【米国市況】株反落、米国の対イラン軍事介入を警戒-145円台前半

17日の米株式相場は反落。イスラエルとイランの軍事衝突を巡り、米国が一段と直接的な介入に踏み切ることへの警戒感が広がった。原油価格は上昇し、1月以来の高値を付けた。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5982.72 -50.39 -0.84% ダウ工業株30種平均 42215.80 -299.29 -0.70% ナスダック総合指数 19521.09 -180.12 -0.91%

  リスクオフ・ムードでS&P500種株価指数は一時1%近く下げた。

  トランプ米大統領はこの日、激化する中東での紛争について、国家安全保障担当チームと首都ワシントンで協議した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。イスラエルによる対イラン攻撃に米国が近く参加するとの観測が広がった。

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  スレートストーン・ウェルスのケニー・ポルカリ氏は「中東地域の緊張が緩和するまで相場は当面、おおむね神経質な展開となるだろう」と述べた。

  この日発表された米経済指標も関心を集めた。5月の小売売上高は2カ月連続の減少。関税措置と家計の財務状況を巡る懸念を背景に、消費者が支出を抑えている状況が示唆された。 5月の鉱工業生産指数は過去3カ月で2度目の低下。米住宅建設業者の業況感を示す住宅市場指数は6月に低下し、2022年12月以来の低水準となった。

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  イートロのブレット・ケンウェル氏は「貿易政策の影響が続くため、経済データは引き続きある程度振れやすくなるとみるべきだ」と指摘。「経済と消費者は今のところ持ちこたえているが、脆弱(ぜいじゃく)さの兆候も見られる。特に雇用と支出が一段と減速した場合、それが今年下半期のリスクとなり得る」と述べた。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は2日間の会合を開始。今回も政策金利の据え置きが予想されており、実際にそうなれば4会合連続となる。トランプ大統領がまたもや批判を展開しかねないが、連邦準備制度理事会(FRB)は立場を明確にしてきている。

  政権が関税や移民、税制を巡る極めて不確実な要素を解消して初めて、自分たちが行動を起こせるという立場だ。イラン核施設に対するイスラエルの攻撃も、世界経済に不確実さを加えた。

  プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は「FRBは狭く険しい道を進んでいる」と指摘。「米国の利下げは第4四半期に入ってから行われると、当社では予想している」と述べた。

  JPモルガン・チェースでグローバル市場インテリジェンス部門を率いるアンドルー・タイラー氏は「今年に入り、悪材料を押し目買いの好機と捉える投資家が報われる場面が続いてきたが、ここはリスクを後退させるのが得策だと考える」とリポートに記した。「イスラエルとイランの問題に関わらず、相場は下落に向かう構えを見せていた」という。

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国債

  米国債相場は上昇(利回り低下)。米経済指標の発表後、年内に少なくとも1回の利下げが実施されるとの市場予想が変わることはなく、国債買いが優勢となった。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.89% -6.3 -1.28% 米10年債利回り 4.39% -5.7 -1.29% 米2年債利回り 3.95% -2.1 -0.53%     米東部時間 16時54分

  米金融政策の影響を最も受けやすい2年債の利回りは一時、6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下して3.90%。10年債利回りは同7bp低下して4.38%を付けた。

  中東での紛争激化への懸念を背景に米国株が下げる中、取引終盤にかけてリスク回避の米国債買いも膨らんだ。

  短期金融市場では年内に0.25ポイントずつ、2回弱の利下げが行われるとの見方が引き続き織り込まれている。 

  FOMCは6月と7月の会合では政策金利を据え置くと市場で広く予想されている。今週の会合終了後には、経済と金利に関する最新予測が公表される。

  インサイト・インベストメントのグローバル金利共同責任者、ハーベイ・ブラッドリー氏は「FRBが現状維持の姿勢を続ける中、今のうちに比較的高い債券利回りを確保しておくことは投資家にとって良い機会となろう」と述べた。

  この日実施された5年物インフレ連動債(TIPS)入札(発行額230億ドル)は堅調。最高落札利回りが1.650%と、入札前取引(WI)の利回りをわずかに下回った。ブレークイーブンレートの低下と、このところの原油急騰が底堅い需要につながった。

外為

  外国為替市場ではドル指数が3営業日続伸。5月1日以降で最長の上昇局面となった。

  円はドルに対し、ニューヨーク時間朝方まで前日終値を挟んだ推移だったが、その後は下落基調。一時0.4%安の1ドル=145円38銭を付けた。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1209.07 6.48 0.54% ドル/円 ¥145.26 ¥0.51 0.35% ユーロ/ドル $1.1484 -$0.0077 -0.67%     米東部時間 16時54分

  マッコーリー・グループのマクロストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏はイスラエル・イラン情勢について「ドルが特定の状況において、なお安全資産としての地位を保っていることを示した」と指摘。

  特定の状況の例として、「戦争によって世界の原油供給が混乱するリスクが高まると見なされる場合や、戦争によって市場の関心が、関税リスクや財政不透明性といった米国中心のリスクから離れる場合」を挙げた。

  クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「米国の小売売上高と輸入物価指数はかなりまちまちな内容で、FOMCは今週の会合で、なお成長よりインフレに重点を置く可能性がある」と指摘。

  「5月の小売売上高はヘッドラインベースでは良くなく、前月分も下方修正されたが、より重要なコントロールグループは全般的に予想を上回る内容だった」とし、「個人消費支出(PCE)コア価格指数に影響する輸入物価も、想定していたより粘着的であることが分かった」と分析した。

原油

  原油先物相場は反発。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=74ドルを上回り、約5カ月ぶりの高値を付けた。米国がイスラエルの対イラン攻撃に加わる寸前にあるとの観測が広がり、中東での原油供給混乱への警戒感が高まった。

  トランプ氏はこの日、「われわれの忍耐は限界に近づいている」とトゥルース・ソーシャルに投稿。イランに無条件降伏を迫った。

  現時点では、イランの原油輸出インフラは被害を免れており、今回の軍事衝突による影響の大部分は海運市場に限定されている。市場関係者は、世界の石油の約5分の1が通過するホルムズ海峡でイランが妨害に動く兆候がないかを注視している。

  PVMのアナリスト、タマス・バルガ氏は「緩慢ながらも不可逆的な沈静化が近く訪れるとの期待が高まっている可能性はあるが、結果を確信をもって予測するのは到底不可能だ」と指摘。「イスラエルとイランの戦争において、地政学的なサイクルの収束が数日で訪れることはないだろう」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比3.07ドル(4.3%)高い1バレル=74.84ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は4.4%高の76.45ドルで引けた。 

  金スポット相場は上げ下げを繰り返す不安定な値動き。中東での地政学リスク拡大と弱い米経済指標の両方が意識された。

  金価格は先週、イスラエルがイラン核施設への攻撃に踏み切ったのを受けて週間ベースでは約4%高となった。イスラエルとイランは攻撃の応酬を続けているが、その後の金の上げ幅は限定的となっている。

  ジュリアス・ベアの次世代リサーチ責任者、カルステン・メンケ氏は「今回の紛争の潜在的影響や、市場で短期筋が示す典型的な動揺を踏まえると、金の反応は一見すると意外に映るかもしれない」と指摘。「だが注意深く見ると、こうした地政学的ショックが金価格を持続的に押し上げることはないという過去の傾向と一致していることが分かる」と述べた。

   スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前日比5ドル(0.15%)高の1オンス=3390.23ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は10.40ドル(0.3%)安の3406.90ドルで引けた。

原題:Stocks Fall as Israel-Iran Jitters Spur Oil Rally: Markets Wrap

US Bonds Rise as Traders Bet on at Least One Fed Cut in 2025

Dollar Rises Ahead of Fed; Pound Lags Behind Peers: Inside G-10

Oil Soars as Trump Raises Concerns of Escalating Middle East War

Gold Swings as Traders Weigh Middle East Conflict, Weak Data(抜粋)

(原文更新に伴い、外為部分に市場関係者のコメントを追加して更新します)

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