海外での広島と長崎に対する原爆投下に対する見解が変わってきている
最近驚いたことが、かつては欧州では最も反日的だったイギリスの保守系の新聞やテレビさえ、ここ最近は広島と長崎への原爆投下は不必要なことであったと言う意見を報道することが目立ってきていることです。
イギリスの保守系新聞でありかなり愛国的なDaily Mailのコラムニストピーター・ヒッチンス氏は、今年の8月7日のコラムで「広島に原爆を落としたのはモラル的に許されないとだったと認めたくないがために、仕方がないことだったというのか?」と語り、 アメリカの歴史学者である長谷川毅教授の著書を引用し、日本が幸福を認めたのはソ連が連合国側で先頭に参加したからであって原爆を落とされたからではないと言うことを強調しています。
ヒッチンス氏の 父親はイギリス海軍に所属しており日本軍と戦ったので死ぬまで日本に原爆を落としたのはさらなる被害を防ぐために正しいことであった、 原爆を落とさなければ日本人は戦い続けただろうと言うことを言っていたそうです。
彼の父親のような見方はこれまでイギリスやアメリカだけではなく欧州大陸やカナダ、オーストラリアでもごく当たり前の見解でした。
海外かぶれの日本人が言わない 欧米住んだら地獄だった件(8月25日発売)
日本の人は海外で広島や長崎のことを現地の人と議論すると言う機会がないので実感してないかもしれませんが、 日本が被害者であったことや原爆の脅威がどれだけ恐ろしいものであったかと言うことを語っても大半の人は日本が戦争を止めなかったから仕方がないのだと言うのが当たり前だったのです。
私は90年代にアメリカ留学中に政治学を専攻する生徒や模擬国連をやっている生徒と原爆と人道について大変激しい議論になったことがあります。
私の周囲はアメリカ南部の白人の学生しかおらず私はたった1人の日本人でした。
生徒の大半は日本の戦争責任を激しく非難し、 原爆がどのような被害をもたらしたかと言うことに耳を傾ける人は全くいませんでした。
しかし今考えると彼らはうすうすどんなことが起きたかと言う事は知っており、 アメリカが行ったことを認めたくないと言う自責の念があったのかもしれません。
そして原爆は日本人には落としたが、ドイツには落とさなかったことは、 地理的に欧州に被害をもたらしたくないからと言うよりも人種差別的な側面があったことも 意識していたのでしょう。
アメリカの田舎の大学で日本の原爆被害を詳しく知っており、 アメリカはひどいことをしたとはっきり言っておられたのは宣教師として終戦直後に日本に赴任し、戦争被害者を救済し、長年日本に住んでいたアメリカ人の教授でした。
広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式の様子 2025年8月 首相官邸HPより
この方はキリスト教的なモラルの側面から原爆は全く許されることではなかったと言う見解をお持ちで、 アメリカの学生に対して日本の戦争被害や第二次世界大戦の事実を丁寧に教えることをライフワークにされておられました。
ところが今は完全に潮目が変化しつつあります。
デイリーメールさえこのような意見を掲載し、 東京大空襲や日本の一般人の被害について詳しく語っているのです。
そしてこの新聞だけではなく他の媒体でも広島や長崎の実際の被害やかなり凄惨な動画がネットに掲載されるようになりました。
Netflixではかなり前から「火垂るの墓」が放映されており、 様々な国の人々がアニメを通して日本の戦争体験を学んでいます。 これはかつてのアメリカや欧州であれば全く考えられなかったことです。 原爆の投下を議論することができず、 原爆の被害を科学的に捉えた資料でさえも博物館で 展示することができなかったのです。
そしてこれらの国でも特に若い世代では原爆は使うべきではなかったと言う意見が現在は増えており、 実際に広島や長崎を訪問する人まで増えているのです。
アメリカのPew Research Centerの世論調査では、18歳から29歳までの44%が原爆は使われるべきではなかったと回答していますが、使うべきだったという回答はたった27%です。30%はわからないと回答しています。
65歳以上の場合は20%が使われるべきではなかった、 48%が使うべきだったと回答しています。
かつてのアメリカを知っているとこれは本当に驚くべき回答結果です。
今になりなぜ 原爆が人道的に許されるべきではなかったと言う意見が増えているのは、やはりロシアが核兵器を使う可能性が絶対にないとは言えないと言う緊迫した状況にあることが原因でしょう。
日本の人は知らないかもしれませんが、実はロシアがウクライナに侵攻を始めた直後にイギリスのテレビ局では朝の番組にNATOの高官が出演し、 ロシアが核兵器を使った場合欧州の各都市にはどのような影響があるかと言うことをかなり真剣に解説していました。 欧州の他の国でも ロシアが戦火を拡大したり核兵器を使うということがかなり現実味を持って語られてきたのです。
日本はメディアに規制があるのかそれとも単に視聴者が興味がないからなのか知りませんが、何故かほとんど話題にはなっていません。