「副首都」構想加速、でも大阪ありき?…福岡市やさいたま市など関心も 維新案に透けて見える「大阪都構想」
災害時に首都機能をバックアップする「副首都構想」に向けた動きが加速している。自民党と日本維新の会は来年の関連法案提出を目指しており、大阪府と大阪市は23日、大阪の「副首都」化を想定した国への要望をとりまとめる予定だ。福岡市など他都市も副首都に関心を持っており、「大阪ありき」のような動きをけん制する声もある。(大槻浩之、岡田優香)
大阪府庁合同庁舎検討
大阪府の吉村洋文知事(維新代表)は今月15日、府庁で記者団に「政治・経済で首都機能をバックアップできるものを作り、ツインエンジンで日本の成長を引っ張る」と、副首都構想の必要性を改めて強調した。
副首都構想は維新が自民との連立協議で「絶対条件」に掲げ、連立政権の合意書に盛り込まれた。自維両党は11月に実務者協議をスタート。年内に論点の整理を終えて年明けにも法案づくりに着手し、来年5月頃の通常国会で法案提出を目指す。
府と大阪市は早くも副首都に向けて動いている。23日に開く副首都推進本部会議では、国への要望内容に国の出先機関が入る「副首都合同庁舎」の整備を盛り込むことも検討している。府庁西側にある府公館や旧職員会館を取り壊して庁舎を建設する案が浮上しており、府関係者によると、建設費は1000億円超との試算もある。府幹部は「大阪は独自の経済圏を抱え、国の出先機関も多い。(副首都として)大阪以上のポテンシャルを持っている地域はない」と自信を見せる。
透ける「都構想」
副首都に関心を示す都市は、大阪以外にもある。
副首都構想を巡る主な首長の発言福岡市の高島宗一郎市長は10月の記者会見で「(東京と)同時被災のリスクが最も小さい大都市は福岡。首都のバックアップ機能として、まさに適地だ」と意欲を示した。さいたま市の清水勇人市長も同月、「副首都の定義によって判断をしていくことになるが、さいたま市は災害が非常に少ない。災害に絞れば、当然副首都としての役割を果たせる」と語った。
ただ、維新が独自にまとめた関連法案の骨子素案からは、副首都構想を機に、過去に2度の住民投票で否決された「大阪都構想」の実現につなげようとの狙いも透けて見える。
骨子素案では、副首都指定の要件として、大阪都構想のように政令市を廃止して東京23区と同じ特別区を設置することが盛り込まれた。特別区の設置は法律で、「政令市と隣接自治体を含む人口200万人以上の地域」が対象とされており、単独で手を挙げられるのは横浜、名古屋、大阪の3市のみとなる。
高島氏は今月7日放送の民放番組で、共演した吉村氏に「(副首都構想は)大阪のためのものじゃないかと、ちょっと白けそうになっている」と述べ、与党協議で要件の見直しを求めた。
維新元代表の松井一郎・前大阪市長も17日の民放番組で「特別区の条件を外し、多極化を作っていくべきだ」と語った。
一方、吉村氏は「(副首都には)道府県と政令市の『二重行政』ではなく、一つに合わせた強い行政機構がふさわしい」と話している。
昇秀樹・名城大名誉教授(地方自治)の話 「目的が災害時の首都機能のバックアップなら大阪より福岡などの方が優位性があるし、首都機能を分散させるなら様々な都市に分けた方が安全で国土全体の経済成長も進む。副首都には多くの都市が手を挙げられるようにすべきで、特別区設置を前提とした維新の案は『大阪ありき』に見える」
◆副首都構想= 災害時に東京の代わりに首都機能を果たす都市圏をつくる構想。日本維新の会は東京一極集中を是正し、東京に次ぐ経済力を持った都市圏をつくることも目的に掲げている。維新が自民党と交わした連立合意書では、来年の通常国会で関連法案を成立させると明記された。