右派ポピュリズム政党の「福祉排外主義」
先の参院選では、参政党が得票を伸ばしました。「ポピュリズムとは何か」(中公新書)の著書がある千葉大大学院社会科学研究院教授の水島治郎さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】
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福祉排外主義
――右派ポピュリズム政党の伸長は日本だけの現象ではありません。
◆欧州では多くの国で右派ポピュリズム政党が議席を大幅に伸ばしています。背景にあるのは、移民・難民の受け入れ数の増加です。基本的な主張は福祉排外主義です。
以前は欧州での右派と左派の対立軸は、市場主義か福祉国家でした。右派は福祉を重視せず、そのために労働者とは相性が悪かったのです。ところが近年の急進右派は、「国民の福祉を充実するために、移民への便宜供与はやめよう」と主張するようになりました。
――なぜ支持されたのでしょうか。
◆欧州では物価上昇、そして住宅問題が影響しました。家賃が高騰し、若者が1人暮らしをすることができない状況になっています。そこにウクライナ戦争の影響があり、光熱費が値上がりしました。そこで「難民には住居が供給されているのに自分たちは住めない」となりました。
欧州でも政権与党が選挙で大敗する現象が続いています。物価上昇による生活苦を受けて福祉排外主義を掲げる政党が議席を伸ばす共通点があります。
たとえばドイツでは、特に旧東ドイツの地域で「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を伸ばしています。「旧西ドイツのリベラルなエリートが自分たちを『2級市民』扱いしていて、自分たちの生活を軽視している」という感覚があります。
政権入り
――政権に入るようになってきています。
◆かつての急進右派は、政権からは締め出されるべき危険な…