世界は「水破産」の新たな時代に 国連報告書が警告
トルコ・コンヤ県に発生した陥没穴。近年、干ばつと地下水の過剰利用により陥没穴が増加している/Yasin Akgul/AFP/Getty Images
(CNN) 世界は、取り返しのつかない結果を伴う「水破産」の新たな時代に入った――。国連の新たな報告書はそう警告している。
国連大学が20日に公表した報告書によると、世界は地球規模の水破産の時代に突入しており、「水危機」や「水ストレス」といった言葉ではその深刻さを捉えきれないという。今回の報告書は、学術誌「ウォーター・リソーシズ」に掲載された研究を基にまとめられた。
世界各地が深刻な水問題に直面している。アフガニスタンの首都カブールは、近代都市として初めて水が枯渇する可能性があるとされる。メキシコ市では、地下に広がる巨大な帯水層から水を過剰にくみ上げているため、年間およそ50センチのペースで地盤沈下が進んでいる。米国の南西部では、干ばつに見舞われたコロラド川の減少する水をどう分配するかをめぐり、州同士が絶えず対立している。
「この状況を危機と呼び続けることは、一時的なものだと示唆していることになる。これは。衝撃的な出来事だ。我々はそれを軽減することができる」。国連大学水・環境・保健研究所の所長で、報告書の著者でもあるカーベ・マダーニ氏はそう語る。
破産の場合、可能な限り修復し影響を緩和することが重要だが、「新たな現実、つまり以前よりも制限の厳しい新たな状況に適応する必要もある」と、マダーニ氏はCNNに述べた。
水の破産とは何か。自然は雨や雪という形で水資源を提供してくれるが、世界はそれ以上の水を消費している。川や湖、湿地、地下帯水層から水をくみ上げるペースは、水が補充されるペースをはるかに上回り、我々は負債を抱えている状態だ。気候変動による猛暑や干ばつが追い打ちをかけ、利用できる水の量がさらに減少している。
その結果、河川や湖は縮小し、湿地は干上がり、帯水層は枯渇に向かう。地盤の崩壊や陥没、砂漠化が進み、雪が不足し、氷河の融解も起きている。
報告書が示す数字は厳しい。1990年以降、世界の大型湖沼の50%超が水量を失い、主要な地下水脈の70%は長期的な減少傾向にある。過去50年で、欧州連合(EU)に匹敵する面積の湿地が消失し、氷河は70年以降で30%縮小した。水資源に比較的余裕のある地域でも、汚染によって飲料水として利用できる量が減っている。
マダーニ氏は「多くの地域が、水文学的な限界を超えて生活している」とし、もはやかつての状態に戻ることは不可能だと語る。
人への影響も深刻だ。世界で約40億人が、毎年少なくとも1カ月は水不足に直面している。
それにもかかわらず、水は当たり前のものとして扱われ、消費を見直す動きは乏しく、「信用枠が拡大し続けている」とマダーニ氏は言う。
米国のロサンゼルスやラスベガス、イラン首都テヘランといった都市では、水の供給が限られているにもかかわらず、拡張や開発が進められてきた。「すべてが正しく見えるのは、そうではないとわかるまで」。そしてその時こそ手遅れなのだという。
地域によって影響の度合いは異なる。中東や北アフリカでは水ストレスが極めて高く、気候変動への脆弱(ぜいじゃく)性も大きい。南アジアの一部では、地下水に依存した農業や急増する都市人口により、慢性的な水不足に陥っている。
米国の南西部も深刻な地域のひとつ。マダーニ氏は、コロラド川を例に挙げ、水の分配協定が、もはや存在しない環境条件を前提にしていると指摘する。マダーニ氏は、干ばつで川の水量は減少したが、これは一時的な危機ではないと指摘。恒久的な新しい状態であり、以前より水資源は少なくなっているという。
調査結果は憂慮すべきものだが、水資源の枯渇を認識することで、各国は短期的な危機対応から、取り返しのつかない被害を軽減するための長期的な戦略へと移行できるとマダーニ氏は述べた。
報告書は、世界最大の水の使用である農業の転換(作物の変更や効率的な灌漑<かんがい>)、AI(人工知能)やリモートセンシングを活用した水監視の強化、汚染の削減、湿地や地下水の保護強化など一連の行動を求めている。
また、水は「分断された世界をつなぐ架け橋」にもなり得ると、報告書は指摘する。「水の価値と重要性を理解する国が増えている。それが希望だ」とマダーニ氏は語る。
マダーニ氏は、報告書が行動を促すきっかけになることを望んでいる。「水破産という現実を認めることで、人々や経済、生態系を守るための厳しい選択がようやくできる。先送りすればするほど、赤字は増えるだけだ」