医師はなぜ寺社に油をまいたのか 11年後の謝罪「愚行許して」
私が油をまきました。どうか愚行をお許しください――。
複数の国宝を有する奈良の古刹(こさつ)に6月、そんな謝罪文が届いた。
11年前、全国の寺社で液体がまかれる事件が相次ぎ、この寺も被害に遭った。
文書は、アメリカで医師をしていた男性が自身の関与を告白する内容だった。
彼はなぜ、油をまいたのか。同様の被害が絶えない古都では、どんな対策が進んでいるのか。
16都府県で被害 世界遺産も
飛鳥時代の創建とされる、奈良県葛城市の当麻寺(たいまでら)。国宝・綴織当麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)や、1000年以上続く重要無形民俗文化財の「練供養」で知られる。
そんな寺で被害が見つかったのは2015年4月。県警から問い合わせを受けて調べると、国宝である本堂など7カ所に、油のような液体がまかれた痕跡があった。
防犯カメラには、重要文化財の仏像にも液体をかける男性の姿が映っており、警察に映像を提供した。
専門家に依頼して翌年までに全てを修復し、総額で数百万円を要した。
同時期には、京都や千葉など16都府県の、世界文化遺産を含む計48施設で類似の被害が確認された。
11年越しの逮捕
月日が流れ、26年3月。米国から日本へ向かう航空機内で、1人の男性が逮捕された。
米国在住の男性医師(64)。15年に千葉県香取市の香取神宮に液体をまいたとして、千葉県警が建造物損壊容疑で逮捕した。
男性は米国で産婦人科医として働きながら、13年に日本でキリスト教系の団体を設立していた。
15年に逮捕状が出たものの、米国に滞在していて逮捕できない状態が続いていた。
今年になって、日米犯罪人引き渡し条約に基づいて米国側から引き渡され、11年越しに逮捕状が執行された。
千葉県では香取神宮と成田山新勝寺(成田市)が被害に遭い、男性は関与を認めた。
「つい、香油をまいた」
その男性から、奈良の当麻寺に謝罪の文書が届いたのは6月下旬。弁護士を通じ、ファクスで送られてきた。
文書では、…
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