火星滞在13周年を迎えたNASAの探査機「キュリオシティ」が運用効率化のための新機能を導入

サイエンス

火星着陸から13年が経過したNASAの探査車キュリオシティに、運用効率を高めるための新たな機能が導入されました。搭載された原子力電池のエネルギーを最大限に活用するため、自律性の向上や複数の作業を同時に行うマルチタスク能力が追加されています。これにより、火星の気候変動の謎を探るための科学探査を、今後も継続していくための電力を確保することが可能になります。

Marking 13 Years on Mars, NASA’s Curiosity Picks Up New Skills | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)

https://www.jpl.nasa.gov/news/marking-13-years-on-mars-nasas-curiosity-picks-up-new-skills/

キュリオシティは2011年に打ち上げられた火星探査船「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」に搭載された探査機ローバーです。記事作成時点で、キュリオシティはアイオリス山にある「ボックスワーク」と呼ばれる網目状の地層を調査中。この地層は数十億年前の地下水によって形成されたと考えられており、火星が乾燥していく時代に地下で生命が生存できた可能性を探る手がかりになると期待されています。

キュリオシティの動力源は、プルトニウムの放射性崩壊による熱を利用して発電する多目的放射性同位体熱電気転換器(MMRTG)です。太陽光パネルに依存していた過去の探査機と異なり天候に左右されない一方で、時間経過に伴うプルトニウムの崩壊で発電量は徐々に低下します。そのため、バッテリーの再充電に要する時間が増え、1日あたりの科学活動に使えるエネルギーが減少するという課題があります。この電力収支は、運用チームによって慎重に管理されています。 この課題に対応するため、NASAは2021年から複数のタスクを安全に組み合わせる研究を進めてきたとのこと。例えば、従来は個別に行っていた地球へのデータ送信と、走行やロボットアームの操作、画像撮影などを同時に実行できるように改良されました。これにより、ヒーターや各機器の稼働時間が短縮され、エネルギー消費が削減されます。

また、予定されたタスクが早く完了した場合に、探査車が自律的にスリープモードへ移行する機能も追加されました。これにより、次の活動日までの再充電時間を短縮できます。NASAのジェット推進研究所(JPL)のエンジニアによると、ミッション初期の慎重な運用から、探査車自身の判断に任せる部分を増やすアプローチに移行しているとのこと。 これまでにも、キュリオシティには様々な問題解決のための改良が加えられてきました。ロボットアームのドリルの機械的な問題に対しては、サンプルの採取方法がソフトウェアで変更されたほか 、カメラのカラーフィルターの故障時には、別の方法で同質の画像を撮影する回避策が開発されました。 また、岩で傷ついた車輪の摩耗を抑制するアルゴリズムも導入されています。車輪には複数の穴が開いていますが、これまでの走行実績から今後も長年の探査に耐えうるとNASAは判断し、「こうした継続的な改良により、キュリオシティは今後も活発な探査を続けることが可能となります」と述べました。

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