クモも眠ることを初確認、寝ている間に脚をピクピク丸めていた (2/3)
こうした昼の様子は、日が暮れると少しずつ変わっていきました。
夜が近づくと、クモたちは寝床を探し始め、多くは糸でできた隠れ家に向かいました。
そして落ち着く前に、長い時間をかけて体の手入れをします。
研究者たちによると、8本の脚すべてを丁寧に掃除してから眠ることが多いそうです。
2人はこれを、私たちが寝る前に歯をみがくのとそう変わらない「就寝前の習慣」のようだと表現しています。
寝床は糸でできた小さな水平の台で、研究者たちは「小さなハンモック」と呼んでいます。
クモはこの台に逆さまにとまり、決まった寝姿勢をとって、少しずつほとんど動かなくなっていきます。
やがておなか(腹部)がゆっくり垂れ下がり、体の前にある短い脚のような器官(触肢:しょくし)は内側にたたまれます。
起きている時は触肢を左右に開いているので、眠る時とははっきり違う形です。
論文の図の一部で、ポーシャの3つの姿勢を並べてくらべています。左は眠り始めの姿で、糸の台の下に逆さにとまり、触肢を内側に引き寄せています。真ん中は眠っている時の姿で、体と触肢がはっきり垂れ下がり、台の下に低くぶら下がっています。右は目を覚ます時の姿で、触肢を広げ、体に力が入って台に近づいています。Credit: Geiger et al., Proceedings of the National Academy of Sciences (2026)(CC BY 4.0、図2の一部を切り出し)この眠りの時間帯は、暗い時間帯とよく重なっていました。
12時間ごとに明暗が切り替わる条件で、クモは暗くなって平均14分ほどで眠りにつきました。
そして明かりがつくと、ほぼその瞬間に目を覚ましています。
12時間の夜のうち、眠りの時間帯は平均で約10.7時間に及びました。
途中で目を覚ますのは1時間に1回ほどで、姿勢を直したり手入れをしたりする短い間だけでした。
また、明暗の手がかりがなくても、体内時計による一日のリズムが続くことも確かめられました。
そして、この静かな眠りの合間に、クモは別の顔を見せました。
目の奥の網膜をすばやく動かし、脚やおなか、糸いぼ(糸を出す突起)など、体のあちこちをぴくぴくと震わせるのです。
ハエトリグモの仲間のメスの目を近くから写した写真です(アメリカ・フロリダ州)。同じ仲間の別の種で、ポーシャそのものではありません。眠りの合間のポーシャは、こうした目の奥にある網膜をすばやく動かしていました。Credit: Thomas Shahan from USA / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)眠っているポーシャが、目の奥の網膜を動かしたり脚をぴくぴくさせたりする様子の動画です。
動画: Geiger et al., PNAS (2026) の映像(YouTube「ScienceAlert External Sources」)
2022年に別のハエトリグモで報告された、レム睡眠に似た状態(レム様睡眠)と同じ動きです。
10匹を合わせると、このレム様睡眠は109回記録されました。
1匹が一晩に見せる回数は平均約11回で、1回あたり約83秒(1分20秒あまり)続きました。
最初に現れるのは平均で眠り始めの約4時間後でしたが、その時刻はクモによって大きく違いました。
さらに、レム様睡眠の約39%では、脚がくるりと丸まりました。
この割合は、2022年の研究で別のハエトリグモに見られた約40%とほぼ同じです。
クモは、脚を伸ばす時に体液の圧力を使う、という独特の仕組みを持っています。
研究チームは、筋肉の張りと体液の圧が一時的に下がって力が抜け、脚が丸まった可能性が高いと見ています。
クモの脚がレム様睡眠中に丸まるしくみについて、研究チームの考えを表した模式図です(形は模式的)。脚を内側から押し伸ばしていた体液の圧が下がると、伸ばしておけずに丸まる、という見方です。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)背骨のある動物で、レム睡眠中に筋肉の力が抜ける現象を思わせます。
朝になると、クモはもう一度体の手入れをしてから、その日の活動を始めました。
ポーシャの夜は、静かな眠りとぴくぴく動くレム様睡眠という、2つの段階を行き来していたのです。