ブランドマンションの床下で多数の不具合 分譲40年、住民側が発見

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小池淳

マンションの基礎構造部のコンクリート。表面から鉄筋が突き出ている。「構造的に意味不明」と建築士は指摘する=2025年8月26日、兵庫県西宮市、小池淳撮影

 1985年に分譲された兵庫県西宮市内のマンションの基礎構造部で、建築基準法に適合しない箇所を含む多数の不具合が見つかった。住民側の独自調査で発覚し、売り主側も不具合のある物件を40年前に引き渡したと認めた。売り主側は「建物の構造耐力に影響はない」と主張しているが、無償の補修工事を申し出ている。

 このマンションは、80戸余りが高台の傾斜地に沿って階段状に並ぶ。住友建設(現・三井住友建設)が建築し、伊藤忠不動産(現・伊藤忠商事)が分譲した「ブランドマンション」だ。

 六甲山から大阪湾まで一望でき、各戸にルーフテラスを備える。管理組合によると、約100平方メートルで4千万円近い価格で売り出され、直後の不動産バブル期には約2倍の高値で売買されることもあったという。

 問題発覚のきっかけは2022年11月、最下段の住戸で大雨後に床と壁の接合部から水がしみ出たことだった。

 工務店が床下を調べると、上階で排水管が詰まり、あふれた雨水が床下の斜面を流れて最下段の住戸に浸入したことがわかった。排水管にコンクリートの塊が詰まっていたという。

大雨後にコンクリートの壁と床の接合部から水がしみ出た住戸。紙おむつを敷き詰めて応急処置した=2023年、兵庫県西宮市、調査した1級建築士提供

コンクリートの塊が詰まった排水管=兵庫県西宮市、調査した1級建築士提供

 これを受けて23年6~11月、管理組合が依頼した構造設計1級建築士が建物全体の床下を調べると、多数の問題が見つかった。

 鉄筋がコンクリートから飛び出して(露筋)腐食したり、コンクリート表面に砂利や砕石が浮き出て空洞ができたり(ジャンカ)、コンクリートの打設後に配管用の穴を開けて鉄筋が切断されたりしていた。

 露筋やジャンカがあると、内部の鉄筋がさびて膨張し、コンクリートを壊す恐れがあるという。建築士は報告書で「これほどひどい施工状況を見たことがない」「非常にずさんな工事と言わざるを得ない」と指摘した。

マンションの基礎構造部のコンクリート。表面に砕石が集まったジャンカ(左上の泡状の部分)がある。空洞ができて内部の鉄筋が腐食し、構造物の強度や耐久性に影響するという=2025年8月26日、兵庫県西宮市、小池淳撮影

 一般のマンションの基礎部分は地中にあって確認できないが、このマンションは傾斜地に建てられて地下空間があったために基礎部分を確認できた「とてもレアケース」(調査した建築士)だという。

 管理組合の要請を受けて三井住友建設が24年4月~今年2月、現地を調べ、計947カ所の不具合を確認した。同社は取材に対し、不具合には「建築基準法に不適合の箇所」に加え、経年劣化も含まれると主張し、「建物の構造耐力に影響はない」と判断しているという。

 一方、管理組合側は、露筋82カ所やジャンカ57カ所など計365カ所は「明確な建築基準法違反」と主張している。

 伊藤忠商事は管理組合に対し、「1985年竣工(しゅんこう)当時において多数の建築基準法不適合箇所等のある施工物件を引き渡した」「品質確認体制が不十分だった」と陳謝した。取材にも同じ内容を認めた。ただ、分譲から40年が過ぎ、詳しい原因は確認できないという。

 民法では、故意や過失による不法行為があっても20年で時効になると定められている。

 今回の問題で伊藤忠商事は「法的責任はないと考えている」とする一方、「道義的・社会的責任を果たす」として、三井住友建設と補修工事をする方針だ。

 管理組合側は「伊藤忠は売ってはならない商品を売った」として、補修に加えて経営トップによる謝罪と説明、損害賠償なども求めている。

大規模修繕で発覚の例も…住民はどうすれば

 マンションの管理組合法人の…

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この記事を書いた人

小池淳
阪神支局長
専門・関心分野
災害、地方政治

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