キヤノン、今期営業益2度目の下方修正 米関税は他地域にも影響波及
IBESがまとめたアナリスト12人の予想平均値は4563億円で、会社計画はほぼ同水準だった。
連結売上高も4兆6500億円から4兆6000億円(同2.0%増)に引き下げた。
浅田稔専務は決算会見で「米国の関税影響が米国のみならず、地政学リスクと相まって欧州など他地域にも及び、一部で投資の先送りが出始めた」と下方修正の理由を説明した。プリンティング事業で投資先送りが出ており、下期もこの傾向は一部で続くとみている。ただ、欧州では利下げも実施されており、来年には上向くのではないか、との見通しを示した。
米関税影響は、10%の関税が年末まで続くという前提で413億円のコスト増、販売価格引き上げ352億円、想定される数量減187億円を織り込んでいる。
日米間では15%の関税で合意したが、田中稔三・最高財務責任者(CFO)は、8月1日よりも早く結論が出たことで「私見だが、社内で対策を考える時間的な余裕ができたことはプラス」と受け止めながらも「完全に納得できるようなレベルでは必ずしもない」と指摘した。「個別の会社が努力できるギリギリの線ではないか。米ペースで押し切られたのではないかという印象が残る」と述べた。
前提としていた10%よりも高い15%となったことへの対応はまだ決めておらず「個別の製品でどの程度値上げができるかをきめ細かく選別していく。数量の増減も読みながら、収益見通しに反映させていきたい」とした。
同社は、米国が全売上高の3割弱を占めている。米バージニアに製造拠点としての機能を果たせる土地・設備があるが、原材料や部品は輸入に頼るため、米国内での現地生産のメリットは小さくなる。田中CFOは「今時点では米現地生産はほとんど現実的ではない」とした。
また、イメージング事業のカメラやプリンティング事業の複合機、インクジェットなどは東南アジアで生産している。関税率により生産地を変えることは考えず、稼働率を上げるための生産構造改革に取り組む方針を示した。
第3四半期以降の想定為替レートは1ドル=142円、1ユーロ=165円とユーロを前回見通しから5円円安に見直した。これにより、売上高で297億円、営業利益で57億円のプラス影響となっている。
25年1―6月期の営業利益は前年同期比8.0%増の2143億円だった。上期は為替円高により売上高で440億円、営業利益は208億円のマイナス要因となった。
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