イランを見捨てたプーチンのロシア、イラン戦争で見えた権威主義枢軸の現実とは?(Wedge(ウェッジ))
7月10日付けウォールストリート・ジャーナル紙は「権威主義枢軸の限界」との解説記事を掲げ、イラン戦争の際の中露の対イラン協力欠如等を例に、CRINKs(China, Russia, Iran and North Korea)協力の限界を解説している。要旨は以下の通り。 権威主義枢軸国は、イラン戦争でイランをほとんど支援しなかった。中・露・イラン・北朝鮮には相互防衛義務がなく、共通項は米国敵視である。ただ、イラン戦争で彼らの協力関係を過小評価するのは間違いと警告する向きもある。 この4カ国は長年、軍事・技術協力で能力不足を補ってきた。イランが核兵器保有を含む次の一手を考える際もそうだろう。 CRINKsは米国が彼らの中の1国に集中できないように行動している。彼らの中で中国が最強だ。他の3カ国は西側の制裁対象で対中依存を強めている。 米高官は、中国は台湾侵攻の際は仲間にユーラシアで多正面戦争を起こすよう圧力をかけると懸念している。朝鮮半島、東欧、中東同時紛争には民主主義同盟国の資源は不十分だ。台湾外交副部長・陳明祺はインド太平洋と欧州の2戦域の連関を、日韓沖での露中海軍共同哨戒の頻繁実施、ウクライナ戦争への北朝鮮軍派遣等で指摘する。 ルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長は、習近平が台湾を攻撃する際は、格下のプーチンに電話し欧州NATO加盟国攻撃を頼むだろうと言っている。ロシア専門家は、ロシアが中国のためそんなリスクを取るか懐疑的だ。 中国は、ウクライナ戦争におけるロシアの敗北を望まない。そうなれば米国は中国に焦点を当てるからだ。 中国は今のところロシアへ殺傷武器は供給していないが、ロシアの防衛産業が輸入する汎用部品の最大の供給者だ。中国は自己利益を最優先する。 米国との地政学的競争を最重視し、他国との関係は対米関係との連関で考える。中国高官はパキスタンに供給した武器がインド軍のラファール戦闘機を撃墜したことに満足だろう。ロシアの防空システムがイスラエルと米国のイラン爆撃阻止に失敗したのと大違いだ。 イランは対欧関係を犠牲にしてロシアにドローン他を供給したがロシアは最新鋭兵器をイランに供給せず、イランは大いに失望した。戦争はイランの孤立を再認識させた。イランは中国の属国になるしか選択肢が無いと言う向きさえある。 CRINKsの中では、露・北朝鮮のみが相互防衛協定を持つ。北朝鮮には対露関係が最重要で中国はロシアほど信頼できない。ロシアは北朝鮮の核兵器を対西側対立の資産と見ている。ウクライナ戦争への軍派遣はロシアの同盟国で唯一だ。