東映、黒人「弥助」主人公の映画を検討「海外から提案あった」 「制作決定」報道は否定

東映の本社=東京都中央区

東映の和田耕一専務は14日の決算発表会見の質疑で、織田信長に仕えた黒人「弥助」を主人公とした映画を南アフリカの会社と共同制作するという報道について、「決定しているわけではない」と否定した。ただ、外部から制作の提案があったことを認め、「海外からいくつかいただいている提案の一つとして検討している」と述べた。

米国のエンターテインメント情報を取り扱う専門サイト「デッドライン・ドットコム」は4月10日、東映が、南アフリカの映画監督マンドラ・デュベ氏が設立した会社と共同で、弥助を主人公とした映画『Yasuke – Way Of The Butterfly(蝶の道、仮題)』を制作すると報道。制作する方針が米ロサンゼルスで発表されたとして、日本政府の支援を受ける予定だと報じていた。

東映が4月に京都撮影所のプロモーションの一環としてロサンゼルスで開いたイベントで、この映画制作の提案について何らかのやり取りがあったようだ。現在は実際に制作するかどうかを含め、共同で検討しているとみられる。

海外で進む「英雄化」

宣教師が連れて来て、黒い肌を珍しがった信長が召し抱えたという弥助は実在の人物。史料が少なく、侍だったかどうかはっきりしない。少なくとも、合戦で活躍したという情報は皆無だ。しかし数年前から、海外では日本の史実よりも「多様性・公平性・包括性(DEI)」を優先した弥助の〝英雄化〟が進んでいると指摘されている。フランスのゲーム会社、ユービーアイ(UBI)ソフトによる世界的人気シリーズの最新作『アサシン クリード シャドウズ』(2025年3月発売)では主人公の一人として弥助を採用し、屈強な侍として描いた。

ゲーム『アサシン クリード シャドウズ』で、屈強な侍として描かれた「弥助」(ユービーアイソフト提供)

ゲームや映像作品で史実と異なる設定を採用することは珍しくないが、日本の歴史の知識がない海外の利用者や視聴者は、英雄化された弥助を史実と思い込みがちで、誤った日本史が海外で広がる懸念がある。実際にUBIは、弥助が「実在した伝説の侍」だったという情報を発信している。

Yasuke – Way Of The Butterfly』は海外で出されているコミックが原作との情報があり、「okayafrica」というサイトによると、このコミックは、弥助が「最初のアフリカの侍」になる物語だという。同サイトでは制作者の一人が、アフリカの視点から弥助を描くべきだとの意欲を示している。(高橋寛次)

黒人「弥助」英雄説は行き過ぎたDEI 歴史的虚偽を広める人物は第二の吉田清治氏だ

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