一体どこから来た!? “ほぼ最後尾”28番手から2位表彰台! 360号車RUNUPはいかにして特大ジャンプアップに成功したか
スーパーGTでは時折、最後尾に近い位置からスタートしたチームが優勝や表彰台を手にするというおとぎ話のようなことが起きる。タイヤ開発競争によって生まれる各車のパフォーマンス差、複数回のピットストップによって戦略的要素が絡むセミ耐久フォーマットによるところが大きい。オートポリスで行なわれた第7戦、GT300クラスでの360号車RUNUP × SOL GT-Rの26ポジションアップも観る者を驚かせた。
チームオーナー田中篤氏が代表を務める田和通商、監督の西川正明氏が代表を務める再春館製薬所はいずれも九州の企業であり(前者が長崎、後者が熊本)、360号車RUNUPにとってオートポリス戦はホームレース。今回が熊本地震の復興支援大会という意味でも注目チームのひとつであったが、予選28番手に終わったことから優勝争いという点では完全にノーマークの存在であった。
左から田中篤、金丸ユウ、荒川麟
写真: Masahide Kamio
しかし、各車が2回の義務ピットをあらかた消化した3時間レースの終盤、中継グラフィックにはRUNUPが2回目のピットストップを終えた車両のトップに表示されていた。あまりのジャンプアップに、GT500の優勝争いやGT300のトップ争い(と思われていたもの)を追いかけていたメディアも一様に困惑していた。
ドライバーたちの証言も踏まえながら、彼らの浮上の要因を整理する。
スタートドライバーを務めたのは荒川麟。レース序盤はスプラッシュ&ゴーのピットストップを行なってアンダーカットを狙うチームがある中、荒川は粘りの走行でロングスティントを走った。最初の1時間を経過する時点では、スプラッシュ組がピットに入ったことでいくつか順位を上げていたが、それでも中団下位を走っていた。
レースが折り返し地点を迎えたタイミングで、45周を走った荒川はようやくピットイン。給油、タイヤ交換、ドライバー交代のフルサービスで、金丸ユウへと交代した。幸運だったのは、この直後に52号車Green Brave GR Supra GTのアクシデントでセーフティカーが入ったことだ。これで各車のギャップが縮まったため、フルサービスの長時間ストップのロスがほとんど帳消しとなったのだ。
このセーフティカーが解除されるタイミングで、RUNUPは16番手。まだまだトップ争いが見える順位ではない。
そしてセーフティカーが解除されてリスタートが切られた周回で、GT300は10台前後がピットへと滑り込んできたが、その中にRUNUPの姿もあった。1回目のルーティンストップ後、ほとんどレースを戦っていない状態でだ。つまり彼らはタイヤを交換するわけでもドライバーを再交代するわけでもなく、義務とされている2回目の給油を消化するためだけにピットに入ってきたのだ。
「ガソリン的には(1回目の給油の時点で)最後まで走り切れる状態でした。ただ義務消化が必要だったので、セーフティカー明けにスプラッシュでガソリンだけ入れて、最後まで金丸選手が走り切るという形でした」と荒川は説明する。
GT300では2番目に1コーナー寄りのピットだったRUNUPは、忙しくピット作業を行なうライバルを尻目に、わずか数秒の静止時間でコースへ復帰。もはや「短い給油を行なった」というより、「給油義務を満たしたという既成事実を作るため、2秒ほど給油リグを差し込んで申し訳程度のガソリンを入れた」という表現が近い。
2回のピットストップがレース展開に完璧なほどマッチした結果、事実上のトップに立ったRUNUP。最後は同じくタイヤ無交換の96号車K-tunes RC F GT3、そして666号車seven x seven PORSCHE GT3R EVOに抜かれはしたが、「ヨコハマさんのタイヤが最後まで持ってくれて、ペースも比較的落ちなかった(荒川)」ことで3番手でチェッカーを受けた。そしてseven x sevenは義務ピットを適切に消化できておらずペナルティを受けたことから、2位表彰台が転がり込んできた。チームとしては2020年以来6年ぶりの表彰台だった。
2戦連続でGT-R × ヨコハマがタイヤ無交換に成功
これまではブリヂストンタイヤ勢や、車重の軽いMC86 マッハ号が得意とする戦略というイメージのあったタイヤ無交換作戦だが、前戦SUGOの56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rに続き、GT-R GT3 × ヨコハマタイヤというパッケージが無交換作戦を成功させた。
これまで多くのレースでタイヤ無交換作戦を駆使してきた52号車Green Brave GR Supra GTの吉田広樹は予選後のインタビューで、自分たちのようなGTA-GT300規定車両は昨年からフロントタイヤが小径化したことでタイヤに厳しい方向になっていると説明。SUGOでリアライズがタイヤ無交換で2位に食い込んできたことに驚いたと語った。
「最近は周りのメーカーも、予選でQ1落ちしてもレースで上がってくるようなペースの強さが目立っています」
「この前のSUGOでも、(56号車が)無交換でまさかあんな順位まで上がってくるとは思っていませんでした。車種的に考えても、GT-Rでそれができるということが大きいですよね」
「昔のように『BSは無交換できて、周りが持たない』ということはないと自覚しています」
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