あなたの愛犬は本当に「おもちゃ依存症」かもしれない
最新の研究によると、一部のイヌはおもちゃに対して、人間のギャンブル依存症などの行動嗜癖に似た行動を見せるという。「イヌの福祉の非常に重要な側面に着目した研究」だ。(PHOTOGRAPH BY KSENIA RAYKOVA)
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あなたはカジノでスロットマシンにはまるイヌを見たことがあるだろうか? おそらくないだろう。では、おもちゃ遊びが好きすぎるイヌは? おそらくあるだろう。新しい研究によると、両者にそれほど大きな違いはないのかもしれない。学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に10月9日付けで掲載された論文の著者らは、一部のイヌがおもちゃに対してとる行動は、ギャンブル依存症やインターネットゲーム依存症といった人間の行動嗜癖(しへき)と類似点があると主張する。
論文の最終著者でオーストリア、ウィーン獣医大学の行動生物学者のステファニー・リーマー氏は、おもちゃのボールが好きすぎる愛犬を「ボール中毒」と呼ぶ飼い主の話を以前からよく聞いていた。しかし、人間の行動嗜癖の基準がイヌのおもちゃ遊びに適用できるかどうか誰も研究していないことに気づき、科学的に検証することにしたという。(参考記事:「犬は人が思っているよりもずっと”人間らしい”」)
リーマー氏らは現段階では、自分たちが見たものを本物の依存症だと主張するつもりはなく、「少々依存症を思わせるような行動」という程度だと言う。(参考記事:「あなたの愛犬が長生きする、科学が教える必ずやるべきこと6選」)
人間の依存症には2つの側面がある。1つは、特定の刺激(薬物やギャンブルの興奮など)に対する渇望および強迫的な行動と、報酬を得たときの気分の変化。もう1つは、その刺激が取り上げられたときに現れる禁断症状のような感覚だ。
「依存症とは、長期的には悪影響をもたらす行為をやめられない状態です」とリーマー氏は言う。
イヌのおもちゃ遊びについて、そのようなことはあるのだろうか?
この疑問に答えるため、リーマー氏のチームは、生後12カ月から10歳までのイヌ105匹(オス56匹、メス49匹)を対象に14種類のテストを実施した。研究には、シェパード、テリア、レトリーバーなど、さまざま犬種が参加した。(参考記事:「オオカミを滅ぼす? オオカミイヌ人気が招く欧州の深刻な現実」)
あるテストでは、イヌたちは、箱の中や棚の上など手の届かないところにあるお気に入りのおもちゃと、別の種類の報酬(食べ物や飼い主との遊び)のどちらかを選ばされた。
「おもちゃ依存症」に見えるイヌは、そのおもちゃに執着し、提供された報酬には見向きもせずに、おもちゃが入っている箱を壊そうとしたり、おもちゃが置かれた棚に注意を向けつづけたりした。
別のテストでは、実験室にあるおもちゃや食べ物などをすべて片付けた後、イヌが落ち着くかどうかと、どのように落ち着いていくかを分析した。より依存症的な行動を示したイヌたちは、テストの間中ずっと室内を歩き回っていたとリーマー氏は言う。「彼らはおもちゃが運びされたドアや、最初におもちゃが入っていた棚に注意を向けつづけていました」