【日本市況】株大幅高、米中貿易合意でリスク選好-中長期債が下落
13日の日本市場では株式が大幅高。米国と中国の貿易合意を受けて投資家のリスク選好姿勢が強まった。債券はこの日の入札結果を受けて30年債利回りが低下(価格は上昇)。円は1ドル=147円台に上昇している。
日経平均株価は取引時間中として3月26日以来となる3万8000円台を回復。東証株価指数(TOPIX)は2009年以来の13日続伸が視野に入っている。米中は週末の貿易協議で相互の関税率を一定期間引き下げることで合意。トランプ大統領は12日、今週中に習近平国家主席と話す可能性が高いとの認識を示した。
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野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストはコラムで、米国による対中関税率が145%から30%に引き下げられることは、日本経済にとって朗報だと指摘。日本の国内総生産(GDP)への押し下げ影響は0.45%と、これまでの1.01%と比べて大幅に緩和するとの試算を示した。
国内株式・債券・為替相場の動き-午後1時32分現在- TOPIXは前日比1.4%高の2779.27
- 日経平均株価は1.8%高の3万8338円13銭
- 長期国債先物6月物は一時前日比95銭安の139円08銭に下落
- 新発10年国債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.465%
- 新発5年債利回りは一時9bp高い1%、4月2日以来の高水準
- 新発30年債利回りは5bp低い2.900%
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.4%高の147円82銭
- 前日の海外市場で一時148円65銭と約1カ月ぶり安値を付けた
株式
東京株式相場は上昇。米中関税交渉が進展し、景気や企業業績の先行き不透明感が後退した。自動車や電機、機械など輸出関連のほか、銀行株が買われている。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、米中協議の進展を受けてリスクオフが巻き戻されていると指摘。「株の買い戻しはもう少し続く可能性がある」との見方を示した。
一方、為替の円安一服もあり、買い一巡後は伸び悩む場面がある。ロベコ香港のポートフォリオマネジャー、ケルビン・リョン氏は、米中合意により日米間でも合意に至る可能性が高まったとした上で、日本で楽観ムードが急速に広がっていることは懸念材料だと指摘。株価指数の水準を見る限り、期待が先行していると話した。
債券
債券相場は中長期債を中心に下落。米中が関税率の大幅な引き下げで合意したことを受け、リスク選好の高まりから安全資産としての需要が低下している。この日行われた30年債入札は無難な結果だったとの声が出ており、30年債は上昇している。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは入札結果について、応札倍率はやや弱めだったが、最低落札価格が予想と一致し、無難な結果だったと語る。懸念されたイベントを消化したことで「いったんは超長期債の買い材料になるものの、根本的な需給懸念は解消されていない」として、先行きには慎重な見方を変えていない。
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太陽生命保険の佐藤義剛運用企画部長は「30年債はターゲットにしておらず、この水準で買うことは今のところ考えていない」と話す。超長期債は入札が続き需給が弱含む可能性がある上、「ここ数日は説明の付かない金利上昇が続いており、今後も値動きが定まらない展開が続く可能性が高い」と指摘。買い急ぐことはせず、淡々と平準的に買っていくと述べた。
為替
円相場は1ドル=147円台後半で推移。米中摩擦の緩和期待を受けたドル買いが一服する中、加藤勝信財務相が来週、ベッセント米財務長官と為替について協議することを検討していると発言し、円買い・ドル売りが優勢となっている。
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あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ドル買い戻しの反動に加え、加藤財務相の発言もあり、ドル・円は上を攻めづらくなっていると述べた。「関税政策が緩和的になってきているので、日本銀行が利上げに動きやすくなったこともドル・円の上値を抑えている」との見方を示した。スワップ市場で日銀の年内利上げ確率は8割程度と、9日時点の5割から回復している。
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米中合意について、三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、「内容は市場の想定よりもかなり融和的で、サプライズ的な反応となった」としながらも、どこで最終的な合意に至るか「結論が出ておらず、完全に楽観的にはなれない」と述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。