとかそういうことが全く決まってないので、かぐやと彩葉に関しては本当に苦労しました。あーだこーだと進めて形になってからは肩の荷がちょっと下りたような感じでした。

VRパートだとゲームのアバター的な衣装の幅やアイデアとかが楽しくもあり大変そうだなとすごく思ってたんですけど、現実はやはり現実ベースなので、服も例えば制服は彩葉で決めてしまえば芦花や真実も同じなので、スッと進んでいった感じです。

――現実のパートはVRパートの比較として現実的ではあるのはもちろんですが、その上でアニメライズされた部分がちゃんとあって良い塩梅だなと思いました。そのあたりは考えられていましたか?

永江:コミカルに描くとはいっても現実離れした感じのアニメキャラにはしないというのはなんとなく勘で思っていて、多少のリアリティがある感じというのは維持したいと思っていました。

服のイメージに関しても、監督から写真とかで現実にある服を参考に見せていただいて、例えばこれは芦花が着てそうと話したりする中で決めていきました。アニメのキャラクターであれば衣装も全て考えて作る、ということもあり得ることだと思うのですが、そういう感じのことはしなくて、高校の制服についても実際よりは多少派手かもしれないですけど、ロケハンに一緒に伺わせていただいた中で作ったりしていました。そこまで意図はしていなかったのですが、そういう空気感で作っていたからこその感覚なのかなと思います。

――お二人は総作画監督(以下、総作監)・作画監督(作監)としてもクレジットされていますが、作画に関しては特にどういった点を意識されていましたか?

へちま:自分は総作監業に携わるのは初めてで、作監は結構いっぱいやっていたものの、作監さんの絵がある前提でやるというのはまた違うものでした。

監督修正が恐ろしいことにすべてのカットにちゃんと載っていたので、それを捲っていって理解して、監督の意図を確認するようにしていましたが、本当に手探りだったのでそれ以上に何か特別な工夫をしようというのは無く、とにかく頑張って絵を乗せました(笑)。

永江:山下さんがすごく修正の早い方で、そのカット丸ごとひっくり返すような直し方をしたとしてもすぐ対応されるんですよね。テクニカルな話で言うと、例えば「設定にない、この角度の顔はどう描けばよいのか」などみんなが悩みそうなものが総作監に回ってくるような気がします。そのように直接言われてカットを渡されたことも何度かありました。

へちま:永江さんの修正を私は勝手に覗き見してたんですけど、「こういう意図でこういうことにしています」みたいなのをメッセージとしてちゃんと添えるんです。私はそこまで書ける余裕が無かったのですが、それができたらいいなと思いいました。

永江:でも絵が良ければそれがもう何より一番雄弁かなとも思いますので。

へちま:それでも文字にすると意図をちゃんと読んでもらえますからね。そういうところは文字にしたほうがいい場合もあるなと。

永江:ただ、デジタル上で文章を手書きするのが意外と大変なんですよね(笑)。仰るとおり、修正意図を絵だけでなく文章にして伝えることによって認識のズレが起きないようにしたり、作業する方の納得感につながったらうれしいと思い、書くようにしています。

――へちまさんは「学園アイドルマスター(以下、学マス)」のキャラクター原案でも知られていますが、ご自身の中でのゲームのデザインとアニメのデザインでそれぞれ意識する点や共通点などあればお聞かせください。

へちま:そういう点では「超かぐや姫!」が一般的なアニメのデザインなのかという問題があるとは思います。アニメのキャラクターデザインとしては要素が多いですし、構造も結構取りづらいデザインになっちゃっていると思います。

ツクヨミがゲームの世界でもあるので、アニメキャラの動かしやすさよりゲームのアバターとしての盛り感を意識していました。タレ目にしてほしいとか、まつ毛バチバチとかそういう指示はあったんですけど、結構自分の絵柄そのままでやったという意味でもアニメだからという意識は無かったです。もちろんデザインの途中で線を減らしたり、さすがにこれは無理みたいなデザインは落としていったんですが、結構採用されていると思います。

あと「学マス」は学園ものなので、現実にある服とか制服がベースなんですけど、「超かぐや姫!」では衣装に創作要素があって、和風VTuberみたいなデザインを考えたという意味では結構自由度が高かったと言えるかもしれません。

――実際に原画などの作画に落とし込むでデザインのバランスを考えたりするのでしょうか?

へちま:そうですね。線の数そのものもそうなんですけど。「撮影で撮ったときに綺麗になるか」というのに、結構私も監督も主眼がありました。シンプルなグラデーションってあまり綺麗になりづらかったりするので使い方が難しくて、ちょっと特殊なザラッとしたグラデーションができないか、それが難しかったら別の表現を考えようみたいなお話はしていました。そういう撮影ありきの制約は前提にあって、検証しながら作ったという感じです。

――永江さんは絵コンテ協力としてもクレジットされていましたが、実際にどのように関わられたのでしょうか?

永江:自分がやったのはコンテ清書みたいな感じです。タワーマンションに引っ越したあたりからのDパートを、山下さんが描かれた大ラフコンテをもとに描き起こしました。シーンの服装や置いてある小物、背景やキャラクターの動き、画角などを具体的に描いたものを監督と相談しながら決定稿にしています。

――絵コンテ協力でクレジットされているみなさんはそれに近い作業をされていた感じですか?

永江:ほかにも同じような作業をされてる方はいらっしゃると思うんですが、根本的な演出のアイデアを提案したり、見せ方そのものを変える場合は単純な絵の清書とは違う作業になります。

へちま:スタジオコロリドが以前作った「雨を告げる漂流団地」でもコンテ清書はやられていましたよね?

永江:これも石田(祐康)監督が描かれた大ラフのコンテをいただいて、ほぼレイアウトを描き起こす作業でした。これをすると原図(背景用の設計図)が保証できてクオリティの維持に繋げられるので、この方法を採用しているスタジオは少なくないと思います。

へちま:そのまま下敷きにして使えるので、ガイドになるんです。

永江:コンテを引き延ばして下敷きにしたら、原図の下描きとして使えるので作業が効率化できます。デメリットとしてそのままなぞると、元々小さな用紙に描いてあるため望遠気味の画面になりやすいです。そこはシーンによって画角を調整したり再解釈が必要です。

――コンテに限らないと思うのですが、設計の伝え方というのはやはりすごく難しいんだなと実感する話ですね。

永江:やはり各々の原画マンが演出家の役割を兼ねてると思いますので、そのシーンに相応しい画や芝居を考えて描くのは一原画マンとしても大事にしていきたいです。

――最後にお二人が感じる「超かぐや姫!」の魅力をお聞かせください。

へちま:作っている側なのでお客さんとまた違う視点になってしまうかもしれないんですけど、自分がボカロ(VOCALOID)を通ってきた身でもありますし、山下さんの作品が好きでアニメ業界に入ったということもあり、そういう意味で思い入れがありすぎる作品になっています。

お客さんの反応を見ていて感じるのは、それぞれの生きてきた人生を持ち込んで、重ねて観てくださってる方がすごく多いなということでした。それは小ネタもそうですし、懐かしさとかそういうこともあるかもしれないんですけど。ファンタジーな作品ではありつつも、そういう意味で現実(のネット世界)とすごく地続きな感じがして、そこが魅力でもあるんじゃないかなと思います。

永江:ネット世代の思い出や感覚を見出している人が本当に多いなという印象で、感想とかを読んでいると、「これは自分たちの文化の話だ」とそういう風に受け取ってもらえてる気がしました。このような強い熱量の反響をいただける経験はなかなかできませんので、とても感謝しています。

かぐや、彩葉をはじめとした個々のキャラクター単位でも好きになってもらえたらと思いながら制作していたのですが、それも叶っている感じがしました。

へちま:シンプルにアニメっていいな、って思いました。

永江:こんなに人を喜ばせてるなんてすごいという感動が大きいですね。そこは周りの方々の手腕が本当にすごくて、改めて尊敬の念を抱きました。

へちま:自分が学生時代に見てたら、アニメーターになろうって考えただろうなと思いました。

永江:結局想像を超えて楽しんでもらってるので、こちらからオススメするまでもなく、もっと楽しんで、ずっと好きでいてくれたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

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