「新石器革命」とは、人類はなぜ農業を始めたのか 新説が登場
ポルトガルのトラス・オス・モンテスにて、石鎌を用いてコムギを収穫する女性たち。(PHOTOGRAPH BY VOLKMAR K. WENTZEL, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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新石器革命(農業革命とも呼ばれる)は、およそ1万2000年前に始まったと考えられている。これは最終氷期が終わり、現在の地質時代、完新世が始まる時期と重なっている。新石器革命は、人類の生活様式、食習慣、周囲との関わり方を完全に変え、現代文明への道を開くことになった。
新石器時代、狩猟採集民は自然を歩き回って、食料を調達していた。だが、劇的な変化が訪れる。食べ物を集めていた人々は農業を始め、放浪から定住へ生活様式を変えたのだ。(参考記事:「9000年前に女性ハンター、『男は狩り、女は採集』覆す発見」)
農業の始まり
この変化の正確な時期や理由については諸説あるが、人々が狩猟採集から離れ、農業へ移行していった証拠は世界各地で挙がっている。
農業が最初に始まったのは、中東の「肥沃な三日月地帯」であり、複数の集団がそれぞれ農業を発展させていったと考えられている。そのため、「農業革命」とは、異なる時期にそれぞれの場所で起こっていった、複数の革命の連続と思われる。(参考記事:「ヨーロッパの農業伝播は地中海経由か」)
人類が狩猟採集をやめて農業を始めた理由については、さまざまな仮説がある。2025年4月には、破滅的な山火事と土地の浸食が変化の原因ではないかとする研究が学術誌「Journal of Soils and Sediments」の25周年特別記念号に発表された。
エジプトにあるメイドゥムのピラミッド近くの畑で、穀物をより分ける農家。(PHOTOGRAPH BY THOMAS J. ABERCROMBIE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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この研究は、変化の発端を人類とする既存の説に異議を唱える。人類が発端だと推測する説のひとつに、人口圧によって食料の獲得競争が起き、新たな食料源が必要になったとするものがある。ほかには、食料生産を増やすため、高齢者や子どもなどが参加しやすい農業へ移行したと主張する説がある。
栽培化を試みた初期のころから改良してきた植物に、人類が頼ることを学んでいったのだろうと考える説もある。同様に、植物も人類に依存するようになっていった可能性がある。
狩猟採集から離れていった理由や経緯に関わらず、人類はどんどん定住するようになっていった。その一因は、植物の栽培化が進んだことだ。
定住化の結果
人類は2万3000年前ごろには植物や種子を集めるようになり、1万1000年前ごろにはコムギやオオムギのような穀類を育てていたと考えられている。その後、たんぱく質が豊富なエンドウ豆やレンズ豆などの作物も栽培され始めた。(参考記事:「エンドウ豆とレンズ豆は隠れたスーパー食材、抗酸化物質が豊富」)