ゴジラ・ウルトラマンなどの超高額胸像届かずスタチューメーカー「CoolProps」が破産 購入者・東宝・円谷を取材、「一生に一度の贅沢だった」「返金よりも商品を」と悲鳴
特撮作品などのキャラクターの胸像制作などを行なっていたスタチューメーカー「CoolProps」が東京地方裁判所へ破産手続きの申請を行い、6月4日に破産手続開始決定を受けたことが分かりました。同社をめぐっては「ゴジラ」「ウルトラマン」「きかんしゃトーマス」「ロボコップ」などの高額スタチューが届かないトラブルが起こっており、SNSでも注目度の高い問題となっています。ねとらぼ編集部が購入者、破産管財人、東宝、円谷プロダクションを取材しました。 【画像で見る:届かなかったゴジラの像】
2012年に設立されたCoolPropsは、スタチューの制作・販売だけでなく、映画や演劇などで使用されるプロップ(小道具)の製作でも名の知られた会社。3Dモデリングや3D出力を用いて、映画「キングダム」シリーズ、「シン・仮面ライダー」、「仮面ライダーBLACK」、ドラマ「今際の国のアリス」、「日曜劇場 VIVANT」などにもスタチュー提供や制作協力を行っていました。 過去には「AVP: エイリアン vs プレデター」などをモチーフにした作品や「ウルトラマン」シリーズの、ウルトラマンベリアル・ウルトラマンゼロ・バルタン星人の胸像を手がけたこともあり、その高いクオリティーから根強い人気を集めていました。
事態が動いたのは2025年6月9日。スタチューなどを先払いで予約していた人たちに、東京地裁からCoolPropsの破産手続きが開始した旨の通知書が届いたのです。 これを受けて購入者らはX(Twitter)などを中心に「これウルトラマン受け取れないってこと?」「ここ最近怪しかったけど、いい物を作っていただけに本当に残念」「お金は良いから物が欲しいです、まじで辛い」と複雑な心境を投稿。中には通知書が届いていない購入者が、購入者同士での情報共有や連携を呼びかける投稿も相次いでいます。
今回の破産開始決定を受けて特に対応が注目されている商品は、東宝映像美術とCoolPropsが共同開発していた平成ゴジラの胸像「GODZILLA: ORIGINAL SUIT COLLECTION SUIT SIZE BUST PROP REPLICA "HEISEI" GODZILLA (平成ゴジラ)」38万5000円と、円谷プロダクション内にある造形スタジオ、「LIGHT SCULPTURE STUDIO(通称LSS)」の造形師や著名なソフビ原型師などが監修していたウルトラマンスーツCタイプの胸像「ULTRAMAN C-TYPE SUIT SIZE BUST PROP REPLICA」30万円。 全世界限定100体と銘打たれたゴジラの胸像は、注目度とそのクオリティーの高さから高額ながらも購入希望者が続出し、2022年の予約時点では抽選販売状態になっていました。 しかし、当初の予定では2023年2月配送予定となっていたゴジラの胸像についてCoolPropsは2023年2月27日、“COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響により中国工場での製造に遅延が発生した”との理由から到着時期が2023年7月にずれ込んだと発表。これを皮切りに商品の到着遅延発表が何度も繰り返されました。 度重なる到着遅延の発表と、問い合わせメールへのずさんな返信対応にXでは不満の声も上がっていましたが、CoolPropsは時折公式Xで製作進捗を報告。2023年9月にはゴジラの胸像の生産前サンプルが到着したことを画像付きで明かした上で、2023年内に予定している出荷に向けて生産が進んでいるとしていました。 こうした大型スタチュー商品の到着遅延についてコレクターは、「暗黙の了解だった」だと話します。
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ねとらぼ編集部が取材したのは、ウルトラマンの胸像を注文したULTRATAKU(@TAKUM78)さん。ウルトラマンファンであり、クリーチャーなどのコレクションも行っているイラストレーターです。 ──CoolPropsを知ったきっかけを教えてください。 ULTRATAKU:元々CoolPropsは、エイリアン・プレデターの商品を昔から買わせてもらっている関係で知っているメーカーでした。私はウルトラマンが一番好きなので、予約開始日の2022年12月27日にツブラヤストアから予約をしました。 ウルトラマンシリーズでいえばCoolPropsが以前発表したウルトラマンゼロの胸像も仲間と買わせてもらっていましたが、本当にクオリティーが高くて。今回のウルトラマンの胸像については、TBSのドラマ「VIVANT」に登場したりと、発売以前の実物展示にも力を入れたりしていたので、円谷プロダクションとしても肝入りの商品なのだろうという風に感じていましたから、商品の到着は心から楽しみにしていました。 ──ウルトラマンの胸像は2022年12月27日〜2023年4月9日が予約受付期間で、当初の予定では2024年5月ごろ発送予定でした。そこから到着予定が2025年1月末ごろに延期され、再度2025年4月〜5月ごろに予定が延期された旨をツブラヤストア側が告知しています。こうした商品の到着遅延についてはどう感じていましたか。 ULTRATAKU:これはCoolPropsに限ったことではないのですが、大型のスタチューは到着延期、製造遅延が常というか、暗黙の了解なんです。特に海外メーカーの場合は数年遅れというのもざらで、「日本のメーカーはちゃんとしすぎだ」なんていう話もあるぐらいです。ですから今回の発送延期についてもすごく心配していたわけではなく「2、3年以内に届けばいいな」と当初は楽観視していました。 ──状況が良くないのではないか? と気づいたきっかけは何だったのでしょうか。 ULTRATAKU:元々ツブラヤストアは購入者に対して細かく状況を報告してくれていて対応も丁寧な印象です。しかし、到着日とされていた2025年5月に入ってから「CoolPropsへ生産状況等の確認と度々試みているが、5月19日時点で具体的な出荷時期の連絡をもらえていない」という連絡がツブラヤストアから入り、このタイミングで「これは本格的におかしいな」と思い始めました。ただCoolProps側は「商品はできている」「物はある」と繰り返しアナウンスしていましたし、何かあるにしても商品を発送してから倒産するのではないかと思っていました。 ──ULTRATAKUさんからは何かアクションを行いましたか。 ULTRATAKU:CoolProps側にメールで「ツブラヤストアからCoolPropsと連絡が取れていない旨の連絡がきたがどうなっているのか?」と問い合わせました。ただ、返事はありませんでした。 ──破産を知ったきっかけを教えてください。 ULTRATAKU:ロボコップの胸像を予約していた方がXで情報発信していたのを見て知りました。そこから周りにも聞いて「本当に破産したんだ」と分かりました。ウルトラマンの胸像に関しては、ツブラヤストア経由で予約した人とCoolPropsへ直接予約した人がおり、直接予約の人には東京地裁から通知書が来ていたみたいなのですが、私はツブラヤストア経由だったので、通知書が来なかったのだと思います。 ──破産を知った後の対応と今の率直な思いをお聞かせください。 ULTRATAKU:ツブラヤストアとのメールのやり取りを行い、「状況を確認している」「キャンセル及び返金について対応しようとしている」という内容の返信をいただきました。ただ私としては返金よりも、「なんとかして商品を届けてもらえないか」という気持ちが大きいです。元々「商品は作っていて倉庫にある」という話だったのでそれをなんとか送ってもらえないかと……。 2023年に開催された「TSUBURAYA CONVENTION」ではウルトラセブンの胸像の製作が決定したと発表していたのにその後音沙汰がなかったり、購入者へのメール返信がおざなりだったりと、最近のCoolProps側の動きに対して「おかしいな」と思うところがあったのは事実です。ただ技術力は素晴らしい会社でしたし、何より、これだけの高額商品ですから注文した人たちは本当に商品の到着を楽しみにしていました。かなり厳しい状況なのは承知していますが、なんとか商品を届けて欲しいという気持ちで私はまだツブラヤストアへキャンセルの申し出をできていません。