【米国市況】S&P500が反発、一時の下げから反転-ドル142円台後半
2日の米国株市場でS&P500種株価指数は反発。製造業の統計や貿易、地政学リスクを背景に大きく下げる場面もあったが、大型テクノロジー銘柄が主導する形で上昇に転じた。この日は米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が会議に出席したが、政策金利の見通しについては発言しなかった。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5935.94 24.25 0.41% ダウ工業株30種平均 42305.48 35.41 0.08% ナスダック総合指数 19242.61 128.84 0.67%S&P500種は前月、5月としては35年ぶりの大幅高となった。6月は歴史的に上昇が抑えられる傾向にある。この日は主要な半導体株の指数が1.5%余り上昇。エヌビディアが高い。米鉄鋼・アルミニウム銘柄は大幅高。トランプ米大統領が鉄鋼の輸入関税を25%から50%に引き上げると表明したことに反応した。
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ウォール街は貿易戦争の状況を注視している。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は週内にも電話会談を行う可能性があると、米政府高官が匿名を条件に明らかにした。ロイター通信によれば、米国は貿易相手国に対し、関税に関する最善案を4日までに提示するよう要請している。ロイターは、米通商代表部(USTR)による交渉相手国への書簡の草案を引用して伝えた。
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UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマンブチャディ氏は「投資家が新たな関税関連の報道や米経済データを消化する中、市場のボラティリティーは今後も続くと予想される。財政を巡る懸念は続いており、地政学的緊張は高まっている」と述べた。
ウクライナとロシアは、トルコのイスタンブールで直接交渉を再開。戦争終結に向けた歩み寄りは見られなかったが、新たな戦争捕虜交換の下地は作った。
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国債
米国債は値下がり。トランプ大統領による関税政策を巡る懸念が再燃した。今週米国では、数多くの経済指標の発表が予定されている。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.96% 3.3 0.67% 米10年債利回り 4.44% 3.9 0.90% 米2年債利回り 3.93% 3.7 0.95% 米東部時間 16時47分利回りは、5月のISM製造業景況指数の発表後に一時上げを縮める場面もあったが、その後再び上昇を拡大した。ISM製造業指数は、3カ月連続での活動縮小を示した。
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この日は期間が長めの国債が下げを主導。利回りは10年債が一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上げ、30年債は5%を付けた。欧州時間には5年債と30年債の利回り差が100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に迫る場面もあった。
ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は、6日の米雇用統計発表と来週の10年債および30年債の入札を控えて、「イールドカーブはスティープ化するとの見方が一般的だ」と述べた。
リチャード・マグワイア氏らラボバンクのストラテジストは「安全資産とされる長期ゾーンが敬遠されている理由は確かに理解できる」とし、米国の政策見通しがあまりに不透明で、長期の米国債に買い手が付きにくい状況にあると付け加えた。
膨らむ米国の財政赤字と債務負担に警戒感が強まる中、ジェフリー・ガンドラック氏率いるダブルライン・キャピタルをはじめ、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)など一部の投資会社は、償還期限が最も長い米国債から距離を置き、金利リスクが低く、それでいてそこそこの利回りが見込める短期債へのシフトを進めている。
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この日は一時、20年債利回りが30年債利回りを1bp弱下回り、その差はほぼ4年ぶりの大きさとなった。20年債は約5年前の発行再開以来、他の米国債を一貫してアンダーパフォームしてきたが、投資家が短期債よりも長期債の保有に対してより高いリターンを要求する傾向を強めており、結果として20年債が30年債よりも魅力的とみなされる場面が生じている。
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為替
外国為替市場ではドルが主要通貨全てに対して下落。予想を下回ったISM製造業指数に反応したほか、ヘッジファンドがドルのショートポジションを拡大した。一方、貿易を巡る緊張が高まる中で円はドルに対して上昇し、値上がり率は一時1%に達した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1208.76 -7.23 -0.59% ドル/円 ¥142.72 -¥1.30 -0.90% ユーロ/ドル $1.1441 $0.0094 0.83% 米東部時間 16時47分円はISM製造業指数の発表後に一時1%高の1ドル=142円54銭を付けた。その後はやや上げを縮め、ニューヨーク時間の午後は142円台後半から143円近辺で推移した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は大幅に上昇。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成するOPECプラスが週末に生産引き上げを決めたが、一部で予想されていたほどの規模ではなかった。ウクライナとイランを巡って地政学的懸念が再燃したことも相場を押し上げた。
OPECプラスの有志国は5月31日、7月も日量41万1000バレル供給を増やすことで合意した。ただ、複数の代表が匿名で明らかにしたところによれば、ロシアを含む一部の国は今回、増産見送りを求めていた。こうした状況を踏まえ、金融機関の間では今後の追加増産回数に関する見方が分かれている。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時、前営業日比5.1%上昇した。増産決定前に市場の一部にあった弱気ポジションの巻き戻しも、相場押し上げにつながった可能性がある。
有志国は7月は日量41万1000バレルを超えるペースに増産を加速させることを検討すると、会合での決定前に事情に詳しい関係者が話していた。北海ブレント原油に対する投機的ショートポジションは会合前、既に昨年10月以来の高水準となっていた。
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コンサルティング会社オイリティクスの創業者、ケシャブ・ロヒヤ氏は「最悪の懸念はひとまず払拭された」と指摘。「ブレント原油のショートは今や2025年になってからの最高水準にある。OPEC関連の弱気な報道が相次ぐ中、それは理にかなっている。しかし、現物市場の健全なファンダメンタルズが続けば、相場急上昇の材料となる」と述べた。
ウクライナはロシア領内深くを無人機で攻撃した。また、イランは、高濃縮ウラン貯蔵量が過去最大の増加となったとする国際原子力機関(IAEA)報告書を批判。緊張が激化すれば、イラン産原油が市場に追加供給される可能性が低下する。
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ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前営業日比1.73ドル(2.8%)高い1バレル=62.52ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は2.9%上昇し、64.63ドルで引けた。
金
金スポット相場は大幅反発。米国と中国が関税を巡って非難の応酬を繰り広げていることを受け、安全な資産を求める動きがあらためて強まった。ウクライナがロシアの複数の軍拠点を無人機で攻撃し、両国和平交渉の行方に不透明感が増したことも金の買いにつながった。
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スポット価格は一時、前営業日比2.8%余り上昇した。
ウクライナとロシアはトルコのイスタンブールで直接交渉を再開したが、戦争終結に向けた歩み寄りは見られなかった。
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弱い内容となったISM製造業指数も金への需要を押し上げた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時1分現在、前営業日比89.86ドル(2.7%)高の1オンス=3379.11ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は81.80ドル(2.5%)高の3397.20ドルで引けた。
原題:S&P 500 Gets Late-Day Boost as Bonds, Dollar Fall: Markets Wrap(抜粋)
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