ウクライナ戦争は習近平にとって“頭痛の種” 仲介役を中国に求めてはならない理由

 Foreign Affairs誌(電子版)の7月29日付け論説‘What Does China Want in Ukraine?’が、中国はウクライナ戦争の終結を望んではいるものの、異なる二つの立場のいずれかを犠牲にして他方を支持する決断ができず、曖昧な態度を取り続けて、紛争の解決に主導的役割を果たす可能性は低い、との見通しを述べている。  欧州にとり、中国がロシアと緊密な関係にあり、またロシアによる戦争を支持していることは、3年以上にわたり中国と欧州の関係に影を落としてきた。中国の指導者たちの多くは紛争の終結を望んでいるものの、北京が紛争の解決と地域の恒久的な平和の実現において主導的な役割を果たす可能性は低い。  まず、ウクライナ戦争の開始から今日に至るまで、中国の外交・安全保障当局者等の間で、この戦争は誰の責任によるものなのか、そして北京の指導者はどのように対応すべきかについて、依然として見解が分かれている。  中国には、この戦争はロシアがウクライナの領土保全を侵害した結果として生じた主権国家間の紛争であると見る人たちがいる一方、この戦争は冷戦終結後の地域再編の継続であると見る人たちもいる。後者にとり、ウクライナ戦争は数十年にわたる旧ソ連内部の紛争の一部でもあり、西側諸国はその根底にあるロシアの不満や懸念を無視してきたということになる。中国のほとんどの政策立案者は両方の視点を認識しており、一方を犠牲にして他方を完全に受け入れることを望んでいない。  理論的には、中国は両国を交渉のテーブルに着かせる上で有利な立場にある。中国が戦争の終結に成功すれば、責任あるグローバルな大国としての国際的イメージを強化することになるだろう。  しかしながら現実には、中国が紛争解決において中心的な役割を果たす可能性は低い。もし多国間和平プロセスが実現して招かれれば、中国は喜んで交渉のテーブルに着くだろうが、ロシアとウクライナが戦闘停止を拒み続けるならば、中国は第三者たる仲介者として成功しないだろう。  中国の地政学的なロシアとの関係もまた、紛争を効果的に仲介する能力を制約している。ロシアとの友好関係から、中国はロシアに大きな譲歩を迫ることに消極的で、行動の余地が限られている。  米欧との緊張関係は、中国の仲介者としての潜在的な有効性をさらに制限している。たとえ和平交渉を主導する意思が中国にあったとしても、ウクライナや西側諸国の方がそれを望まないかもしれない。  中国はこの紛争が欧州に及ぼす影響の大きさを十分に把握できず、結果的にこの戦争が中国と欧州の関係にどれほど深刻な緊張をもたらすかを予見することができなかった。他方で中国の意思決定者たちは、この戦争に関する米国や欧州の立場を支持してロシアとの関係を犠牲にしたくはない。

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