[社説]混迷を好機にする行動の1年に
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未知なる年への希望と不安が交錯する2026年が明けた。戦後80年の間に確立したルールや枠組みが至るところでほころび、世界も日本も新たな秩序を手探りする「海図なき時代」を迎えた。
激しい変化に立ちすくむのではなく、混迷を好機ととらえて将来への展望を開く攻めの変革を進めたい。26年をしなやかな発想と行動の起点にすることが大切だ。
25年は第2次世界大戦後に確立した世界を律する土台が著しく傷んだ。「常識の革命」を掲げて再登板したトランプ米大統領は世界貿易機関(WTO)のルールを無視した高関税を全世界にかけ、自由貿易体制をディール(取引)で翻弄した。米主導で発足した国連を「我々のために存在していない」と酷評し、気候変動を詐欺とみなす。地球規模の課題解決への国際協調は崩れ続けている。
トランプ氏はウクライナ戦争の和平交渉でロシア寄りの姿勢を随所にみせ「力による現状変更」を既成事実にしかねない。中国の習近平国家主席はロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記と強権国の結束を誇示した。26年は米中首脳の相互訪問も予定され、トランプ氏は超大国の関係を「G2」と公言する。日米欧の主要7カ国(G7)の存在はかすむ。
民主主義の侵食も進む。人工知能(AI)の進化と浸透は多くの利便と投資機会をもたらす半面、SNSを通じた偽情報や偏った見解の拡散で人間社会の分断を深める。歴史家のユヴァル・ノア・ハラリ氏は「我々は人類史上最も洗練された情報技術を持つが、まともに話すことも意見の一致を見ることもしなくなりつつある」と本紙に対して憂慮を口にした。
三権分立や報道の自由が脅かされる米国に加え、欧州では国民の不安に便乗した極右政党が各国の政治を揺動する。日本でも排外主義や世論の分断で自民党を軸とする政治体制の安定が崩れ、ポピュリズムの広がりによる多党化の時代を迎えた。
秩序崩壊の悪影響に気づかぬまま、人類は取り返しのつかない誤った道を進み始めたのではないか。そんな強い危機感を抱く。
だからこそ、26年はピンチをチャンスに変える起点にしなければならない。厳しい現実を直視し、将来世代に持続的な社会や経済を引き継ぐ答えを見いだすことが急務だ。新たな秩序を作り出す柔軟な知恵と努力が求められる。
日本で史上初の女性首相に就いた高市早苗氏は、道を誤らずに日本の展望を開く戦略と行動を導いてほしい。安全保障や経済などあらゆる面で日米の緊密な同盟関係を堅持するのは必須の前提だ。一方で過剰な「米国頼み」からの脱却も見据えた複眼的な思考が欠かせない。
日本の国力を内と外の両方向で高めねばならない。まずは経済の成長力を高め、幾多の困難に対応するレジリエンス(回復力)を鍛え直すことだ。物価上昇と金利上昇が同時に進むインフレの時代こそ、賃上げが進み消費や投資が伸びるプラスの循環を確実にしたい。日本企業の豊富な資金力や人材の潜在力を生かす知恵を官民で絞り、実践を急ぐ必要がある。
高市政権は危機管理の政府投資を成長の呼び水とする「責任ある積極財政」を掲げるが、巨額の債務を抱えた日本の財政に対するマーケットの信認を落としてはならない。ワイズスペンディング(賢い支出)の徹底が必須である。
将来不安の解消にも真剣な対応を求める。真の弱者に的を絞る支援のために政府のインフラを整え、負担を含む税・社会保障の一体改革を与野党が熟議すべきだ。
対外的には欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)、インドなどの新興国と能動的に手を組み、国際協調の真空状態を防ぎたい。包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)とEUの本格的な連携による自由貿易の基盤作りも急務となる。
サプライチェーン(供給網)強化やAIのルール、脱炭素を巡る多国間の合意も欠かせない。米中など大国主導の一方的な秩序が作られないよう、日本は同志国との協調の先頭にたつべきだ。
11月には米中間選挙が控える。米中対立の構図が変容し、高市氏の台湾有事発言に伴う日中関係の緊張も解けない。世界の紛争の行方や、AIへの期待が先行する金融市場の先行きも見通せない。
だが、不確実性を思考停止の言い訳にしてはならない。悲観論でなく「警戒的な楽観主義」のもとで変革に挑む1年にしたい。
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