就寝前のセックスや自慰行為は客観的な睡眠の質を向上させることが判明
「セックスや自慰行為をするとよく眠れる」という説を聞いたことがある人もいるかもじれませんが、オーガズムと睡眠について調べた既存の研究のほとんどは主観的な報告に依存しています。そこでオーストラリアの研究チームは、セックスや自慰行為が睡眠の質に与える影響を客観的に測定する実験を行いました。
Sleep on it: A pilot study exploring the impact of sexual activity on sleep outcomes in cohabiting couples - Sleep Health: Journal of the National Sleep Foundation
https://www.sleephealthjournal.org/article/S2352-7218(24)00261-4/fulltextSexual activity before bed improves objective sleep quality, study finds https://www.psypost.org/sexual-activity-before-bed-improves-objective-sleep-quality-study-finds/
オーストラリアのセントラルクイーンズランド大学で睡眠について研究しているミシェル・ラステラ博士は、「私は常に睡眠に関するさまざまな質問を受けています。よくある質問が、『なぜパートナーはセックスの後すぐに寝てしまうのに、私は寝られないのか?』というものです。私がこの問題について頻繁に質問されるのは、研究によるエビデンスが本当に不足しているからだろうと思いました」と述べています。
ラステラ氏がこのトピックについて見聞きする質問の多くは、「セックスの後に男性はすぐ寝てしまうのに女性はなかなか寝られない」という内容でした。この点からラステラ氏は、性行為でオーガズムに達したかどうかが、その後の睡眠に関係しているのではないかと推測したとのこと。 ラステラ氏の研究チームは、南オーストラリア州で同居する性的に活発な異性愛者のカップル7組を対象に研究を行いました。合計14人の被験者らは睡眠習慣に影響を与える可能性がある障害がなく、女性は妊娠しておらず、子どももいませんでした。被験者の平均年齢は約26歳で、いずれのカップルも週に1回以上はセックスをしていたとのことです。研究では、被験者らが合計11日にわたって追跡されました。調査が行われた11日は「セックスや自慰行為をしない夜」「1人で自慰行為をする夜」「パートナーとセックスする夜」に割り当てられ、被験者は就寝する直前に1人での自慰行為またはセックスを行い、いずれの夜もヘッドバンドタイプの睡眠ポリグラフ装置を装着して就寝しました。また、翌日には主観的な性行為の質や気分、睡眠の質などについて報告しました。 データを分析したところ、何かしらの性行為を行った夜は、性行為をしなかった夜よりも就寝時間が遅くなっていました。しかし、入眠後の覚醒時間は有意に短く、睡眠効率が高かったことも判明しました。これは、被験者がベッドに入っている時間のうち、実際に眠っている時間が長かったということを意味します。
ベッドにいる時間のうち本当に睡眠している時間を示す睡眠効率は、1人で自慰行為をした夜は平均93.2%、パートナーとセックスした夜は平均93.4%、性行為をしなかった夜は平均91.5%でした。また、性行為をした夜は夜間の覚醒時間が約7分短くなったとのことです。 興味深いことに、性行為に伴う睡眠の改善は客観的なデータにおいてのみ明らかでした。被験者自身の主観的な評価では、就寝前に性行為をしている日もそうでない日も、睡眠の質に有意な違いはありませんでした。また、被験者はパートナーとセックスした翌日に、モチベーションや1日を始める準備が整っている感覚が強いことも報告しています。 ラステラ氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「私たちは1人のマスターベーションであれパートナーとのセックスであれ、性行為をすることで夜中に起きている時間が減り、全体的な睡眠効率も改善され、客観的な睡眠の質が向上することを観察しました。睡眠時間や入眠までの時間、主観的な睡眠指標に違いはありませんでした」と述べました。
研究チームは今回の結果について、オーガズムに達した後のホルモン分泌の変化が影響している可能性があると考えています。オーガズムはオキシトシンやプロラクチンといったホルモンの分泌量を増やし、ストレスホルモンであるコルチゾールの値を低下させることがわかっています。 オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレス軽減や睡眠の質の向上に関連しているほか、プロラクチンも性的満足やリラクゼーションと関連付けられています。これらのホルモン分泌の変化が覚醒状態を抑制し、安らかな睡眠へのスムーズな移行を促している可能性があるそうです。 なお、今回の研究はサンプル数が14人と少なく、被験者が若くて健康な異性愛者に限定されていました。また、被験者は性行為後にモニタリング用のヘッドバンドを着けなくてはならず、現実のシナリオとは異なる部分もありました。そのため、ラステラ氏らはより大規模で多様な被験者を対象に研究を行うため、研究資金を募っているとのことです。
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