当時の目線で「太陽の塔・大屋根・生命の樹」、VRで日本工業大生ら再現…川崎の岡本太郎美術館で

VR技術で再現した1970年当時の太陽の塔や大屋根=日本工業大学提供

 1970年大阪万博のシンボルで、芸術家・岡本太郎の代表作の一つ「太陽の塔」を含む「テーマ館」の当時の姿を、日本工業大学(埼玉県宮代町)の学生たちが仮想現実(VR)技術で復活させた。26日に川崎市岡本太郎美術館で始まった企画展「岡本太郎と太陽の塔 万国博に賭けたもの」で、18分間の映像として紹介されている。(川崎支局 斎藤茂郎)

太陽の塔の姿の再現に取り組む杉森教授(右)と学生たち

 映像制作は2018年、同美術館が「VRで再現することで、制作者の意図を後世に伝えたい」と発案。デジタル映像制作の技術を持つ同大に依頼し、先進工学部情報メディア工学科の学生たちが制作にあたった。

 テーマ館は70年万博当時、高さ約70メートルの塔と、周囲を囲むように建てられた「大屋根」、各所に設置された芸術作品などと一体だった。太陽の塔は大阪府吹田市の万博記念公園に残され、内部は復元、公開されているが、大屋根や地下部分などにあった多くの展示物は撤去された。

 正面写真はあったが別の向きの情報が少なく、大屋根にあった「家族像」は正確な大きさや背景との距離感などがわからなかった。学生たちは写真に写っていた様々な情報や周囲の景色から割り出すなどした。図面などの資料にも目を通し、細かな展示物なども仮想空間内で立体化を目指した。歴代の4年生が卒業研究として受け継ぎ、発展させてきた。同学科4年の諏訪港人さん(22)は「先輩たちからの引き継ぎでリアリティー向上に取り組み、完成度を上げられた」と語る。

 完成した映像では、広場をゆっくり進むと遠くに見えた太陽の塔が次第に大きく迫ってくる。「地底の太陽」などがあった地下空間に進み、上って行くと、塔内部を貫くように据えられた「生命の樹」などが見られる。大屋根に出て外に展示されている作品を鑑賞した後、下に下りて地上の展示を見て終了、というもの。

 企画展ではVRゴーグルの数が限られるため、立体ではなく2次元映像の上映とした。担当学芸員の喜多春月さんは「当時の順路に沿ってテーマ館の 全貌(ぜんぼう) を映像で見られるのは画期的だ」と語る。

 指導する杉森順子教授は「大阪・関西万博を楽しんだら、こちらで学生たちの力作の映像を見て70年にタイムスリップして岡本太郎の世界に触れてほしい」と話す。プロジェクトは、今後もさらに改良を図っていくという。企画展は7月6日まで。

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