日本人でも砂糖入り飲料はBMI上昇と関連し、ミルクは適量ならBMI上昇を伴わずにSMI上昇と関連

日本人において、砂糖入り飲料を多く摂取するほどBMIが高く、適量の牛乳入り飲料はBMI上昇を伴わず筋肉量(SMI)と正の関連があることが報告さたれた。藤田医科大学の研究者が同大学の職員を対象に行った調査の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載されるとともにプレスリリースが発行された。

研究の概要:海外の報告と同様の傾向を国内研究で確認

この研究では、20~39歳の男女(計76名)を対象に、清涼飲料水の摂取エネルギーと体格(BMI、骨格筋指数〈SMI〉、体脂肪率)、握力との関係を調査した。その結果、砂糖入り飲料(SSB)を多く摂取するほどBMIが高くなることがわかった。一方で、牛乳入り飲料については、適量の摂取であればSMIと正の関連がみられた。

海外ではSSB摂取量と肥満との関係が数多く報告されているが、日本人を対象とした報告はほとんどない。海外のガイドラインでは添加糖の摂取量を総エネルギーの5%以内におさえ、SSBを水や低脂肪乳へ置き換えることが推奨されている。今回の研究結果は、このような考え方が日本人にも当てはまる可能性を示すもの。

研究成果のポイント

  • 20~39歳の男女76人に対して、各種飲料(SSB、牛乳、アルコール)と体格や握力の関係を調べた。
  • 年齢、BMIで調整した場合、SSBを多く飲む人は総エネルギー、炭水化物摂取量が多く、牛乳を多く飲む人は総エネルギー、炭水化物、脂質、タンパク質の摂取量が多い傾向が見られた。しかしこの関連は年齢、BMI、エネルギーで調整すると消失した。
  • 年齢、BMIで調整した場合、SSBを多くとる人ほどBMI、SMIが高く、牛乳を多くとる人ほどSMIが高い傾向を示した。同じエネルギー摂取量の場合も、SSBはBMIが高いという関係、牛乳はSMIが高いという関係が見られた。

研究の背景:日本人のSSB・牛乳摂取量と体組成・筋力との関連はデータが少ない

肥満は、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの心血管疾患リスク因子であり、日本では男性の30%、女性の20%が肥満と分類され、加齢とともに増加している。20代・30代は体重増加が始まるライフステージであり、この年齢層での肥満予防は重要課題。

肥満の発症には、遺伝的素因、ホルモン変化、生活習慣要因、社会・文化的要因が関与している。生活習慣要因では、SSBの過剰摂取と肥満との関連が示されている。SSBは添加糖の主要供給源で、グリセミックインデックスが高く、血糖値上昇やホルモン刺激を通じて体重増加を促進する可能性がある。また、飲料であるため満腹感を得にくく、過剰なエネルギー摂取を助長する。しかしSSB摂取と体組成、握力、栄養素摂取量との関連は十分解明されていない。世界各国でBMIとSSB摂取の関連研究が行われているが、日本人集団での肥満発症率に関するエビデンスは乏しい。

一方、牛乳は栄養価が高いものの、脂肪分が体重増加に関与する可能性が指摘されている。しかし日本では、20代・30代の飲料摂取量データが乏しく、飲料摂取と健康指標との関連も不明確。この年齢層は生活様式が変化する時期で、食行動が将来的な健康リスクに影響する可能性がある。

これらを背景に本研究は、飲料摂取質問票(BEVQ-15)を用いて、20〜39歳の日本人を対象に、各種飲料の摂取量と、総エネルギー摂取量、栄養素摂取量、身体計測指標、握力との関連を検討することを目的とした。

研究手法・研究成果:牛乳の適度な摂取はBMIの増加を伴わずにSMIの上昇と関連

本研究では、Brief Beverage Intake Questionnaire(BEVQ-15)という飲料摂取質問票を用いて、日本人成人(20~39歳)を対象に、飲料由来のエネルギー摂取量、体組成、栄養素摂取量の関連を包括的に検討した。SSBを飲む人と飲まない人が大きく分かれるため、最小二乗法回帰を用いて解析した。感度分析には分位点回帰および一般化加法モデルを使用し、非線形(曲線)の可能性を検討した。

その結果、総飲料由来エネルギー摂取量は、SSB由来エネルギー摂取量と強い相関が認められ、飲料由来エネルギーの多くがSSBに由来していることが示唆された。年齢および性別で調整したモデルでは、SSB由来エネルギー摂取量は、総エネルギー摂取量および炭水化物摂取量と正の関連が認められた。牛乳飲料の摂取も、総エネルギー摂取量および炭水化物、脂質、たんぱく質の摂取量と正の関連があったが、総エネルギー摂取量で追加調整した後には消失した。

これらの結果は、飲料由来のカロリー含有量が全体的な食事由来エネルギー摂取量を大きく反映していることを示している。

対照的に、飲料由来のエネルギーとBMIおよびSMIとの関連は、総エネルギー摂取量によるさらなる調整後も持続しており、飲料由来カロリーが体組成に寄与している可能性を示唆している。一般化加法モデルでは、総飲料由来エネルギーおよびSSB由来エネルギーとBMIおよびSMIとの関連が直線的なパターンを示した一方で、牛乳はより多く摂取するほどSMIの上昇が頭打ちとなる非線形的なパターンを示した。

これらの結果を総合すると、特に20代や30代の若年成人においては、砂糖を添加した飲料の多量摂取が高い体重と関連している可能性があり、一方で牛乳飲料の適度な摂取は、BMIや体脂肪率の増加を伴わずにSMIの向上と関連している可能性が示唆された。

図1

(出典:藤田医科大学)

今後の展開:関連のメカニズムの解明と、より強固なエビデンス確立へ

今後の研究では、砂糖入り飲料が、総エネルギー摂取量が多いという点だけでなく、どのような仕組みでBMI増に関わっているのか、そのメカニズムを明らかにする必要がある。例えば、血糖値や食欲関連ホルモンのレベル、食事時間や食べる速さなどの食行動について、摂取者と非摂取者の間で比較検証することが考えられる。

さらに、日本人集団におけるエビデンスは依然として限られているため、経済的・社会的背景要因を組み込んだ大規模な疫学研究により、本研究の所見をさらに検証・拡充することが求められる。

プレスリリース

砂糖入り飲料はBMI上昇、ミルクは筋肉量と関連(藤田医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Exploratory Study of Soft Drink Intake, Diet, and Body Size Among Employees at a Japanese University Aged 20–39」。〔Nutrients. 2026 Jan 16;18(2):292〕 原文はこちら(MDPI)

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酪農家・乳業メーカー・牛乳販売店の関係者で構成される一般社団法人JミルクとSNDJ共催による牛乳・乳製品を学ぶ無料セミナー「Online Milk Academy(ミルアカ)!」。4回シリーズの第2回は「チーズ」と「ミルクレシピ」をテーマに1月27日(火)19時~のLIVE配信とアーカイブ配信にてお届けいたします。皆さまのご参加をお待ちしております!

第2回は「チーズ」と「ミルクレシピ」にフォーカスします!

チーズは、たんぱく質やカルシウムを効率よく摂取でき、捕食・間食・料理素材としても活用しやすい食品です。今回はチーズの専門家を迎え、チーズの基礎、目的やシーンに応じた選び方とともに、スポーツ栄養においてチーズがなぜ有用なのかについても、少し視点を変えた切り口から話題提供を行います。

さらに牛乳・乳製品は栄養価が高く、日常の食事にも取り入れやすい一方で、「実際の栄養指導や食事提案の場面で、どのように活用すればよいのか」、「牛乳が苦手な人にもおすすめできるレシピを知りたい」、「使えるレシピの引き出しをもっと増やしたい」と感じている栄養士・専門職の方も少なくありません。そこで今回は、簡単に実践できるレシピを中心に、鈴木志保子理事長が実食しながら、「こんなレシピいいよね!」と思える牛乳・乳製品の使い方を、参加者の皆さまと一緒に考えていきます。とても貴重な機会となりますので、ぜひご参加いただければ幸いです。

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「ミルアカ」セミナーシリーズご案内

■第1回:乳牛と牛乳  LIVE配信/2025年12月18日(木)19時~ 見逃し配信/2025年12月26日(金)~2026年1月9日(金)

■第2回:知って楽しいチーズの話と、みんなのミルクレシピ

 LIVE配信/ 2026年1月27日(火)19時~ 見逃し配信/2026年2月3日(火)~16日(月)

■第3回:スポーツ栄養での牛乳・乳製品活用の意義

 LIVE配信/ 2026年2月24日(火)19時~ 見逃し配信//2026年3月3日(火)~16日(月)

■番外編:世界と日本の酪農史と乳食文化

 オンデマンド配信のみ/2026年3月2日(月)~31日(火)

2025年度 国産牛乳乳製品の需要拡大等事業 独立行政法人農畜産業振興機構 後援

司会進行/ナビゲーター

一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長 鈴木 志保子

セミナーで投稿作品を紹介します!SNS企画「#私のホットミルク」

消費が極端に落ち込む冬の牛乳・乳製品をみんなで飲んで食べて支えよう!皆さんも、牛乳や乳製品を使った温かい飲み物、 料理、デザートを、Xやインスタに「#私のホットミルク」「 #SNDJ_ミルアカ」2つのタグをつけて投稿してください!投稿作品を鈴木理事長が第2回ミルアカで紹介します!

実施期間:2025年12月15日(月) ~ 2026年 1月31日(土) 参加方法: ①特製レシピやお気に入りの一杯の写真を撮影

②ハッシュタグ「#私のホットミルク」「#SNDJ_ミルアカ」 を付けて、SNS(X または Instagram)に投稿!

詳細はこちら

視聴者プレゼント!

本セミナーへの参加者で視聴者アンケートに回答された方全員に、各回テーマに関連する写真やイラスト、図版などの素材データ集をプレゼントいたします。教育関係者や指導者が使いやすいものをJミルクでセレクト。授業や講演資料などに自由にお使いいただけます。(ただし、営利目的での使用はできません)

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ミルアカ第2回の開催概要

セミナー名
【Jミルク×SNDJ】 みんなで見る学ぶ牛乳・乳製品のはなし 「Online Milk Academy(ミルアカ)!」

第2回:知って楽しいチーズの話とみんなのミルクレシピ

日程
ライブ配信(Zoom):2026年1月27日(火)19:00~20:40(100分) 見逃し配信(YouTube):2026年2月3日(火)~2月16日(月)
対象者
SNDJメンバー、および、SNDJクラブ会員 ※当セミナーへの参加には、SNDJメンバー、または、SNDJクラブへの登録が必要です。まだ登録されていない方は、下記リンク先からご登録ください。 SNDJメンバー(公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士)の登録はこちら SNDJクラブ(どなたでも登録可能)の登録はこちら
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※ライブ配信前日にセミナールームのご案内メールをお送りします。
プログラム
    司会進行(ナビゲーター) 一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長 鈴木志保子
  • 講演「チーズを知ろう! ~スポーツ栄養にチーズが有用な理由を反芻動物の生態から紐解く~」 NPO法人チーズプロフェッショナル協会 幹事 三原 茂 氏
  • 実食&トーク「先生、こんなミルクレシピはどうですか?!」 ― 牛乳が苦手な人にも取り入れやすいレシピや、スキムミルク・乳和食を題材に、 たんぱく質を手軽に増やす工夫や、現場で使いやすい提案のヒントを深めていきます。  一般社団法人 Jミルク 学術調査グループ 専任部長 山口 真 氏  一般社団法人 Jミルク 学術調査グループ 主任 小川哲弘 氏  一般社団法人Jミルク コミュニケーショングループ主任 西沢彩乃 氏

     三原 氏、鈴木理事長

登録締切
LIVE配信/1月27日(木)17時まで。見逃し配信は配信最終日まで受付。
共催
一般社団法人Jミルク 一般社団法人日本スポーツ栄養協会

出演者プロフィール

  • 三原 茂(みはら しげる) 氏 NPO法人チーズプロフェッショナル協会 幹事

    東京都出身。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業。乳業メーカーと輸入チーズ商社で品質管理業務に携わった経験から、乳用家畜や熟成に関わる微生物など生物学的側面からチーズの魅力を伝えている。シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ(フランスチーズ鑑評騎士)。
  • 山口 真(やまぐち まこと) 氏 一般社団法人Jミルク学術調査グループ 専任部長 博士(生物資源科学)
    牛乳・乳製品の栄養健康機能に関する研究情報の収集・発信、学術研究の支援・調整などに従事。夜の楽しみはカスタムヨーグルト作り。フルーツやトッピングを吟味する時間が至福です。
  • 小川 哲弘(おがわ あきひろ) 氏 一般社団法人Jミルク学術調査グループ 主任

    乳の利用と酪農乳業の発展に関する社会的・文化的な研究情報(経済・マーケティング・食文化・歴史など)の収集・発信、学術研究の支援・調整などに従事。子育て奮闘中で、子どもにも牛乳好きになってもらいたくて、家族で毎日牛乳を飲んでいます。
  • 西沢 彩乃(にしざわ あやの)氏 一般社団法人Jミルクコミュニケーショングループ 主任

    乳和食の普及啓発、公式SNS(X・Instagram)、SNS年間企画(「#私のホットミルク」など)に従事。牛乳が大好きで、カフェラテを作るときは 牛乳9:コーヒー1 で楽しんでいます。
  • 鈴木 志保子(すずき しほこ) 一般社団法人日本スポーツ栄養協会-SNDJ- 理事長 東京都出身。管理栄養士。公認スポーツ栄養士。公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 研究科長。

    実践女子大学卒業後、同大学院修了。東海大学大学院医学研究科を修了し、博士(医学)を取得。2000年より国立鹿屋体育大学体育学部助教授、2003年より神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授、2009年4月より教授を経て、2021年4月より栄養学科長、2023年4月より現職。

関連情報

一般社団法人Jミルク 牛乳でスマイルプロジェクト

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当サイトの「アンチ・ドーピング情報コーナー」では、サプリメントの活用と選び方、選手がドーピングから身を守るための防衛術、アンチ・ドーピングの基礎知識、最新の認証製品リストなど、現場で役立つ最新情報をお届けしています。

このたび、Chapter3「INFORMED CHOICE」「INFORMED SPORT」の製品リストに新しいアイテムが加わり情報を更新しましたのでお知らせします。

INFORMED-SPORT 追加製品

INFORMED-SPORTの製品リスト

INFORMED-CHOICE 追加製品

  • オレは摂取すジェルエネルギー(グレープ・はちみつレモン・ピーチ)/ダイトー水産(株)
  • おなかにやさしいホエイプロテイン(完熟バナナ・濃厚リッチチョコ)/日本新薬(株)

INFORMED CHOICE(LGC)の製品リスト

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マラソンのような長時間の高強度運動の後にはしばしば睡眠の質が低下するが、プロバイオティクスによってそれを抑制できる可能性を示すデータが報告された。プラセボ対照RCTで自己申告による睡眠の質に有意差が認められたという。著者らは、運動負荷によって生じる腸管バリア機能の低下に伴う炎症や神経内分泌経路の活性化を、プロバイオティクスが抑制したのではないかと考察している。ブラジルにおける研究。

トレーニングを日課としているマラソンランナー対象のRCTによる検討

長時間の高強度運動では、筋肉への血流が増加するために腸管への血流は相対的に低下し、それに熱ストレスが加わることなどで腸管のバリア機能が低下して、腸内細菌の細胞成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide;LPS)が血中に侵入することによって、炎症や神経内分泌経路の活性化が生じることが示唆されている。それらの変化が、睡眠の質に影響を及ぼす可能性があるとの指摘もある。実際、マラソンを走り終えた後に、睡眠の質が低下しやすいことが報告されている。

近年、腸内細菌叢の組成と全身の身体的・精神的健康との間にさまざまな関連のあることが明らかにされてきており、プロバイオティクス等により腸内細菌叢へ働きかけることを、疾患の治療や予防に生かす試みがなされ、有効とする報告もある。ただし、運動後の睡眠に対する有用性のエビデンスはこれまで報告されていない。

これらを背景として、今回紹介する論文の研究では、日常的にマラソンのトレーニングを行っているランナーに対して、プラセボ摂取を対照とする無作為化二重盲検試験(randomized controlled trial;RCT)を実施した。

介入方法について

研究参加者は、マラソン参加の経験があり週に5日以上トレーニングを行っていて、精神的・身体的な疾患がなく、習慣的飲酒者および喫煙者でない男性ランナーを適格条件として募集された。事前の統計学的検討から、この検討に必要なサンプルサイズは各群10人と計算され、脱落等を予測し各群14人を目標として募集した。

無作為にプロバイオティクス群とプラセボ群の2群に分け、マラソン大会の30日前から介入を開始した。プロバイオティクス群には乳酸菌とビフィズス菌(Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium lactisをいずれも1×1010コロニー形成単位〈colony forming unit;CFU〉)とマルトデキストリン(5g)を含む粉末、プラセボ群にマルトデキストリン(5g)を含む粉末を支給し、30日間にわたり朝夕の2回、50mLの水に溶解して摂取してもらった。支給した粉末は、色や形、匂い、量、味などでは区別できない状態とし、対象者の割り付けは介入の結果を判定する研究者にも知らせない二重盲検法をとった。

30日間の介入期間中、トレーニングとして両群ともに週あたり50kmの走行を課した。

評価項目について

睡眠の質をピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh sleep quality index;PSQI)、日中の眠気をエプワース眠気尺度(Epworth sleepiness Scale;ESS)、および炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)、リポ多糖(lipopolysaccharide;LPS)で評価した。また、食物摂取頻度調査票(ELSA-BRAZIL food frequency questionnaire)、および3日間の食事記録により、栄養素等の摂取状況を把握した。

採血検査は、介入前、介入後(介入開始から30日後でマラソン参加の前日)、マラソン参加の60分後、同24時間後の4時点で行い、睡眠関連指標の評価と食事関連の調査は、介入前とマラソン24時間後に行った。

プロバイオティクス介入でマラソン参加による睡眠への悪影響が抑制される

介入中の消化器症状発現、マラソン当日の不参加、途中棄権などにより、解析対象は27人(プロバイオティクス群14人、プラセボ群13人)となった。この両群間に、年齢、身長、体重、日常の摂取エネルギー・栄養素量、マラソン走行中の補給量は、いずれも有意差がなかった。また、マラソン走行中の消化器症状は全体で61.9%から報告され、その内訳はプロバイオティクス群が23.8%、プラセボ群が38.1%であり、有意差がなかった。

プロバイオティクス群はマラソンによる睡眠への影響が軽微で、プラセボ群と有意差

睡眠関連指標についても、介入前には両群間に有意差がなかった。しかし、マラソン終了24時間後には、複数の指標に有意差が認められた。

例えば、プラセボ群では、日中の眠気と入眠潜時が有意に増大し、睡眠スコアの合計点が有意に上昇(睡眠の質の低下を意味する)しており、総睡眠時間と睡眠効率は有意に減少していた。それに対してプロバイオティクス群では、介入前からの有意な変化が少なく、プラセボ群との比較においても、日中の眠気、入眠潜時、睡眠スコアの合計点、総睡眠時間、睡眠効率について有意差があり、いずれもプロバイオティクス群の睡眠の質が良好であることが示された。

マラソン参加後のLPSはプロバイオティクス群のみ、介入前より有意に低下

炎症性サイトカインについては評価した3項目すべて、両群でほぼ同じように変化し、群間の有意差はなかった。リポ多糖(LPS)も同様の変化を示したが、プロバイオティクス群はマラソン参加後と24時間後の値がより低値であり、介入前の値との差が有意であった。

腸内細菌叢に働きかけることで持久系アスリートの睡眠を改善できる可能性

これらの結果の解釈として著者らは、食事調査の結果が両群に有意差がなく、介入前の睡眠の質にも有意差がなかったにもかかわらず、マラソン参加後の睡眠の質はプロバイオティクス群で良好だったことから、「睡眠の質に差が生じた理由は、プロバイオティクスによる介入によるものである可能性が高い」と記している。その一方、炎症性サイトカインは両群ともに同様に変化していた。この点については、炎症性サイトカインの日内変動が観察されたのではないかと推測している。

研究の限界点として、睡眠の質を主観的な評価手法のみで評価し、アクティグラフィーなどの客観的手法で把握していないこと、糞便検体を用いた解析を行っていないことなどを挙げたうえで、「プロバイオティクスを用いた腸内細菌叢の調整により、持久系アスリートの睡眠の質を改善できる可能性がある。この作用は、おそらくLPSの減少と炎症経路の抑制によるものではないか」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Probiotic Supplementation Can Alter Inflammation Parameters and Self-Reported Sleep After a Marathon: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study」。〔Nutrients. 2025 Nov 29;17(23):3762〕 原文はこちら(MDPI)

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日本人摂食症(摂食障害)患者の2割に高マグネシウム血症が見られることや、若年、BMI低値、腎機能低下が高マグネシウム血症のリスクと関連していることが報告された。名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学講座・精神医学講座および池下やすらぎクリニック(名古屋市)の上松万里子氏、国立病院機構東尾張病院の田中聡氏らの研究の結果であり、「Eating and weight disorders」に論文が掲載された。摂食症患者は低体重であることが多いため、腎機能の評価には一般的な血清クレアチニンに基づく推算ではなく、体表面積を加味した計算式、または古典的なCockcroft-Gault式のほうが適していることも示唆されている。

摂食症患者へのマグネシウム製剤投与の安全性を検証する必要性

摂食症は若年女性での罹患率が高く、極端な食事制限、自己誘発嘔吐、過剰な身体活動などによって低栄養を来し、種々の身体的機能低下を起こすことがある。腎機能障害も摂食症患者に多い併発疾患の一つであり、これには摂取量が少ないことによる脱水の関与や、嘔吐または利尿薬・緩下薬の不適切な使用により生じる低カリウム血症の影響が考えられる。

また、摂食症は便秘を伴いやすい。便秘に対して国内では酸化マグネシウム製剤(magnesium oxide;MgO)が広く用いられており、摂食症患者にも頻用されている。MgOは安全性の高い薬剤ではあるものの、長期間の連用によって高マグネシウム血症(高Mg血症)を来すことがあり、とくに高齢者などに対する処方に関しては、厚生労働省から注意喚起が行われている。摂食症に伴う便秘も慢性的な経過をとりやすいため、MgOが連用されて高齢患者と同様に高Mg血症のリスクが高まる可能性があるが、その実態は明らかにされていない。

さらに、摂食症患者は筋肉量の少ない低体重者が多い。そのため、腎機能の評価法として一般的に用いられている血清クレアチニン(Cr)値に基づく推算糸球体濾過量(eGFRcr)は、Cr値が筋肉量の多寡の影響を受けることから偽高値となりやすい。よって、腎機能障害が生じていても、eGFRcrではその検出が遅れる可能性が考えられるが、この点も十分検討されていない。

以上を背景として上松氏らは、摂食症患者における高Mg血症の頻度、MgO処方との関連、高Mg血症のリスク因子、および摂食症患者のeGFRcrの信頼性を評価するとともに、より信頼性の高いeGFR推算方法の探索を行った。

名大病院の摂食症患者データを後方視的に解析

この研究は、2018~22年に名古屋大学医学部附属病院で入院・外来治療を受けた、女性摂食症患者の医療記録を用いた後方視的コホート研究として行われた。摂食症の診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断分類第5版改訂版(DSM-5-TR)に基づいて行い、DSM-5-TRが刊行される2022年以前の症例については再評価した。透析導入患者とデータ欠落のある患者を除外し、194人(延べ3,828回の医療記録)を解析対象とした。

高Mg血症は同院の基準値(1.8~2.4mg/dL)に基づき2.5mg/dL以上と定義し、腎機能障害はeGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義した。また、DSM-5-TRに基づきBMI 15未満を最重度の低体重と分類し、サブグループ解析を行った。

摂食症患者の2割強に高Mg血症を認め、Mg製剤処方量はリスクに関連していない

患者ごとに入手可能な最初の記録から追跡を開始し、最後の記録もしくは解析対象期間終了まで追跡。その結果、194人のうち70人(36.1%)に酸化マグネシウム製剤(MgO)が処方され、高Mg血症は42人(21.6%)に認められた。高Mg血症を呈していた患者のうち20人(47.6%)に、MgOが処方されていた。

赤池情報量基準に基づく最適モデル(ランダム切片・ランダム傾きモデル)での検討により、高Mg血症に関連のある因子として、若年(β=-0.0044〈95%CI;-0.0067~-0.0020〉)、BMI低値(β=-0.014〈-0.021~-0.0063〉)、eGFRcr低値(β=-0.0038〈-0.0047~-0.0027〉)という3項目が特定された。MgOの処方は、その用量(750mg/日未満または以上)にかかわらず関連が非有意だった。

BMI 15未満のサブグループ(153人、78.9%)での解析結果も同様に、若年、BMI低値、eGFRcr低値の3項目が高Mg血症に関連し、MgOの処方量は関連がなかった。

摂食症患者において、BMIが低いほどeGFRcrは高い

eGFRcr 60未満/以上、BMI 15未満/以上で血清Mgを比較すると、いずれも低値群において血清Mgが高いという有意差が観察された。

次に、BMIとeGFRcrとの関連を検討すると、両者の間に弱いながらも有意な負の相関が認められた(r=-0.095、p<0.001)。つまり、より痩せている摂食症患者では、腎機能が高く見積もられることがわかった。<>

前記のように、本研究から腎機能低下が摂食症患者の高Mg血症のリスク因子の一つである可能性が示唆された。よって臨床では腎機能のより正確な評価が求められるが、それにもかかわらず摂食症患者では、eGFRcrは腎機能を高く見積もることも示唆された。

そこで、eGFRcrを体表面積で補正した場合、古くから腎機能の推算に使われていて計算式に体重が含まれているCockcroft-Gault式を用いた場合、および、クレアチニンを含まない5項目の変数(アルブミンやBUNなど)を用いた場合という3種類の推算方法について、信頼性の評価を行った。

その結果、腎機能障害と判定される割合は、eGFRcrでは17.5%であるのに対して、体表面積で補正した場合は42.9%、およびCockcroft-Gault式では38.2%と高く、5項目の変数での推算では17.7%であった。つまり、eGFRcrよりも体表面積で補正した場合やCockcroft-Gault式のほうが、腎機能障害の検出力が高い可能性が考えられた。

続いて、血清Mg値を横軸(2.5mg/dLで左右に分割)、各推算式で求められた腎機能を縦軸(カットオフ値で上下に分割)にとり、4象限に全ての検査データをプロットして、分布を比較するという検討を行った。すると、臨床において最も慎重な対応が必要とされる第4象限(腎機能障害かつ高Mg血症を意味する右下の象限)に該当する割合は、eGFRcrでは4.1%であるのに対して、体表面積で補正した場合は5.2%、Cockcroft-Gault式では5.1%、5項目の変数での推算では4.3%であった。

血清Mg値や腎機能のモニタリングは必要だが、MgO処方を控える必要性は低い

著者らは本研究の限界点として、後方視的解析であること、対象が女性患者のみであること、腎機能をすべて代理マーカーにより評価しており、イヌリンクリアランスを測定していないことなどを挙げている。そのうえで、示された結果を総括し、「(1)国内の摂食症患者における高Mg血症の頻度は20%を超えていて、(2)若年、BMI低値、腎機能低下という三つの因子が高Mg血症と有意に関連している――という二つの重要な知見を得られた」と結論づけている。

また、高Mg血症の認められた患者群においても重篤な所見は記録されておらず、MgO処方と高Mg血症との関連が非有意であったことから、「慎重なモニタリングは必要ではあるものの、摂食症患者に対するMgO処方を控える必要性は高くないのではないか」との考察も付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Risk of hypermagnesemia in patients with eating disorders taking magnesium oxide preparations: a retrospective study」。〔Eat Weight Disord. 2025 Nov 19;30(1):88〕 原文はこちら(Springer Nature)

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0.001)。つまり、より痩せている摂食症患者では、腎機能が高く見積もられることがわかった。<>

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体重を身長の三乗で除した値であるTMIが、活動的な若年成人集団において、BMIよりも体組成の評価などの点で優れていることを示唆する研究結果が報告された。著者らは、エビデンスの蓄積が必要ではあるが将来的にはBMIに代わる指標になる潜在的な可能性があるとしている。

BMIとTMI

体重を身長の二乗で除した値であるBMI(body mass index)は、1800年代中盤に個人の体型の評価指標として提案されて以降、疫学や臨床医学、栄養学などに広く利用され、膨大なエビデンスが蓄積されてきている。スポーツ領域でも、アスリートのパフォーマンスやトレーニング適応、長期的な健康を評価・予測する重要な指標として、BMIが長年使われてきている。

しかし、BMIは体脂肪量と除脂肪量(筋量など)を区別せずに評価するという課題があり、この点はとくに、活動的な生活を送り筋肉量の多い対象で、数値の解釈が困難になる場面が多い。これに対して近年、BMIをもう一回身長で割って(つまり体重を身長の三乗で除して)算出するTMI(triponderal mass index)が、臨床的意義が高いだけでなく体組成の評価という点でも、より優れた指標である可能性が報告されてきている。ただし、BMIに比べてエビデンスは極めて少なく、わずかなエビデンスも疾患有病者やハイリスク集団で検討されたものであり、活動的な個人での有用性に関するデータはほとんどない。

今回取り上げる論文の研究は上記を背景として実施された。トルコの健康科学大学の学生を対象とする横断的観察研究であり、体組成や血液検査との相関という点において、BMIとTMIのいずれが優れているかを検討している。

トルコの大学生約60人で、BMIおよびTMIと体組成等の関連を検討

解析対象全体のBMIは平均22.78、TMIは13.286、体脂肪率は18.45%

研究参加の適格条件は、週に3日以上身体活動が行っていて、WHO等のガイドラインの推奨(中強度運動を週に150~300分または高強度運動を同75~150分)を満たし、慢性疾患のない非喫煙者とされていた。除外基準は、急性疾患罹患中、および女子学生については月経開始から10日以内である場合も除外された。なお、体組成の測定や血液採取は10時間の絶食(カフェイン摂取も禁止)後の午前中に行った。体組成は生体電気インピーダンス法で測定した。

解析対象は59人(22.63±2.29歳、男子37人、女子22人)であり、BMIは22.78±2.91、TMIは13.28±1.76で、体脂肪率は18.45±3.81%だった。

BMIおよびTMIと体脂肪率や血液検査値との関連の比較

BMIは、体脂肪率(r=0.38、p=0.003)、ヘモグロビン(Hb〈r=0.32、p=0.013〉)、ヘマトクリット(Hct〈r=0.26、p=0.046〉)と有意な正の相関、好中球対リンパ球比(NLR)〈rs=-0.27、p=0.041〉)、血小板リンパ球比(PLR〈r=-0.30、p=0.022〉)と有意な負の相関が認められた。

TMIは、BMIに比べて体脂肪率とより強く正相関し(r=0.50、p<0.001)、nlr(rs=-0.27、p=0.039) と有意な負の相関がみられた。<>

白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、好中球(NEUT)に関しては、BMIおよびTMIともに有意な関連はみられなかった。

BMIよりTMIは体脂肪率との相関が強い

次に、BMIとTMIの体脂肪率との関連の強さを比較するため、体脂肪率を従属変数とし、BMI、TMI、および上述の4項目の血液検査値のすべてを独立変数とする重回帰分析を行った。

その結果、体脂肪率との関連が統計的に有意であったのは、ヘマトクリット(Hct)のみであった(β=-0.34、p=0.021)。TMIは統計的有意には達しなかったものの、正の傾向が示唆された(β=0.25、p=0.073)。一方、BMIでは関連は認められなかった(β=-0.006、p=0.716)。

スポーツ領域でのTMIの可能性

著者らは本研究で明らかになったポイントとして、以下の3点の重要性を強調している。すなわち、(1)TMIはBMIよりも生体インピーダンス法による体脂肪率と強く相関し、(2)BMIとHbおよびHctは正の相関があり、BMIとTMIはNLRとわずかな負の相関があり、(3)Hctが低いほど体脂肪率が高いという独立した関連が認められた。なお、(3)のHctと体脂肪率との関連は、血漿量や水分摂取量が部分的に影響を及ぼしている可能性があることから、慎重な解釈を要すると述べている。

また、スポーツ領域や公衆衛生におけるTMIの利用について、TMIはBMIよりも有益な可能性があるとしている。具体的には、日常的な健康診断やシーズン前の評価などにおいて、(1)BMIが基準範囲内であるにもかかわらず潜在的に肥満度が高い個人の特定、(2)トレーニングや生活習慣介入による変化のモニタリングに役立つ――と考えられるという。

一方、留意すべきこととして、アスリート集団での基準範囲などが検証されておらず、現状ではTMIのみに依存した評価をすべきではないとも付け加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「From BMI to TMI: revisiting adiposity and fitness assessment in young active adults through a historical and contemporary lens」。〔Front Public Health. 2025 Nov 14:13:1700684〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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スポーツ栄養Web編集部

0.001)、nlr(rs=-0.27、p=0.039) と有意な負の相関がみられた。<>

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バイアスロン選手の栄養戦略をナラティブレビューとして総括した論文が発表された。雪上での持久力とともに、射撃というテクニカルな能力も求められる特異性に対応するための最適な栄養素摂取方法を、これまでの研究報告から探った内容。一部を紹介する。

バイアスロンの特異性を考慮して文献を検索

バイアスロンは1960年の冬季オリンピックで正式種目となった、断続的な持久系スポーツ。クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技で、高い有酸素能力と巧緻な射撃能力が求められる。勝敗は、スキーの速度、射撃に要する時間、射撃の精度などの複数の因子によって総合的に決まる。

エネルギー需要が極めて高く、大会では複数のレース間の短期間(一般的に24時間未満のことが多い)での回復を要し、かつ精密な射撃のための微細な運動を阻害しない栄養戦略が必要とされる。それにもかかわらず、これまでバイアスロンに特化した栄養に関するエビデンスはほとんどなく、現状では他の持久系競技の研究での知見を援用している。しかし、寒冷で高地で行われるという一点のみでも、他の競技のエビデンスをそのまま外挿可能とは考えにくく、バイアスロンに特異的な栄養戦略の探索が必要とされている。

以上を背景として、この論文の著者らは、ナラティブレビューにより知見の総括を試みた。著者らは、バイアスロンに特化した研究は非常に少ないため、システマティックレビューの実施はできないことから、ナラティブレビューという手法を採用したと述べている。

PubMedとGoogle Scholarを用いて、2024年12月までに発表された研究論文を検索した。検索キーワードとして、バイアスロン、栄養、サプリメント、生理学などを用いた。バイアスロンの研究はわずかであるため、クロスカントリースキーなどの関連性のある競技での研究も採用した。査読システムのないジャーナルの論文、栄養と関連のない症例報告、持久力またはテクニカルパフォーマンスと関連のない研究報告は除外した。

トレーニングのための栄養

エネルギー要件

バイアスロン選手のエネルギー消費量を評価した研究はない。クロスカントリースキーでの研究によると、1日に2回のトレーニングセッションを含むことが多い準備期間中のエネルギー消費量は4,800~6,000kcal/日であり、55~75kcal/kg/日の摂取が推奨されている。ただし、競技レベルで異なり、またジュニア期もこれが当てはまらない可能性がある。

クロスカントリースキーとバイアスロンはどちらもスキーで走行するが、バイアスロンは背中にライフルを背負うため、身体的負荷が異なると考えられる。ライフル(約4kgの荷重)を担ぐと、平均で約7%、エネルギーコストが上昇することが示唆されている。

エネルギー産生栄養素

炭水化物

バイアスロン選手はトレーニングプログラムに応じて6~12g/kg/日の炭水化物を摂取する必要がある。典型的な場合、1日に2回のトレーニングセッションを行い、セッション間のインターバルは4~6時間であり、セッション直後の回復を優先することが推奨される。よって運動直後に1.2g/kgの炭水化物を摂取し、摂取量が不十分な場合は0.3g/kgのタンパク質を摂取すると、グリコーゲン再合成速度が向上することが示されている。

タンパク質

1日2回のトレーニングを行うバイアスロン選手は、タンパク質摂取のタイミングに関する現行のガイドラインを遵守することが推奨される。つまり、トレーニングや競技の直後に、0.3g/kg(高品質タンパク質約20~25g)を摂取する必要がある。これにより、体タンパク質合成反応が最適化される。1日の推奨摂取量は約1.6g/kgであり、これを達成するには3~4時間ごとに約0.3g/kgの高品質タンパク質を含む食事を摂取することが推奨される。ただしこれは、他の持久力系アスリート全般のデータから外挿されたものであることに留意が必要。

微量栄養素

バイアスロン選手は通常、摂取エネルギー量が多いため、微量栄養素の欠乏は一般的にみられない。ただし、競技特性から日光への曝露が不足しがちであり、ビタミンDや鉄の不足に注意が求められる。なお、持久系アスリートに鉄とビタミンDの不足が多いことはよく知られているものの、バイアスロン選手でのデータはなく、エビデンスに基づくのではなく経験に基づく対応が中心となる。

寒冷と高地への対応

バイアスロンは冬季の寒冷かつ高地の屋外で行われる。体温を維持するために、エネルギー需要が高くなり、かつ高地ではエネルギー基質の変化が起こり、糖への依存が高くなる。そのためエネルギーと炭水化物の適切な摂取がより重要となる。

また、高地では赤血球の鉄需要が増加するため、鉄不足のリスクが高まる。そのため高地への移動の3~6週間前に、血液スクリーニング検査を実施する必要があり、高地滞在中は200mgの鉄剤の経口投与も推奨される。ただし鉄剤投与は、スポーツドクターの判断を要する。

論文では上記のほかに、体格・体組成を維持・向上するための栄養戦略、競技期間中の栄養戦略、サプリメント戦略などについて、他の競技でのエビデンスを援用した推奨が述べられている。結論は、「バイアスロンの栄養戦略に関する研究は不足しており、バイアスロン特有のデータが得られるまでは、一般的な持久系競技での栄養の原則を基に、競技特異的な要件を加味して慎重に調整する必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Strategies for Olympic Biathletes: A Practical Review」。〔Nutrients. 2025 Oct 28;17(21):3385〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部


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酪農家・乳業メーカー・牛乳販売店の関係者で構成される一般社団法人JミルクとSNDJ共催による牛乳・乳製品を学ぶ無料セミナー「Online Milk Academy(ミルアカ)!」。4回シリーズの第2回は「チーズ」と「ミルクレシピ」をテーマに1月27日(火)19時~のLIVE配信とアーカイブ配信にてお届けいたします。皆さまのご参加をお待ちしております!

第2回は「チーズ」と「ミルクレシピ」にフォーカスします!

チーズは、たんぱく質やカルシウムを効率よく摂取でき、捕食・間食・料理素材としても活用しやすい食品です。今回はチーズの専門家を迎え、チーズの基礎、目的やシーンに応じた選び方とともに、スポーツ栄養においてチーズがなぜ有用なのかについても、少し視点を変えた切り口から話題提供を行います。

さらに牛乳・乳製品は栄養価が高く、日常の食事にも取り入れやすい一方で、「実際の栄養指導や食事提案の場面で、どのように活用すればよいのか」、「牛乳が苦手な人にもおすすめできるレシピを知りたい」、「使えるレシピの引き出しをもっと増やしたい」と感じている栄養士・専門職の方も少なくありません。そこで今回は、簡単に実践できるレシピを中心に、鈴木志保子理事長が実食しながら、「こんなレシピいいよね!」と思える牛乳・乳製品の使い方を、参加者の皆さまと一緒に考えていきます。とても貴重な機会となりますので、ぜひご参加いただければ幸いです。

参加申込はこちら

「ミルアカ」セミナーシリーズご案内

■第1回:乳牛と牛乳  LIVE配信/2025年12月18日(木)19時~ 見逃し配信/2025年12月26日(金)~2026年1月9日(金)

■第2回:知って楽しいチーズの話と、みんなのミルクレシピ

 LIVE配信/ 2026年1月27日(火)19時~ 見逃し配信/2026年2月3日(火)~16日(月)

■第3回:スポーツ栄養での牛乳・乳製品活用の意義

 LIVE配信/ 2026年2月24日(火)19時~ 見逃し配信//2026年3月3日(火)~16日(月)

■番外編:世界と日本の酪農史と乳食文化

 オンデマンド配信のみ/2026年3月2日(月)~31日(火)

2025年度 国産牛乳乳製品の需要拡大等事業 独立行政法人農畜産業振興機構 後援

司会進行/ナビゲーター

一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長 鈴木 志保子

セミナーで投稿作品を紹介します!SNS企画「#私のホットミルク」

消費が極端に落ち込む冬の牛乳・乳製品をみんなで飲んで食べて支えよう!皆さんも、牛乳や乳製品を使った温かい飲み物、 料理、デザートを、Xやインスタに「#私のホットミルク」「 #SNDJ_ミルアカ」2つのタグをつけて投稿してください!投稿作品を鈴木理事長が第2回ミルアカで紹介します!

実施期間:2025年12月15日(月) ~ 2026年 1月31日(土) 参加方法: ①特製レシピやお気に入りの一杯の写真を撮影

②ハッシュタグ「#私のホットミルク」「#SNDJ_ミルアカ」 を付けて、SNS(X または Instagram)に投稿!

詳細はこちら

視聴者プレゼント!

本セミナーへの参加者で視聴者アンケートに回答された方全員に、各回テーマに関連する写真やイラスト、図版などの素材データ集をプレゼントいたします。教育関係者や指導者が使いやすいものをJミルクでセレクト。授業や講演資料などに自由にお使いいただけます。(ただし、営利目的での使用はできません)

参加申込はこちら

ミルアカ第2回の開催概要

セミナー名
【Jミルク×SNDJ】 みんなで見る学ぶ牛乳・乳製品のはなし 「Online Milk Academy(ミルアカ)!」

第2回:知って楽しいチーズの話とみんなのミルクレシピ

日程
ライブ配信(Zoom):2026年1月27日(火)19:00~20:40(100分) 見逃し配信(YouTube):2026年2月3日(火)~2月16日(月)
対象者
SNDJメンバー、および、SNDJクラブ会員 ※当セミナーへの参加には、SNDJメンバー、または、SNDJクラブへの登録が必要です。まだ登録されていない方は、下記リンク先からご登録ください。 SNDJメンバー(公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士)の登録はこちら SNDJクラブ(どなたでも登録可能)の登録はこちら
参加費
無料
参加申込
 下記専用フォームよりお申し込みください。

参加申込はこちら

※ライブ配信前日にセミナールームのご案内メールをお送りします。
プログラム
    司会進行(ナビゲーター) 一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長 鈴木志保子
  • 講演「チーズを知ろう! ~スポーツ栄養にチーズが有用な理由を反芻動物の生態から紐解く~」 NPO法人チーズプロフェッショナル協会 幹事 三原 茂 氏
  • 実食&トーク「先生、こんなミルクレシピはどうですか?!」 ― 牛乳が苦手な人にも取り入れやすいレシピや、スキムミルク・乳和食を題材に、 たんぱく質を手軽に増やす工夫や、現場で使いやすい提案のヒントを深めていきます。  一般社団法人 Jミルク 学術調査グループ 専任部長 山口 真 氏  一般社団法人 Jミルク 学術調査グループ 主任 小川哲弘 氏  一般社団法人Jミルク コミュニケーショングループ主任 西沢彩乃 氏

     三原 氏、鈴木理事長

登録締切
LIVE配信/1月27日(木)17時まで。見逃し配信は配信最終日まで受付。
共催
一般社団法人Jミルク 一般社団法人日本スポーツ栄養協会

出演者プロフィール

  • 三原 茂(みはら しげる) 氏 NPO法人チーズプロフェッショナル協会 幹事

    東京都出身。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業。乳業メーカーと輸入チーズ商社で品質管理業務に携わった経験から、乳用家畜や熟成に関わる微生物など生物学的側面からチーズの魅力を伝えている。シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ(フランスチーズ鑑評騎士)。
  • 山口 真(やまぐち まこと) 氏 一般社団法人Jミルク学術調査グループ 専任部長 博士(生物資源科学)
    牛乳・乳製品の栄養健康機能に関する研究情報の収集・発信、学術研究の支援・調整などに従事。夜の楽しみはカスタムヨーグルト作り。フルーツやトッピングを吟味する時間が至福です。
  • 小川 哲弘(おがわ あきひろ) 氏 一般社団法人Jミルク学術調査グループ 主任

    乳の利用と酪農乳業の発展に関する社会的・文化的な研究情報(経済・マーケティング・食文化・歴史など)の収集・発信、学術研究の支援・調整などに従事。子育て奮闘中で、子どもにも牛乳好きになってもらいたくて、家族で毎日牛乳を飲んでいます。
  • 西沢 彩乃(にしざわ あやの)氏 一般社団法人Jミルクコミュニケーショングループ 主任

    乳和食の普及啓発、公式SNS(X・Instagram)、SNS年間企画(「#私のホットミルク」など)に従事。牛乳が大好きで、カフェラテを作るときは 牛乳9:コーヒー1 で楽しんでいます。
  • 鈴木 志保子(すずき しほこ) 一般社団法人日本スポーツ栄養協会-SNDJ- 理事長 東京都出身。管理栄養士。公認スポーツ栄養士。公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 研究科長。

    実践女子大学卒業後、同大学院修了。東海大学大学院医学研究科を修了し、博士(医学)を取得。2000年より国立鹿屋体育大学体育学部助教授、2003年より神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授、2009年4月より教授を経て、2021年4月より栄養学科長、2023年4月より現職。

関連情報

一般社団法人Jミルク 牛乳でスマイルプロジェクト

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スポーツ栄養WEB編集部


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エリートレベルのアスリートのパフォーマンスの伸び悩みの関連因子を、クラスター分析で検討した結果が報告された。ドイツのナショナルチームトレーニングに参加するレベルのアスリート対象の解析の結果、パフォーマンス停滞の六つのパターンが特定されたという。

アスリートはどのようにしてパフォーマンスの伸びが停滞するのか

アスリートがトップレベルで活躍するには、常にパフォーマンスの向上を目指し、かつ達成する必要がある。しかし当然のこととして、すべてのアスリートが順調にパフォーマンスを向上し続けられるわけではなく、その競争に後れをとることで、やがて選手としての限界が見え始めることになる。

アスリートのパフォーマンスの停滞の原因は多因子であることは広く認められている。具体的には、生物学的、心理学的、社会学的な要因や個人的な環境要因などが関係していると考えられている。生物学的要因を左右する大きな因子の一つが栄養素の不足であり、スポーツ栄養はその点を補完することでアスリートのパフォーマンスをサポートする。

これらの因子はそれぞれが単独でパフォーマンスに影響を及ぼすこともあるが、実際には複雑に絡み合って複合的な影響を及ぼしていると考えられる。しかしこれまで、そのような視点で行われた研究は少なく、アスリートがどのように伸び悩みというフェーズに陥っていくのかはほとんど明らかにされていない。

これらを背景として、この論文の著者らは、アスリートのパフォーマンス成長を左右し得る、さまざまな要因を網羅的に評価する研究を行った。

ドイツのエリートアスリート300人の中から伸び悩みアスリートを抽出

この研究は、ドイツで行われているエリートアスリート育成のための学際的研究(individualized performance development in elite sports through holistic and transdisciplinary process optimization)の一環として実施された。同国ナショナルチームのトレーニングキャンプに参加中のアスリートを対象に、人口統計学、人体計測学、社会心理学、生化学、生理学、栄養学、睡眠などの専門家が関与し、それぞれの学問領域での検討に必要なパラメーターが収集された。

この研究に参加したアスリートは296人だった。各アスリートのコーチに対して、当該アスリートの過去1年間のパフォーマンスの成長を、7段階のリッカート尺度で質問。1点は成長なし、または低下とし、7点は著しい成長とした。このコーチの評価をもとに、アスリートのパフォーマンスの成長/停滞を判断した。著者によると、このようなコーチによる評価は、アスリートの予後予測手段として妥当と考えられるとしている。

コーチへの質問から得られたリッカートスコアの平均値から0.5標準偏差低い値(4.07点)をカットオフポイントとして、それを下回ったアスリートをパフォーマンスが伸び悩んでいると定義した。その結果、110人がそれに該当した。この110人から、クラスター分析に必要なデータが欠落している選手、および、極端な外れ値があり分析結果を歪める可能性のある選手を除外し、62人を抽出してクラスター分析を行った。

この62人は男性19人、女性43人で、競技はバレーボールが19人、体操11人、アイスホッケー10人、近代五種6人など。年齢は男性20.43±4.79歳、女性18.66±5.42歳、競技歴は同順に12.25±5.74年、12.90±5.34年だった。また、コーチによるパフォーマンス成長に関する評価のリッカートスコアは、3.89±0.46点、3.16±0.84点であった。

特定された6群のクラスターの特徴とは

クラスター分析の結果、この63人は6群のクラスターに分類された。

その6群の中でも最もパフォーマンス成長のリッカートスコアが低いクラスターは、全員が女性であり、BMIが最低であって、ビタミンB12とビタミンDの摂取量が最も少なかった。その他の特徴として、代謝・炎症関連パラメーター(fT3、インスリン、IFN-γ)のzスコアが有意に低く、社会的支援やメンタルヘルスのzスコアも有意に低くて、月経に伴う自覚症状が多彩だった。

別のクラスターは、急性外傷の既往が最多で(80%)、下半身のパフォーマンス(ジャンプやスプリントなど)とメンタルヘルスのzスコアが有意に低かった。また、重大なライフイベント(critical life events;CLE)の報告数が最多だった。

下半身のパフォーマンス、メンタルヘルス、社会的支援の不足/不良が成長を妨げている?

全体として、特定された六つのクラスターのうち、メンタルヘルス関連パラメーターのzスコアが有意に低いクラスターが三つあり、社会的支援関連のパラメーターのzスコアが有意に低いクラスターも三つだった。また、下半身のパフォーマンスのzスコアが有意に低いクラスターは二つで、代謝関連のzスコアが有意に低いクラスターは一つ特定された。

論文の結論は、「パフォーマンスが伸び悩んでいるアスリートは、生理学的、社会心理的、およびパフォーマンス関連要因の類似した基本的パターンに基づいて、クラスター化できることが示唆された。この研究結果は、パフォーマンスが停滞しているアスリートに対する個別化されたアプローチの重要性を、改めて強調するものだ。本研究結果を因果関係として解釈すべきではないが、このような学際的かつ多因子的なデザインでの研究は、エリートアスリートのパフォーマンス成長のサポートにおける新たな視座を示しており、将来の研究のための重要な基盤となり得る」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Multifactorial Patterns of Low Performance Development in German Elite Athletes」。〔Transl Sports Med. 2025 Oct 5:2025:8421509〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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スポーツ栄養Web編集部


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国内の熱中症による死亡者数は、長期的な暑熱適応の効果を見込んだとしても、21世紀半ばにかけて増加していくとの予測が発表された。国立環境研究所と東京大学の研究チームの研究によるもので、「Environmental Research」に論文が掲載された。

研究の概要

国立研究開発法人 国立環境研究所と東京大学からなる研究チームは、今後、数十年にわたる長期的な暑熱適応※1の効果を考慮して、熱中症死亡者数を予測することが可能な手法を開発し、気候変動および人口動態も考慮したうえで、47都道府県の将来予測に取り組んだ。

その結果、熱中症死亡数は、暑熱適応を考慮したとしても、基準期間(1995~2014年)と比べて21世紀半ば(2031~50年)に、1.6倍に増加することを明らかにした。気候変動や超高齢社会の進行により、熱中症死亡数は21世紀半ばに向けて増加すると予測され、さらなる熱中症対策の必要性が示唆された。

研究の背景と目的:熱中症死亡者数の変化を、暑熱適応を考慮して予測

気候変動による気温上昇に伴い、熱中症による健康影響が我が国で深刻となっている。夏期平均気温をみると、統計を開始した1898年以降、2023年と並び2024年においても1位タイを記録するとともに、熱中症死亡者数も過去最多の2,160人となった。気候変動が今後も進行すれば、熱中症死亡者数のさらなる増加が懸念される。

国は、熱中症による健康影響の軽減を目指して2023年に閣議決定された「熱中症対策実行計画」において、熱中症死亡者数を2030年までに現状※2から半減させる目標を掲げている。気候変動が進行し、また、超高齢社会を迎えている我が国において、将来の熱中症死亡者数を推定することは、今後追加的に必要となる熱中症対策を検討するうえで重要。

気候変動が進行するなか、生理学的および非生理学的な要因(行動変容、技術対策の導入、規制の導入など)により、今後、数十年という長期にわたって暑熱適応が進むことも予想される。その結果、同じ暑さでも、現在に比べて将来では熱中症リスクが低くなることも期待される。このような効果を「長期的な暑熱適応」と呼ぶ。

そこで、研究チームは、気候変動および人口動態に加え、長期的な暑熱適応の効果も考慮したうえで、熱中症死亡者数の将来予測に取り組んだ。

研究手法:都道府県ごとに暑熱適応を考慮し、複数のシナリオで検討

本研究では以下の研究手法により、65歳未満および65歳以上という2世代を対象に、熱中症死亡者数の将来予測に取り組んだ。

将来予測の方法について、日最高WBGT※3と熱中症死亡数の関係は指数関数で示すことができる(図1-①)。そこでまず、この指数関数を世代別に47都道府県ごとに作成のうえ、熱中症死亡率が増加し始める日最高WBGT(WBGT閾値)を算定した。続いて、47都道府県ごとにその地域の暑さ(5~9月の日最高WBGTの平均値)とWBGT閾値との関係を調べると、正の相関があることが明らかになった(図1-②)。具体的には、暑い地域ほどWBGT閾値が高くなる傾向があり、この相関は暑熱適応レベルの地域差を示すと考えられる。気候変動により地域の暑さが増す際に、この相関を用いてWBGT閾値およびリスク関数を日最高WBGT側にシフトさせることで、暑熱適応を考慮した(図1-③※4

図1 気候変動により地域の暑さが増した場合の暑熱適応を考慮する方法

日最高WBGTと熱中症死亡率の関係を指数関数で示すことができる(①)。地域の暑さとWBGT閾値には正の相関がある(②)。気候変動により地域の暑さが増した際に、この相関を用いWBGT閾値とリスク関数を日最高WBGT側に平行にシフトさせることで暑熱適応を考慮した(③)。

(出典:国立環境研究所)

上記手法に基づき暑熱適応を考慮のうえ、各予測期間における日々の日最高WBGTを入力することにより、47都道府県の将来の熱中症死亡率および死亡者数を世代別に予測した。なお、予測期間は、基準期間(1995~2014年)、21世紀半ば(2031~50年)、21世紀末(2081~2100年)とした。入力する日最高WBGTは、三つの社会経済シナリオ(SSP)※5および代表的濃度経路シナリオ(RCP)※6の組み合わせと、五つの気候モデル※7を基に設定した。

研究成果:暑熱適応を考慮しても熱中症死亡率が21世紀末には最大で倍近くに上昇

熱中症死亡率

暑熱適応を考慮しない場合、熱中症死亡率(以下「死亡率」という)は、いずれのSSP-RCPシナリオにおいても基準期間と比べて、21世紀半ばに65歳未満で1.8倍、65歳以上で1.7倍に増加すると予測された(図2)。一方、暑熱適応を考慮した場合、それぞれ1.3倍、1.2倍に増加すると予測された※8

図2 熱中症死亡率の予測結果

基準期間の熱中症死亡率を1としている。暑熱適応を考慮しない場合の結果と考慮した場合の結果を示す。本研究では、三つの社会経済シナリオ(SSP)および代表的濃度経路シナリオ(RCP)の組み合わせを利用(SSP1-RCP2.6、SSP2-RCP4.5、SSP5-RCP 8.5)。図は五つの気候モデルによる結果の平均値を示す。

(出典:国立環境研究所)

また、21世紀末には、暑熱適応を考慮しない場合、全SSP-RCPシナリオにおいて、65歳未満で1.8~6.9倍、65歳以上で1.7~5.8倍に、暑熱適応を考慮した場合、それぞれ1.3~2.4倍、1.2~1.8倍に増加すると予測された(図2)。

熱中症死亡者数

暑熱適応を考慮しない場合、熱中症死亡者数(以下「死亡者数」という)※9は、いずれのSSP-RCPシナリオにおいても基準期間と比べて、21世紀半ばに65歳未満で1.3倍、65歳以上で2.5倍に増加すると予測された(図3)。一方、暑熱適応を考慮した場合、それぞれ0.97倍、1.8倍に変化すると予測された。

図3 熱中症死亡者数の予測結果

(出典:国立環境研究所)

また、21世紀末には、暑熱適応を考慮しない場合、全SSP-RCPシナリオにおいて、65歳未満で0.91~3.7倍、65歳以上で1.8~6.6倍に、暑熱適応を考慮した場合、それぞれ0.64~1.3倍、1.2~2.1倍に変化すると予測された。

全世代の死亡者数でみると、暑熱適応を考慮しない場合、いずれのSSP-RCPシナリオにおいても基準期間と比べて21世紀半ばに2.2倍に、暑熱適応を考慮した場合、1.6倍に増加すると予測された。また、21世紀末には、暑熱適応を考慮しない場合、全SSP-RCPシナリオにおいて、1.5~5.8倍に、暑熱適応を考慮した場合、1.1~1.9倍に増加すると予測された。

暑熱適応を考慮しても、現在よりも死亡者数の増加が予測され、さらなる熱中症対策の必要性が示唆された。

今後の展望

研究チームは、本研究の限界点として、「暑熱適応に寄与する生理学的および非生理学的な各要因が、熱中症死亡リスク低減にもたらす効果が十分に明らかになっていないこともあり、本研究では各要因の効果まで考慮できていない」とし、「今後は各要因がもたらす効果、例えば熱中症警戒アラートが熱中症死亡リスク低減にもたらす効果を明らかにし、その効果を考慮して熱中症死亡者数の将来予測に取り組む予定」としている。また、「熱中症リスク低減を目指すべく、関連機関との連携のもと、熱中症対策の社会実装に向けた活動にも取り組む予定」という。

関連情報

長期的な暑熱適応の効果を見込んでも気候変動と超高齢社会により21世紀半ばに向けて熱中症死亡者数が増加する(国立研究開発法人 国立環境研究所)

文献情報

原題のタイトルは、「Future heatstroke mortality in Japan: Impacts of climate, demographic changes, and long-term heat adaptation」。〔Environ Res. 2025 Dec 15:287:123012〕 原文はこちら(Elsevier)

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スポーツ栄養Web編集部


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競技時間が数時間や数日、またはそれ以上に及ぶことのある超耐久スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)の実態を、文献レビューにより検討した論文を紹介する。著者らは、超耐久スポーツでのREDsは、エネルギーバランスの傾きといった生理学的側面にのみ注視するのでは不十分で、心理学的側面に焦点をあてる必要があるのではないかと述べている。

超耐久スポーツ(UES)の特徴とREDsリスク

ウルトラマラソンなどの超耐久スポーツ(ultra endurance sport;UES)は、一般的に競技時間が6時間以上続き、生理学的および心理学的に多大な負荷がかかる。当然、エネルギー需要は高く、炭水化物を体重1kgあたり12g以上、タンパク質は2g以上が必要になることがある。消費エネルギー量はルートや気候などのレース条件により大きく異なるが、1日あたり3,000~8,000kcalの範囲という報告がある。

また、UESに参加しているアスリートはもちろんのこととして、競技会参加日だけでなく、ふだんからハイボリュームのトレーニングを行っている。そして、UESアスリートの特徴として、レクリエーションレベルとエリートレベルのトレーニング量が近接していることが挙げられる。ある報告では、レクリエーションレベルでも週13時間以上のトレーニングを行っていて、エリートアスリートのボリュームに匹敵するとしている。

このような際立った特徴のあるUESという競技に参加しているアスリートは、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)やスポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)、乱れた食行動(disordered eating;DE)、摂食障害(eating disorder;ED)などのリスクが高いことが懸念される。しかし、それらに関する情報は十分でないため、この論文の著者らは文献レビューによる検討を行った。

文献検索について

文献検索には、ScopusとPubMedという2種類の文献データベースを用いた。検索キーワードは、超持久力、トライアスロン、ウルトラマラソン、ウルトラサイクリング、ウルトラスイミング、LEA、RED、DE、ED、女性アスリートの三主徴(トライアド)などを用い、1名の研究者が検索。包括基準は、超持久力競技(競技時間が6時間以上と定義)の競技会に向けてトレーニングを行っているアスリートを対象とする、定量的または定性的研究の英語論文として、症例報告も含めた。一方、エディトリアル、論説、書籍、研究対象アスリートの競技時間を明示しておらず超耐久スポーツ(UES)に該当するか否か判断不能の報告などは除外した。

重複削除後に2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングと全文精査を実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。また、抽出された論文の参考文献についてGoogle Scholar等でのハンドサーチを行った。

最終的に16件の報告を適格と判断した。これらのうち10件(62.5%)は定量的データを報告し、6件(37.5%)は定性的解析の報告または症例報告だった。定量的研究のうち、7件(43.8%)は心理学的側面の評価を採り入れ、5件(31.3%)は生理学的側面から検討していた。定性的研究では、半構造化面接を用いた研究が3件、症例報告が1件、ケースシリーズが1件、ナラティブレビューが1件だった。

UES選手のDE、ED、LEA、EXD等の実態

本研究では定量的解析は行われておらず、ナラティブレビューのかたちをとっている。その一部を抜粋して紹介する。

女性超持久力アスリートの65%が利用可能エネルギー不足(LEA)

まず、女性のみを対象とした研究からは、306人の女性ウルトラマラソン選手を対象とした調査では26.8%が摂食障害(ED)の潜在的なリスクが認められ、5.2%はEDに該当する可能性があると報告されていた。また別の研究では、202人の女性超持久力アスリートを対象とする調査により、65%が利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクを有しており、23%が運動依存(exercise dependence;EXD)のリスク状態で、21%に乱れた食行動(DE)のリスクが認められたという。

男性も含む研究からは、1,899人の男性と女性のトレイルランナーとウルトラランナーを対象とする調査で、43%にLEAのリスクがあり、同じく43%にDEのリスクが認められ、87.3%がEXD関連症状を示していたと報告されている。別の研究では、マスターズトレイルランナーとウルトラランナー1,021人において、女性の46%、男性の32%にDEのリスクがあり、またEXDに関しては女性の80%と男性の79%にリスクがみられるとしていた。

ほかにも、53人の男性サイクリスト対象の研究からEXDとEDリスクは正の相関関係にあること、123人のウルトラマラソンランナーを対象とした研究から女性の61.1%と男性の29.2%が三主徴(トライアド)のリスク状態にあることなどが報告されていた。また、24人の男性オープンウォータースイマー12人を対象とした研究では、エネルギー収支がマイナス(-435.4~-458.1kcal)であり、マクロ・ミクロ双方の栄養素が推奨量を下回っていることが示されていた。

心理的苦痛と葛藤

定性的研究からは、UESアスリートは全体的に、パフォーマンスや外見へのプレッシャー、失敗への恐怖、アスリートとしてのアイデンティティーの管理、REDsの症状や対処上の懸念から、心理的苦痛を感じていることが報告されていた。アスリートたちは、自分たちの健康や幸福に有害な行動をしていると知りながら、REDsを改善するために何もしていないという心理的苦痛も示していた。

これらの考察を基に論文の結論には、「UESにおけるREDに関する既存の研究は、アスリートのエネルギー利用およびその補給の複雑さを理解するために、多くの知見を提供してきている。しかし、UESアスリートを十分にサポートするにはケアの範囲を広げ、心と体の相互関係を認識することが必要ではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Exploring the presentation of REDs in ultra endurance sport: a review」。〔J Eat Disord. 2025 Sep 26;13(1):210〕 原文はこちら(Springer Nature)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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スポーツ栄養Web編集部


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Jリーガーのハムストリング筋損傷の発生率、再発率、再発リスク因子を検討した結果が報告された。東京慈恵会医科大学スポーツ・ウェルネスクリニックの舟崎裕記氏らが、J1、J2で戦っているあるクラブに所属する選手の医療記録を後方視的に解析した結果であり、米国スポーツ医学整形外科学会のジャーナル「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」に論文が掲載された。発生率は1,000選手時間あたり0.6、再発率は30%だという。

日本人プロサッカー選手のハムストリング筋損傷発生率等に関する、初めての詳細な報告

サッカー選手はハムストリング筋損傷(hamstring muscle injury;HMI)のリスクが高く、HMIの発生は長期間のプレー離脱につながりやすい。また、HMIは再発率が高いことが知られており、再発リスク因子の特定や対策の確立が求められている。しかし、国内のプロサッカー選手におけるHMIの発生率や再発率、ならびに再発リスク因子については、これまで十分に検討されてこなかった。

舟崎氏らはこれらの点について、6年間にわたるJリーガーの医療記録を用いて詳細に解析した。MRI検査に基づいて損傷タイプを分類し、同一の理学療法士の下でリハビリテーションが行われるという統一された環境で検討されている。著者らは本報告を、日本人プロサッカー選手におけるHMIの発生率などに関する、初の本格的な研究と位置づけている。

延べ209人のJリーガーを6シーズン追跡

この研究の対象は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に所属しているあるクラブの男子選手。2013~18年にわたる6シーズン連続の医療記録を後方視的に解析した。この間にこのチームは、J1で4シーズン、J2で2シーズン戦っていた。解析対象選手は延べ209人で、ベースライン年齢は24.7±1.3歳、試合出場回数は45.6±3.4回/年、試合出場時間1,525時間/年、トレーニング時間10,432時間/年だった。

HMI症状を呈した選手には48時間以内にMRI検査を施行。解剖学的部位や発生機転を特定したうえで、国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences;JISS)の分類(一部改変)に即して、損傷タイプを判定した。その損傷タイプに応じて、完全復帰までの期間をタイプ1;2週、タイプ2;6~10週、タイプ3;3カ月と統一してリハビリテーションプログラムが立てられた。

なお、選手の訴えとMRI検査の所見が一致し、その選手がトレーニングから4日以上離脱した場合を「HMIの発生」と定義した。また、完全復帰前、または完全復帰後2カ月以内に同一部位にHMIが発生した場合を「HMIの再発」と定義した。

HMI発生率は1,000選手時間あたり0.60で、再発率は30%

HMI発生は試合中に多く、再発は完全復帰前から復帰8週間以内に発生

6シーズンで、27人、43肢にHMIが発生していた。トレーニング中の発生が22肢、試合中が21肢であり、HMI発生率は全体として1,000選手時間あたり0.60、トレーニング中は同0.35、試合中は同2.30だった。

43肢中6肢はJISS分類のタイプ3で、このうち3肢は外科的治療を要していた。その他の40肢は保存的に治療されていた。

保存的に治療された40肢のうち12肢でHMIの再発が認められ、再発率は30%だった。再発のタイミングは、完全復帰前が2肢、完全復帰後1週間以内が5肢、同1~4週間が2肢、4~8週間が3肢だった。

大腿二頭筋での再発の有無で、損傷タイプの分布に有意差

HMI再発の有無で2群に分けて比較すると、年齢、発生部位、損傷タイプ、発生時期(月)、他部位のHMIの既往の有無などは、いずれも有意差がなかった。ただし、部位別にみると、大腿二頭筋で発生したものは損傷タイプの分布に有意差が認められた(p=0.127)。

具体的には、再発のない大腿二頭筋のHMI(18肢)は、タイプ1-Mが9肢、タイプ1-Tが3肢、タイプ2が6肢であるのに対して、大腿二頭筋に再発したHMI(9肢)では同順に、0肢、6肢、3肢だった。半腱様筋や半膜様筋に発生したHMIについては、この分布にも有意差がなかった。

なお、タイプ1-Mは筋腹周辺部に生じる筋膜損傷、タイプ1-Tは構造的な腱損傷を伴わない筋内腱周囲の出血、タイプ2は筋腱接合部または筋内腱の損傷であり、骨腱接合部の損傷はタイプ3と分類されている。

筋損傷のタイプによっては、完全復帰のタイミングなどを再考すべき

論文中の考察によると、欧州サッカー連盟(Union of European Football Association;UEFA)での先行研究のデータとして、1,000選手時間あたりのHMI発生率が、試合では4.99、トレーニングでは0.52と報告されているという。本研究で示された日本人JリーガーのHMI発生率はこれよりいずれも低いが、その背景として著者らは、「HMIの定義(欧州の先行研究は1日以上の離脱で定義)や試合密度(1シーズンの試合数がJリーグの1.3倍)の差異などによるのではないか」と述べている。

また、本研究により、タイプ1-M、1-Tともに、受傷後2週間で完全復帰が可能であったが、タイプ1-T損傷の場合は再発率が高かったことから、「HMIを来したプロサッカー選手において、構造的な腱損傷を伴わない筋内腱周囲の出血が認められる場合、リハビリプログラムの変更や、今回設定された完全復帰までの期間を延長するなどの対応を考慮する必要があるのではないか」と提案している。

文献情報

原題のタイトルは、「Incidence of Hamstring Injury and Analysis of Risk Factors for Reinjury in Japanese Professional Football Players」。〔Orthop J Sports Med. 2025 Nov 21;13(11):23259671251391776〕 原文はこちら(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)

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スポーツ栄養Web編集部


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女子学生アスリートの食事・習慣、クロノタイプ、ボディーイメージへの不満を、スポーツを行っていない女子学生と比較検討した研究結果を紹介する。アスリート学生は食事の質は高い一方、睡眠の質は低いことなどが示されている。

女子学生アスリートの食事・睡眠習慣はスポーツを行っていない女子学生と異なるのか

学生アスリートは、学業とトレーニングの両立という二重の課題に直面している。さらに女子学生アスリートは男子学生アスリートに比べて、生理的および心理社会学的ストレス要因がより多い可能性が考えられ、これらの要求が食事や睡眠などの習慣にどのような影響を及ぼしているのかを理解することは、彼女たちの健康のトータルなサポートに不可欠と言える。

今回取り上げる論文の研究は、イタリアの女子大学生28人を対象とする横断研究として実施され、アスリートと非アスリートで、食事・睡眠習慣、クロノタイプ(朝型か夜型か)、ボディーイメージへの不満などが異なるのか否かが検討されている。28人のうち14人は大学の公式バレーボールチームのメンバーであり、他の14人はスポーツを行っていなかった。年齢はアスリート群が21.6±2.4歳、非アスリート群が24±3.2歳、BMIは同順に22.5±2.3、23.8±2.8だった。

食事・睡眠習慣、クロノタイプ、ボディーイメージへの不満の評価法について

食習慣については、地中海食遵守状況を評価するためのイタリア語版の質問票(PREvención con Dieta MEDiterránea;PREDIMED)で評価した。PREDIMEDは14項目からなり、スコアが高いほど、より地中海食らしい食習慣であることを意味する。

睡眠の質はピッツバーグ睡眠品質指数(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)で評価した。PSQIは、スコアが高いほど睡眠の質が低いことを意味する。クロノタイプは朝型・夜型質問票(Morningness–Eveningness Questionnaire;MEQ)で評価した。MEQはスコアが高いほど朝型であることを意味する。

このほかに、ボディーイメージの不満評価尺度(Body Image Dimensional Assessment;BIDA)を用いて、認識している自身のボディーイメージと理想的なボディーイメージの差、認識している自身のボディーイメージと異性が最も魅力的であると考えるボディーイメージの差、認識している自身のボディーイメージと同世代の典型的なボディーイメージとの差を把握した。

さらに、トレーニング以外の場面における身体活動は、アスリート学生のほうが好ましく、非アスリート学生は好ましくないと一概には言い切れないため、国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire;IPAQ)を用いて健康増進身体活動(health-enhancing physical activity;HEPA)を評価した。

女子学生アスリートは地中海食を遵守しているが睡眠の質が良くない

国際標準化身体活動質問票(IPAQ)に基づき、アスリート群の大半(83.3%)が健康増進身体活動(HEPA)が活動的と分類された。一方で非アスリート群でのその割合は43.8%だった。

地中海食遵守質問票(PREDIMED)のスコアには有意な群間差が認められ、アスリート群は8.5±1.5点、非アスリート群は6.7±1.6点であり、アスリート群のほうが地中海食らしい食事スタイルだった(効果量〈d〉=1.16、p<0.01)。<>

ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)にも有意な群間差が認められた。ただし、PREDIMEDとは反対に、非アスリート群のほうが好ましい結果だった。具体的には、アスリート群が6.8±3.0点、非アスリート群は4.6±2.3点だった(d=0.82、p=0.03)。臨床的なカットオフ値(PSQIが5点以上)を適用すると、アスリート群の75%が、睡眠の質が不良と判定された。

クロノタイプに関しては、両群間に有意差はみられなかった(アスリート群48.6±6.7点、非アスリート群51.3±9.8点〈d=-0.3〉)。大半の学生は、朝型でも夜型でもない中間型または、やや朝型/夜型に分類された。

女子学生アスリートは、同世代の典型的なイメージとの比較において自己評価が低い

ボディーイメージ不満評価尺度(BIDA)で比較検討した前述の三つの指標のうち、理想的なボディーイメージとの差、異性が最も魅力的であると考えるボディーイメージとの差という二つについては、アスリート群と非アスリート群とで有意差がなかった。

しかし、同世代の典型的なボディーイメージとの差については、アスリート群は5.6±10.5%のプラス評価であり、これは非アスリート群が19.4±24.5%にプラス評価していたことに比べて、有意に低かった(d=-0.67、p=0.04)。

睡眠が適切でなければ学生アスリートへの栄養戦略の効果が低下してしまう

女子学生アスリートは地中海食への遵守率が有意に高かったものの、非アスリート女子学生よりも睡眠の質が低いことが示された。著者らはこれを「パラドックス」とし、「学業とトレーニングという二重課題に直面している学生のライフスタイル行動の複雑さを浮き彫りにしている」と述べ、「学業とスポーツの両立という要求が、心理生理学的側面に悪影響を及ぼす可能性があることを浮き彫りにするもの」と総括している。

そして、「アスリートにおいて睡眠の質が低下している場合、栄養戦略の効果が十分に発揮されない可能性がある。よって睡眠障害の早期スクリーニング、クロノタイプに基づいたスケジュールの個別化、そして栄養士、コーチ、睡眠専門家が関与する学際的介入がなされることで、回復の最適化やストレス関連症状の軽減を介して、パフォーマンス低下や長期的な健康リスクの防止に役立つ可能性がある」と考察している。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating Right, Sleeping Tight? A Cross-Sectional Study on the Student-Athlete Paradox for Diet and Sleep Behaviors」。〔Nutrients. 2025 Sep 12;17(18):2946〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部

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厚生労働省は先ごろ、令和6年「国民健康・栄養調査」の結果を発表した。令和6年の本調査では4年に1度の拡大調査が行われ(平成24年、平成28年に続いて3回目)、毎年実施している基本項目の全国代表値に加えて、一部の生活習慣等について都道府県の状況が報告されている。2回に分けて紹介する。

後半の第2回は、栄養・食生活に関する状況、身体活動・運動及び睡眠に関する状況、飲酒・喫煙に関する状況などについての調査結果を報告する。

令和6年「国民健康・栄養調査」【全2回】

主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合は、52.8%である。男女別にみると、男性52.3%、女性53.2%であり、年齢階級別にみると、男女ともに20歳代で最も低い(図1)。

図1 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度

(出典:厚生労働省)

食塩摂取量の状況

食塩摂取量の平均値は9.6gであり、男女別にみると、男性10.5g、女性8.9gである(図2)。

平均で9.6gという値は、過去12年間でみると最も低い。ただし、健康日本21(第三次)における目標値(7g)よりは依然高い状況にある。

図2 食塩摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

野菜摂取量の状況

野菜摂取量の平均値は258.7gであり、男女別にみると、男性268.6g、女性250.3gである。年齢階級別にみると、年齢階級が高い層で摂取量が多い(図3)。

図3 野菜摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

果物摂取量の状況

果物摂取量の平均値は78.1gであり、男女別にみると、男性70.4g、女性84.7gである。年齢階級別にみると、男女ともに70歳以上の摂取量が最も多い(図4)。

図4 果物摂取量の平均値

(出典:厚生労働省)

身体活動・運動及び睡眠に関する状況

運動習慣者の状況

運動習慣のある者の割合は34.6%(年齢調整値31.3%)であり、男女別にみると、男性で38.5%、女性で31.5%である。年齢階級別にみると、男女ともにその割合は30~40歳代で低くなっている(図5)。

図5 運動習慣のある者の割合

(出典:厚生労働省)

歩数の状況

歩数の平均値は7,071歩(年齢調整値7,231歩)であり、男性で7,763歩、女性で6,495歩である。20~64歳の歩数の平均値は、男性8,564歩、女性7,287歩であり、65歳以上では男性6,667歩、女性5,429歩である(図6)。

図6 歩数の平均値

(出典:厚生労働省)

睡眠の状況

ここ1カ月間、睡眠で休養がとれている者の割合は79.6%(年齢調整値78.5%)であり、男女別にみると、男性で80.4%、女性で78.9%である。20~59歳では73.0%、60歳以上は86.1%である(図7)。

図7 睡眠の状況

(出典:厚生労働省)

1日の平均睡眠時間が6時間以上9時間未満(60歳以上については6時間以上8時間未満)の者の割合は56.0%(年齢調整値は56.9%)であり、男女別にみると、男性56.1%、女性55.9%である(図8)。

図8 1日の平均睡眠時間

(出典:厚生労働省)

飲酒・喫煙に関する状況

飲酒の状況

生活習慣病(NCDs)のリスクを高める量を飲酒している者の割合は11.4%であり、男女別にみると、男性3.9%、女性9.3%である。年齢階級別にみると、その割合は男性では60歳代、女性では50歳代が最も高く、それぞれ21.6%、18.4%である(図9)。

図9 生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合

(出典:厚生労働省)

喫煙の状況

現在習慣的に喫煙している者の割合は14.8%であり、男女別にみると、男性24.5%、女性6.5%である。年齢階級別にみると、男性では40~50歳代でその割合が高く、3割を超えている(図10)。

図10 現在習慣的に喫煙している者の割合

(出典:厚生労働省)

現在習慣的に喫煙している者が使用しているたばこ製品の種類は、「紙巻たばこ」の割合が男性65.4%、女性60.0%であり、「加熱式たばこ」の割合が男性41.4%、女性44.2%である(図11)。

図11 現在習慣的に喫煙している者が使用しているたばこ製品の種類

(出典:厚生労働省)

たばこ製品の組合せについて、「紙巻たばこのみ」「加熱式たばこのみ」「紙巻たばこ及び加熱式たばこ」の割合は、男性では、それぞれ56.9%、33.0%、8.4%であり、女性では、それぞれ55.2%、39.3%、4.8%である。

禁煙意思の有無の状況

現在習慣的に喫煙している者のうち、たばこをやめたいと思う者の割合は18.6%であり、男女別にみると、男性17.2%、女性23.1%である(図12)。

図12 現在習慣的に喫煙している者におけるたばこをやめたいと思う者の割合

(出典:厚生労働省)

受動喫煙の状況

望まない受動喫煙(家庭・職場・飲食店)の機会を有する者の割合は26.7%であり、男女別にみると、男性29.2%、女性24.9%である(図13)。

図13 望まない受動喫煙(家庭・職場・飲食店)の機会を有する者の割合

(出典:厚生労働省)

自分以外の人が吸っていたたばこの煙を吸う機会(受動喫煙)を有する者(現在喫煙者を除く)の割合について場所別にみると、「路上」が28.6%と最も高く、次いで「職場」が16.9%、「飲食店」が16.7%となっている。

その他

歯・口腔の健康に関する状況

何でもかんで食べることができると回答した者の割合は85.9%であり、男女別にみると、男性で86.0%、女性で85.8%である。50歳以上ではその割合は80.6%(年齢調整値81.3%)である(図14)。

図14 「何でもかんで食べることができる」者の割合

(出典:厚生労働省)

社会活動の状況

就労・就学を含む社会活動を行っている者の割合は、83.1%であり、男女別にみると、男性86.2%、女性80.4%である。65歳以上では、その割合は69.6%である(図15)。

図15 いずれかの社会活動(就労・就学を含む)を行っている者の割合

(出典:厚生労働省)

地域の社会活動への参加について内容別にみると、町内会や地域行事などの活動に参加している者の割合が最も高く、その割合は31.1%である。

関連情報

厚生労働省 令和6年「国民健康・栄養調査」の結果

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厚生労働省「国民健康・栄養調査」アーカイブ

令和6年

令和5年

令和元年

平成30年

  1. 栄養・食生活、身体活動等に関する状況
  2. 身体状況、および所得と生活習慣の関連

スポーツ栄養Web編集部


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国内の小学校児童対象の研究により、1日60分以上の身体活動を毎日行っている子どもは総合体力が高く、かつ、そのような身体活動に加えてスクリーンタイムが短い、または睡眠時間が十分な場合、体力がより高いという関係のあることがわかった。早稲田大学や学関東学院大学の研究グループの成果であり、「PLOS One」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。

研究のポイント

  • 日本の子どもの体力は1980年代をピークに低下し、その後2000年頃から回復しつつあったが、直近5年間で体力テストの得点が大きく低下している。体力向上への効果的な対策が求められている。
  • 本研究では、小学生の体力テストのスコア(総合スコアおよび8種目のスコア)と、①身体活動、②娯楽目的のスクリーンタイム(ゲーム、テレビ、SNSなど画面を見る時間)、③睡眠の状況との関連を調査した。
  • 小学校の児童307名が分析対象となり、「1日60分以上の中~高強度の身体活動(徒歩、外遊び、スポーツなど)を毎日行っている」子どもは、総合体力および多くの種目のスコアが高いことが示された。さらに、この身体活動に加え、「1日2時間以内の娯楽目的のスクリーンタイム」や「1日9~11時間の睡眠」のいずれか、またはその両方を満たした子どもは、そうでない子どもに比べて体力テストのスコアがより高い傾向がみられた。
  • これらの結果は、子どもの体力向上のために、「1日60分以上の中高強度の身体活動を毎日行う」ことに加え、適切なスクリーンタイムや睡眠を組み合わせることの意義を示している。

研究の概要

日本の子どもの体力は1980年代をピークに低下し、2000年頃から回復しつつあったが、直近5年間で体力テストのスコアが大きく低下している。体力低下の要因として、身体活動の少なさだけでなく、スクリーンタイム(ゲーム・スマホ・テレビなど)や夜ふかしの増加などの生活習慣の問題が指摘されている。

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科、同大学スポーツ科学学術院、関東学院大学経済学部の研究グループは、小学生の体力レベルと、身体活動・スクリーンタイム・睡眠という三つの生活習慣の関連を分析した。その結果、1日60分の中~高強度の身体活動(歩行、外遊び、スポーツなど)を毎日行う子どもは、総合体力や多くの種目で得点が有意に高いことが示された。さらに、身体活動に加え、「1日2時間以内の娯楽目的のスクリーンタイム」や「9~11時間の睡眠」のいずれか、または両方を満たす子どもは、体力がより高い傾向がみられた。

毎日60分以上の中~高強度の身体活動に加え、適切なスクリーンタイムや睡眠を組み合わせることで、子どものさらなる体力向上につながる可能性を示している。

これまでの研究でわかっていたこと

日本において、1980年代をピークに子どもの体力は低下傾向にあり、2000年ごろから回復しつつあったが、直近5年間で体力テストのスコアが大きく低下している。

体力低下の要因として、外遊びや身体活動全般の減少、スクリーンタイムの増加(ゲーム・スマホ・テレビなど)、夜ふかしの増加や短い睡眠時間、肥満の増加、新型コロナウイルス渦による活動制限などが挙げられており、身体活動以外の要因も関連することが指摘されている。

現在、「24時間行動ガイドライン」という概念が国際的に広まりつつある。人々の1日(24時間)は、①身体活動、②座位行動、③睡眠という三つの行動で構成されている。この三つの行動の推奨事項を包括的に遵守することを目指したのが24時間行動ガイドライン。24時間行動ガイドラインは、2016年にカナダで採用され、その後、オーストラリアやWHOなどで採用が広がりつつある。

5~17歳を対象とした24時間行動ガイドラインの推奨事項は図1のとおり。座位行動については、座位行動の一種であるスクリーンタイムが指標として用いられている。

図1 子どもの24時間ガイドラインの推奨事項

(出典:早稲田大学)

三つの推奨事項の遵守数の多さや、特定の遵守の組み合わせが、子どもにおける体力の高さ、肥満や心代謝リスクの低さ、認知機能や学力の高さ、主観的な健康感や生活の質の高さと関連することが、これまでの研究で示されている。

しかし、この24時間行動ガイドラインの遵守状況と子どもの体力レベルの関連を調べた国内外の研究は十分ではないことに加え、日本全国の小学校で実施されている新体力テストの全8種目のデータを用いて関連を検討した研究は、これまで存在しなかった。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

本研究は、体力レベルと三つの生活習慣(身体活動・座位行動・睡眠)との関連を調べ、子どもの体力向上策を検討するうえで役立つ実践的な示唆を得ることを目的とした。

調査は、横浜市内の研究協力校である小学校1校の児童を対象に実施した。体力テストのデータを取得するとともに、質問紙を用いて、①中~高強度の身体活動の時間・頻度、②1日あたりの娯楽目的のスクリーンタイム、③1日の平均睡眠時間を調査した。小学1~3年生は保護者のサポートのもと回答し、小学4~6年生は子ども本人が回答した。

体力テストは全8種目で構成され(表1)、各種目のスコア(各10点満点)および総合体力スコア(80点満点)のデータを取得した。

表1 新体力テストの種目

(出典:早稲田大学)

24時間行動ガイドラインの推奨事項に基づき、三つの生活習慣の遵守状況は、以下のように分類した。

1日60分以上の中~高強度の身体活動を毎日行っている場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」。

②スクリーンタイム

1日あたりの2時間以下の場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」。

③睡眠

1日9~11時間の睡眠をとっている場合を「遵守」、それ以外を「非遵守」。

小学校の児童307人が分析対象となった。三つすべての推奨事項を遵守していた子どもは全体の5%(15人)にとどまった。一方、三つすべてを遵守していない子どもは25%(77人)に上った。

総合体力のスコアは、「身体活動を遵守している子ども」、「身体活動とスクリーンタイムの両方を遵守している子ども」、「身体活動と睡眠の両方を遵守している子ども」、「三つすべてを遵守している子ども」が、それぞれ遵守していない子どもに比べて有意に高い結果が示された。とくに、身体活動の遵守に加えてスクリーンタイムまたは睡眠のどちらか、あるいは両方を同時に遵守している場合に、より高い総合体力スコアが示された(図2)。

図2 24時間行動ガイドラインの遵守パターンと総合体力スコアの関連

グラフ内の「*」は統計的に有意差があったことを示している。

(出典:早稲田大学)

個別の体力に関しても、「身体活動を遵守している子ども」は、そうでない子どもに比べて多くの種目で高いスコアを示した。とくに、身体活動の遵守に加えて、スクリーンタイムまたは睡眠のどちらか、あるいは両方を同時に遵守している場合には、体幹筋力/持久力・敏捷性・スピード・瞬発力・巧緻性において、より高いスコアを示す傾向があった。

握力(筋力)、長座体前屈(柔軟性)は、24時間行動ガイドラインの遵守状況と関連がみられなかった。

これらの結果は、毎日60分以上の中~高強度の身体活動が体力向上において重要であることに加え、適切なスクリーンタイムや睡眠を促すことで、子どものさらなる体力向上につながる可能性を示している。

研究の波及効果や社会的影響

子どもの体力を高める上で身体活動・運動を行うことの重要性が改めて示された。さらに、スクリーンタイムの適切な管理や十分な睡眠を組み合わせることで、体力がより高まる可能性が示唆された。身体活動だけでなく、24時間行動ガイドラインに基づき、身体活動・座位行動・睡眠の推奨をバランスよく満たすことが、子どもの体力向上に効果的だと考えられる。そのためには、子どもたちを取り巻くステークホルダー(教員・保護者・子ども・政策立案者・事業者・研究者)が連携し、運動不足、デジタル機器の過度な利用、睡眠不足といった課題に対して、総合的な対策を進めていくことが求められる。

一方、本研究は1校の児童のみを対象としており、調査範囲が限定的。今後は、より多くの地域や、中学生・高校生など他の年代の子どもも含め、大規模な調査が求められる。また、本研究は観察研究であるため、得られた結果について因果関係までは明らかにできない。

研究者らは、「子どもの時に体力を育むことは、心身の健康保持や認知機能の高さと関連し、大人になってからの健康の土台にもなる。体を少しでも多く動かすことに加え、毎日しっかり寝る、スマホやゲームを使いすぎないなどの生活習慣を整えることが、さらなる体力向上につながる可能性がある」とコメントしている。

プレスリリース

生活習慣の組み合わせで児童の体力に違い(早稲田大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Differences in physical fitness levels by adherence to the 24-hour movement guidelines among Japanese elementary school children」。〔PLoS One. 2025 Dec 3;20(12):e0337972〕 原文はこちら(PLOS)

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スポーツ栄養Web編集部


Page 16

世界保健機関(WHO)は先ごろ、「肥満治療におけるGLP-1薬の使用に関する国際ガイドライン」を発表した。健康的な食事、定期的な運動、医療専門家によるサポートを含む包括的なアプローチの一環として、肥満を抱える人々がこの深刻な健康課題を克服できるよう、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の使用を条件付きで推奨している。一方で、GLP-1RAだけでは肥満の蔓延という問題が解決しないことを強調している。

世界中で喫緊の対策が必要とされている肥満

肥満はあらゆる国の人々に影響を及ぼしており、2024年には世界中で370万人が死亡すると予測され、さらに肥満人口の増大が予測されている。このような状況のなか、世界保健機関(World Health Organization;WHO)は、慢性再発性疾患としての肥満治療におけるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1)療法に関する初のガイドラインを発表した。同ガイドラインでは、健康的な食事、定期的な運動、医療専門家によるサポートを含む包括的なアプローチの一環として、肥満を抱える人々がこの深刻な健康課題を克服できるよう、GLP-1受容体作動薬(GLP-1 receptor agonist;GLP-1RA)の使用を条件付きで推奨している。

一方で、肥満は個人の問題であるだけでなく、多部門にわたる取り組みを必要とする社会的課題であることから、肥満対策には現在のアプローチを根本的に見直し、強固な人口レベル政策による健康増進と肥満予防を通じたより健全な環境の構築、対象を絞ったスクリーニングと体系的な早期介入による肥満および関連併存疾患発症リスクの高い個人の保護、生涯にわたる個人中心のケアへのアクセス確保が必要としている。

条件付き推奨とグッドプラクティスステートメントがそれぞれ2項目

本ガイドラインは、診療ガイドラインの策定に用いられる代表的なフレームワークであるGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)に則してまとめられた。策定グループ(Guideline Development Group)には、研究者や臨床医、倫理学者のほかに、肥満患者も参画した。

2項目の推奨事項、および、2項目のグッドプラクティスステートメント(臨床においてエビデンス評価を必要としないほど明らかな実践事項)が掲げられている。以下は抜粋の意訳。

グッドプラクティスステートメント

肥満は、臨床評価と早期診断から始まる生涯にわたるケアを必要とする慢性の複合疾患である。診断後は、持続的な行動および生活習慣への介入を提供する、包括的な慢性疾患ケアプログラムにアクセスできるようにする必要がある。効果的な疾患管理サポートのため、適応次第で薬物療法、外科手術、またはその他の治療法が使用される場合がある。同時に、肥満に関連する合併症および併存疾患の予防と治療にも取り組む必要がある。

条件付き推奨(エビデンスの確実性は中程度)

肥満の成人では、GLP-1RAまたはGIP/GLP-1デュアルアゴニストが肥満の長期治療に使用されることがある。

グッドプラクティスステートメント

肥満を抱える人は、より体系的な行動介入への第一歩として、状況に応じた行動とライフスタイルの変化に関するカウンセリングを受けるべきである。これには、身体活動や健康的な食習慣などが含まれるが、これらに限定されない。GLP-1RAまたはGIP/GLP-1デュアルアゴニストを処方されている人には、最適な健康成果を増幅しサポートするための集中的な行動療法の第一歩として、行動とライフスタイルの変化に関するカウンセリングを提供する必要がある。

備考(栄養に関する項目のみ抜粋)

健康的な食事の基本原則はすべての人に当てはまる。健康的な食事の基本原則は四つ。1)欠乏症を防ぎ健康を増進するのに十分な必須栄養素を過剰なく摂取する、2)エネルギー摂取量とエネルギー源(脂質、炭水化物、タンパク質)のバランスがとれている、3)健康に悪影響を与える食品、栄養素、その他の化合物の摂取を控える、4)多様性があり、食品グループ内および食品グループ間でさまざまな栄養価の高い食品を含む。肥満の人は、毎日のエネルギー摂取量を減らすなど、減量をサポートするために追加の考慮が必要。ただし、可能な限り、トレーニングを受けた医療提供者と連携して処方およびモニタリングする必要がある。

条件付き推奨(エビデンスの確実性が低)

GLP-1RAまたはGIP/GLP-1デュアルアゴニストを処方されている肥満の成人には、包括的な多面的臨床アルゴリズムの一環として、併用介入として集中的行動療法を考慮してもよい。

関連情報

WHO issues global guideline on the use of GLP-1 medicines in treating obesity WHO guideline on the use of glucagon-like peptide-1 (GLP-1) therapies for the treatment of obesity in adults

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スポーツ栄養Web編集部


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消費者庁は先ごろ、『食品ロス削減ガイドブック(令和7年度版)』のPDFを公表した。国内で発生している食品ロスの実態をデータで示すとともに、解決のために国民一人一人ができることを掲げている。一部の内容を紹介する。

PDFダウンロード

我が国の食品ロス量は約500万トン

我が国の食品ロス量は約500万トン。これは、毎日国民全員が、ご飯茶碗一膳に相当する食品を捨てていることを意味するという。日本は食料の約6割を輸入に依存しており(カロリーベース)、また、日々の食事がままならない家庭も少なくない一方で、これだけの食べものを食べずに廃棄しているということだ。さらに食品ロスに伴い廃棄量が増えて、その処理にかかるコストや排出される温室効果ガスが増えるという問題もある。

『食品ロス削減ガイドブック(令和7年度版)』ではこのような現状について、「情報編」、「実践編(消費者)」、「実践編(事業者・団体)」という三つの視点から解説している。

食品ロスの半分は家庭から、半分は事業者から発生

まず、「情報編」からいくつかの情報を拾ってみよう。

最初に「食品ロス」の定義だが、食品ロスとはまだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品のことで、日本では年間464万トン発生しているとのことだ。このうち、事業者から231万トン(50%)、家庭から233万トン(50%)で、ほぼ半分ずつであることから、食品ロスを減らすためには事業者と家庭の双方での取り組みが必要とされるという。

図1 「食品ロス」って何?

(出典:消費者庁『食品ロス削減ガイドブック(令和7年度版)』)

一方、日本の食料自給率はカロリーベースで38%に過ぎず、諸外国に比べて低く食料の多くを輸入に頼っている。さらに日本では、9人に1人の子どもが貧困であるとされ、日々の食事に困っている子どもが少なくない。

また、食品ロスによる経済損失は合計で4.0兆円に上り、食品ロスによる温室効果ガス排出量は1,050万t-CO2だという。この推計値を国民1人あたりに換算すると、経済損失は3万1,814円/人/年、温室効果ガス排出量は84kg-CO2/人/年となるとのことだ。

食品ロスはどのように発生するのか?

続いて「実践編(消費者)」では、最初に「食品ロス事前チェックシート」で、各人がどのような理由で食品ロスを発生させてしまいやすいのかをチェックできるようになっている。

「作りすぎタイプ」、「買いすぎタイプ」、「ためこみタイプ」、「よくばりタイプ」、「片付け下手タイプ」という五つのタイプに分類されており、例えば「作りすぎタイプ」の人の特徴として、野菜や肉はまとめ買いすることが多い、おかずを多めに作りまとめて大皿に盛りつけて出す、料理や菓子作りが好きで作りすぎてしまう、そのときの気分で献立を決めるなどが挙げられるという。

そして、これら五つのタイプごとに、食品ロスを減らすための具体的なアドバイス(調理法や保存法、買い物のコツなど)が示されている。

企業や団体で実践できること

『食品ロス削減ガイドブック』の最後のパートは「実践編(事業者・団体)」。

食品ロスの要因と対策、規格外食材や流通できなかった食材の活用、製造時に食品ロスにしない工夫、商慣習の見直し、需要に見合った販売等の推進、食品事業者から消費者への情報提供・啓発、飲食店での食べきり等の工夫、企業等による食品ロス削減の事例、フードバンク活動、自治体や地域の連携等による食品ロス削減などがまとめられている。

食品ロス削減において最も影響力を発揮すべき立場とされている栄養士や管理栄養士などは、本ガイドブックに目を通しておくべきかもしれない。

『食品ロス削減ガイドブック(令和7年度版)』PDFダウンロード

『食品ロス削減ガイドブック(令和7年度版)』(消費者庁)

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スポーツ栄養Web編集部


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高齢者の睡眠の質の低下に、栄養不良とフレイルが関与していて、それらが相乗的に作用していることを示唆する研究結果を紹介する。著者らは、適切なタンパク質とエネルギー摂取により栄養状態を改善することが、フレイルの抑止と睡眠の改善につながるのではないかと述べている。

高齢者の「夜中に目が覚めてしまう」という訴えの一因に栄養不良?

高齢者は、「夜中に目が覚めてしまい、朝になるまでうとうとするだけ。眠った気がしない」など、不眠症症状を訴えることが少なくない。このような睡眠の質の低下は心身の健康に負の影響を及ぼし、QOLを低下させてしまう。

これまでの研究で、高齢者の睡眠の質の低下に、栄養状態とフレイルの存在が関連していることが示唆されている。ただし、それら両者が相乗的に睡眠の質を低下させているのかどうかという点は、あまり研究されていない。

この点について、中国の高齢者対象横断研究が実施された。

中国の高齢者対象の横断研究による検討

この研究の参加者は、中国国内の複数の医療機関、介護施設、および地域コミュニティーから募集された1万4,021人。なお、事前の統計学的検討によると、このトピックの検討に必要なサンプルサイズは8,596だった。

研究参加の適格基準は、年齢が60歳以上であり、コミュニケーション能力が保たれていることとされ、除外基準として、精神疾患や認知機能障害および急性疾患などが設定されていた。

睡眠の質は、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh sleep quality index;PSQI)で評価。PSQIは0~21点のスコアで評価され、スコアの高さは睡眠の質の低下を意味する。本研究では5点を上回った場合を、睡眠の質が不良として解析した。

栄養状態は、簡易栄養状態評価表(mini nutritional assessment-short form;MNA-SF)で評価。MNA-SFは0~14点のスコアで評価され、スコアの高さは栄養状態が良好であることを意味する。本研究では12~14点を良好、8~11点を栄養不良のリスク状態、7点以下を栄養不良として解析した。

フレイルは、国際栄養・加齢学会(International Association of Nutrition and Aging;IANA)のフレイル指数(FRAIL Scale)で評価。このフレイル指数は0~5点のスコアで評価され、スコアの高さはよりフレイルらしい状態であることを意味し、本研究では3点以上をフレイル、1~2点をプレフレイル、0点を非フレイルとして解析した。

これらのほかに、年齢、性別、教育歴、居住環境、世帯収入、喫煙・飲酒・運動習慣、健康診断参加状況、社会活動参加状況などを把握した。

高齢者の睡眠改善には栄養介入も重要

解析対象1万4,021人の主な特徴は、年齢71(四分位範囲66~76)歳、男性50.64%で居住地域は都市部が47.94%、農村部が52.06%であり、大半(92.09%)が家族と同居しており、5.61%が独居、2.30%が施設入居中だった。

全体の24.38%が、睡眠の質が不良と判定された。栄養状態については、34.04%が良好、55.74%が低栄養リスクのある状態、10.21%が低栄養と判定された。また、13.96%がフレイル、27.06%がプレフレイル、58.98%が非フレイルと判定された。

睡眠の質が良くない高齢者には栄養不良やフレイルが多い

睡眠の質が不良の群はそうでない群に比べて、高齢で女性が多く、教育歴が短い、都市部居住者が多い、世帯収入が少ない、喫煙者・習慣的飲酒者が多い、社会活動参加者が少ない、運動習慣のある割合が低い、健診受診者が多い、社会的支援が少ないといった有意差が認められた。また、以下のように、栄養状態やフレイルの有無についても有意差が認められた。

栄養状態と睡眠の質

睡眠の質が良好な群では、栄養状態良好が34.07%、栄養不良リスク状態が55.34%、栄養不良が10.59%だった。それに対して睡眠の質が不良の群は、同順に33.97%、56.99%、9.04%であり栄養不良リスク状態が多く、分布に有意差がみられた(p=0.025)。

フレイルと睡眠の質

睡眠の質が良好な群では、非フレイルが67.27%、プレフレイルが23.06%、フレイルが9.67%だった。それに対して睡眠の質が不良の群は、同順に33.24%、39.47%、27.30%であり、フレイルやプレフレイルが多く分布に有意差がみられた(p<0.01)。<>

次に、睡眠の質が不良であることを従属変数、栄養状態とフレイルの有無を独立変数として、交絡因子を調整した解析を実施。その結果、栄養不良(OR1.193〈95%CI;1.033~1.379〉)、プレフレイル(OR3.472〈3.158~3.817〉)、フレイル(OR6.050〈5.384~6.799〉)は睡眠の質が不良であることと独立した関連が認められた。ただし、栄養不良がリスク状態にとどまっている場合は、睡眠の質低下との関連が非有意だった。

一般化線形モデルにおいて、栄養状態(B=0.007〈-0.133~-0.147〉)およびフレイル(B=1.145〈0.983~1.306〉)はいずれも睡眠の質が不良であることと有意に関連し、かつ、それら両者の有意な相互作用(B=0.214〈0.011~0.417〉)も認められた。

高齢者の睡眠改善には、栄養状態とフレイルのスクリーニングを

これらの結果について論文では、以下のような考察がなされている。

まず、高齢者の睡眠の質と栄養状態に有意な関連が認められたが、フレイルの有無を関連因子として同時に評価すると、栄養状態は予想外に弱い関連となったことについて、フレイルと栄養状態不良の共分散が大きいためとしている。つまり、フレイルによる睡眠への影響によって、栄養不良への睡眠への影響の多くがマスクされているという。

しかし、それにもかかわらず両者の相互作用は有意であったことから、栄養不良はフレイルの進行と睡眠の質の低下に影響を及ぼすことが示唆されると述べられている。

以上の結果および考察に基づき、論文の結論には、「これらの知見は、高齢者の睡眠改善を目的とした介入において、栄養サポートとフレイルのスクリーニングや管理を優先することの重要性を強調するものだ」と記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of the interaction between nutritional status and frailty level with sleep quality in older adults」。〔Front Public Health. 2025 Sep 23:13:1615643〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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スポーツ栄養Web編集部

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スポーツに関連して子どもに対して行われる虐待行為のタイプが、男子と女子で異なるのかをシステマティックレビューで検討した報告を紹介する。男子には身体的虐待が多く、女子には心理的虐待が多いことや、男子は仲間から、女子はコーチから虐待を受けやすく、虐待を受けた場合、男子はコーチに、女子は親に報告することが多いという。

スポーツにおける子どもへの虐待等の相談窓口

スポーツへの参加は精神的、身体的、社会的な多くのメリットがあり、とくに未成年においては教育の一環としても重要な役割を担っている。その一方でスポーツに関連する暴力などの虐待が、世界的に深刻な問題として指摘されてきている。

スポーツ以外の場面で発生する子どもへの虐待については、子どもの性別により行われる虐待のタイプなどが異なることが報告されている。例えば北米からは、成人から子どもへの虐待として、対象者が女子である場合、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトが多いこと、身体的虐待については男子と女子とで同程度であるとの報告がある。また、虐待を受けた子どもの影響にも性差があることが報告されていて、男子は外在化行動をとりやすく、犯罪につながる可能性が指摘され、女子は内在化して抑うつや不安症のリスクが高まることが指摘されている。

このように、子どもの性別によって受けることの多い虐待のタイプやその反応は異なることが知られているが、そのような性別による差異がスポーツに関連して発生する虐待にも存在するのかどうかは明らかでない。これを背景に、今回取り上げる論文の著者らは、システマティックレビューによる検討を行った。

22件の研究報告を特定し傾向を解析

システマティックレビューとメタ解析の推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに準拠して、PsycInfo、MedLine、Scopusという3種類の文献データベースを用い、それぞれのスタートから2024年5月7日までに収載された論文を対象とする検索が行われた。包括条件は、組織化されたスポーツに参加している18歳以下の幼児や小児、青年の虐待の実態を調査し、性別に定量化されたデータを英語で報告している、査読システムのあるジャーナルに掲載された論文とした。男子または女子のみを対象とした研究、レビュー、学会発表、書籍などは除外した。

3種類の文献データベースの検索で610報がヒットし、重複削除後の509報を3名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。抽出された57報を2名の研究者が全文精査して、21件の研究報告を適格と判定。このほかに、2024年に報告された新たな論文1報を加え、最終的に22件の研究を解析対象として特定した。

これら22件のうち5件はカナダ、3件が英国、2件はオーストラリアで実施され、そのほか、米国や日本などの単一の国で行われた研究が7件で、残り5件は複数の国の回答者が含まれていた。

男子に対しては身体的虐待、女子に対しては精神的虐待が多く行われている

子どもの性別による身体的虐待の頻度の差を検討している研究において、男子のほうが身体的虐待を受けやすいとする報告が4件みられた。一方、女子のほうが身体的虐待を受けやすいとする報告はなかった。1件は、身体的虐待の受けやすさに性差はないと報告していた。

精神的虐待については、男子のほうが受けやすいとする報告が1件、女子のほうが受けやすいとする報告が4件、性差なしとする報告が2件だった。ネグレクトについては同順に、1件、3件、1件だった。性的虐待は、1件、4件、2件だった。

身体的虐待の内容としては、男子ではコーチの指導によるオーバートレーニング、怪我をしている状態でのトレーニング、身体的暴力(突きとばす、揺さぶる、平手打ち、拳で殴る)などが報告され、女子では疲労困憊または怪我をしている状態でのトレーニングの強制などが挙げられていた。

精神的虐待の内容としては、男子ではパフォーマンスに関する罵倒、女子では体重に関する批判が多かった。

性的虐待の内容としては、女子に対しては攻撃性が低く、好意の告白やキスなどが多かった。一方、男子に対しては攻撃性が高く、ソドミー(肛門性向など)やポルノの提供などが多かった。また、性的虐待の加害者が16歳未満の場合の被害者は、男子が多かった。

男子は仲間から、女子はコーチからの虐待が多く、男子はコーチに、女子は親に報告

虐待を受けた子どもにおいて、男子はスポーツ上の仲間から受けることが多く、女子はコーチから受けることが多い傾向が認められた。また、虐待を受けたことを報告する相手として、男子はコーチ、女子は親が多い傾向にあった。

研究の加速とサーベイランスの強化などを提言

論文の考察には、本研究から導き出されたスポーツにおける子どもへの虐待を減らす施策の提案が掲げられている。

その提案では、スポーツに関連した子どもへの虐待の定義と評価手法の確立、および虐待を受けた子どもが報告する際の障壁を明らかにする研究の必要性に言及するとともに、虐待のサーベイランスの強化、および、性別に配慮した教育リソースの開発などが、課題として挙げられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Gender Differences in Sports-Related Child Maltreatment: A Systematic Review」。〔Trauma Violence Abuse. 2025 Sep 27:15248380251372157.〕 原文はこちら(SAGE Publications)

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スポーツ栄養Web編集部


Page 20

スポーツの審判のメンタルヘルスの実態をシステマティックレビューとメタ解析で検討した研究の報告を紹介する。不安や抑うつ症状の有病率、およびそれらのリスク因子と保護因子が明らかにされている。

スポーツの審判員のメンタルヘルスの実態にシステマティックレビューで迫る

スポーツアスリートが多大な精神的・身体的ストレスにさらされていて、メンタルヘルスの不調を来しやすいことについては多くの研究報告がある。一方で、レフリー(referee)、アンパイア(umpire)、ジャッジ(judge)など、日本語でいわゆる審判員と呼ばれる人たちのメンタルヘルスについては触れられることは少ない。しかし実際には、審判員も競技によっては試合に参加しているアスリートと同程度の身体的負荷がかかることがあり、さらに判定に対する選手や関係スタッフからの抗議、試合を円滑に進めなくてはならないというプレッシャー、あるいは観客や世間からの批判という多くの負荷がかかる。

実際、審判員は世界的に離職が多く、平均すると1シーズンを務めた審判員の20~35%は次のシーズンの審判をしていないという報告があり、不安や抑うつ、バーンアウト(燃え尽き)などのリスクが高いという報告もある。ただし、多くの報告は断片的であり、これまでこのトピックに焦点をあてたシステマティックレビューやメタ解析は行われていない。

文献検索について

以上を背景に今回紹介する論文の研究は、審判員における不安や抑うつの有病率、およびそれらのリスク因子と保護因子を、システマティックレビューとメタ解析で明らかにすることを目的に実施された。

システマティックレビューとメタ解析の推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに準拠して、SCOPUS、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOという4種類の文献データベースを用いた検索を実施。初回検索を2023年12月に行い、追加の報告の有無を2024年12月と2025年7月に確認した。

包括基準は、スポーツ審判員のメンタルヘルスに関する定量的なデータを報告している英語で執筆された論文とし、対象競技の種類やレベル、対象者の年齢や経験は問わなかった。質的研究、レビュー、ステートメント、英語以外の論文などは除外した。

4種類の文献データベースで計3,244報がヒットし、重複削除後の2,778報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングによって133報を抽出。なお、採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。全文精査の結果、25件のデータセットを含む26報の報告を解析の対象とした。

審判員の19.1%が不安、20.6%が抑うつを抱えている

特定された研究の特徴

解析対象研究の参加者数は15~4,099人の範囲で合計1万1,618人、平均447人であり、76%が男性、10%が女性、その他は性別に関する情報が記載されていなかった。6件はエリートレベルの審判員に焦点をあてており、残りは準エリートやアマチュアレベルだった。

調査されていたスポーツの中で最も多かったのはサッカーで(研究数〈k〉=13)、次いでバスケットボールであり(k=3)、そのほかにネットボール、バレーボール、ラグビー、アイスホッケー、卓球などの審判員が調査されていた。

7件の研究では、精神疾患症状(不安症やうつ病など)の有病率が報告されていた。このうち2件は縦断的研究(前向きコホート研究など)であり、残り5件は横断的研究であった。

不安または抑うつ症状の有病率

不安と抑うつの有病率のメタ解析に利用可能なデータを報告していた研究は5件だった。いずれも同じ5件の研究であり、おもにエリートまたは準エリートレベルで活動しているサッカー審判員を調査対象としていた。サンプルサイズは合計2,797、中央値433だった。

不安レベルの上昇の有病率は5.5~26.2%の範囲であり、プール解析の結果、19.1%(95%CI;13.4~27.0)となった。抑うつレベルの上昇の有病率は5.3~36.1%の範囲であり、プール解析の結果、20.6%(2.4~32.3)となった。ただし、ともに研究間の異質性が高かった(I2が不安については94.1%、抑うつについては97.3%)。

若年、女性、経験の少なさ、試合スケジュールなどがリスクに

次に、審判員のメンタルヘルスに対するリスク因子と保護因子として報告されている因子を検討した結果、それぞれについて、個人的な要因と環境要因に大別できることがわかった。主な要因は以下のとおり。

メンタルヘルスのリスク因子

個人的要因
若年、女性、メンタルヘルス不調の既往、独身、低収入、教育歴の短さ、達成感の低さ、審判員としての活動継続の意思の低さ、パフォーマンスに関する懸念など
環境要因
試合スケジュールの密度、低いレベルの競技会での審判、高いレベルの競技会での審判、サポートの欠如など

メンタルヘルスの保護因子

個人的要因
高齢、男性、教育歴の長さ、経験年数の豊富さ、メンタルヘルスリテラシーの高さ、周囲に支援を求める姿勢など
環境要因
低いレベルの競技会での審判、高いレベルの競技会での審判、ワークロードが適切に管理されていることなど

審判員はエリートアスリートと同程度のメンタルヘルスの症状を経験している

論文の結論には、審判員はエリートアスリートと同程度のメンタルヘルスの症状を経験しており、若年、経験の浅さ、社会経済的課題などが潜在的なリスク因子であると総括されている。著者らはまた、審判員の年齢や経験レベルに応じたサポート体制の整備、メンタルヘルスを優先する組織文化の醸成が必要ではないかと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Mental Health of Sporting Officials: A Systematic Review and Meta-analysis」。〔Sports Med. 2025 Dec;55(12):3059-3091〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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身体活動を土曜や日曜などにまとめて行う、いわゆる“週末戦士”であっても、健康のための体力の維持・向上につながっていることを示唆する研究論文を紹介する。著者らは、将来の公衆衛生ガイドラインの改訂にも影響し得る知見だとしている。

ガイドラインの推奨「週に150分の中~高強度運動」を、まとめてやってもいいのか?

世界保健機関(WHO)は成人の身体活動に関して、「中等度から高強度の運動を週に150分以上行う」ことを推奨している。ただし、その目標の達成に際して、小分けにして積み重ねて達成すべきなのか、1回や2回などにまとめて達成してもよいのかという点については触れられていない。一方、米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine;ACSM)は、この身体活動を5日以上に分けて達成することを提案している。

とはいえ、現実的な問題として、現役世代の多くは平日を中心として週に5日は労働しており、身体活動にあてる時間を確保することが困難だ。そのため、週末などに集中して身体活動を行う人が少なくない。このような身体活動パターンは、“weekend warrior”(週末戦士)と呼ばれている。

このような週末戦士型の身体活動パターンも、健康関連指標を良好に保つうえで有用であることを示唆する研究結果が既に報告されている。しかし、それらの報告はサンプルサイズが小さい、または評価項目が限定的であるといった限界点があり、健康の維持・増進に役立つ体力と週末戦士型の身体活動パターンとの関連はよくわかっていない。

これを背景として今回取り上げる論文の研究では、香港の約5千人の一般成人を対象に実施された調査のデータを用いた解析が行われた。

香港の人口構成にあわせて抽出された5千人の住民を対象に横断的検討

この研究では、香港全域の体力調査に参加した、17~59歳の成人5,091人(主要データに欠落のない対象は4,930人)のデータを用いて横断的に解析された。参加者は、香港の人口の年齢と性別の分布に基づいて抽出されている。

身体活動習慣に関する質問の回答を基に、回答者全体を以下のように分類した。

身体活動パターンによる分類

基本の4パターンの分類

  • 非活動群(17.5%):中等度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行っていない群。
  • 身体活動不足群(47.3%):MVPAを行っているものの、ガイドラインの推奨(週に150分以上)を満たしていない群。
  • 週末戦士群(7.8%):ガイドラインの推奨を満たすMVPAを行っており、身体活動の頻度が週に2回以下の群。
  • 継続的運動群(27.4%):ガイドラインの推奨を満たすMVPAを行っており、身体活動の頻度が週に3回以上の群。

追加解析に用いた分類

上記の4パターンを基本として解析したほかに、以下のパターンでの解析も追加した。

身体活動不足群を、身体活動の頻度が週に2回以下の群と、週に3回以上の群の細分化しての解析。および、高強度運動を週に75分以上行っているか否か(かつ、それを達成するための身体活動の頻度)で分類した4パターンでの解析。身体活動の頻度を問わず、週あたりのMVPAの時間を、なし(10分未満)、10~75分未満、75~150分未満、150~300分未満、300分以上で分類した解析。

健康関連の体力としての評価項目

健康関連の体力として、YMCA 3分間ステップテストにより心肺機能を評価しVO2maxを推定した。また、握力を筋力の指標として測定したほか、プランクテストにより筋持久力、シットアンドリーチテストにより柔軟性を評価。さらに、生体電気インピーダンス法により体組成を評価し、脂肪量/除脂肪量を解析に用いた。

そのほかに共変量として、年齢、教育歴、世帯収入、喫煙状況、睡眠の質、血圧、肥満の状態を把握した。

身体活動を毎日続ける時間がなければ、週に1~2回にまとめても構わない可能性

それでは結果をみていこう。解析はすべて、前述の非活動群を基準として比較されている。なお、論文では、交絡因子未調整モデル、人口統計学的因子を調整したモデル、さらに喫煙状況や肥満・高血圧についても調整したモデルでの解析結果が記されているが、ここではすべての因子を調整したモデルの結果を紹介する。

週末戦士でも心肺機能以外の評価指標は非活動群より有意に良好

継続的運動群は非活動群に比べて、評価したすべての健康関連体力(VO2max、握力、筋持久力、柔軟性、脂肪量/除脂肪量)が良好だった(脂肪量/除脂肪量のβ値はマイナス、その他のβ値はプラスであり、すべて有意)。一方、週末戦士群はVO2maxに関しては非活動群と有意差がなかったが、その他の評価指標は有意差が認められた。

身体活動不足群も週末戦士群と同様に、VO2maxに関しては非活動群と有意差がなかったが、その他の評価指標は有意差が認められた。ただし身体活動の頻度で二分すると、週に3日以上の場合は継続的運動群と同様に、評価したすべての健康関連体力が良好であり、一方で週に2日以下の場合、非活動群と有意差のある項目は柔軟性のみであった。

高強度運動の推奨を満たす場合、週末戦士群と継続的運動群はともに有意に良好

次に、高強度運動を週に75分以上行っているか否かでの解析結果をみてみると、週末戦士群と継続的運動群はともに、すべての評価指標について非活動群より有意に良好であった。それに対して身体活動不足群は、柔軟性のみが非活動群より有意に優れていた。

このほかに、身体活動の頻度を問わず、週あたりのMVPAの実施時間との関連を検討した結果からは、週に150分以上ではなく、75~150分の人たちでも、非活動群よりすべての評価指標が有意に優れていることが示された。

著者らは本研究が横断的解析であるために因果関係は不明であること、身体活動パターンを自己申告に基づき評価していること、中等度と高強度の身体活動を評価していて、有用性のエビデンスが近年蓄積されてきている軽強度身体活動を把握していないこと、心血管代謝マーカーとの関連を調査していないことなどの限界点を挙げたうえで、得られた結果を、

  1. 週末にまとめてMVPAを行う人の健康関連体力指標は良好である、
  2. ガイドラインのMVPA推奨量を満たしていなくても、週3回以上実施している、または推奨量の半分を達成している場合、MVPAを実施していない人との比較において、健康関連体力指標が良好である、
  3. 週末に高強度の運動を行う人は、すべての健康関連体力指標が良好

という三つにまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of “weekend warrior” and leisure time physical activity patterns with health-related physical fitness: a cross-sectional study」。〔BMC Public Health. 2025 Oct 3;25(1):3316〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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日本人アスリート向けに特化して開発された食品摂取頻度調査票(FFQ)の有用性を支持する新たなエビデンスが報告された。中学生アスリートにもこのFFQを適用可能であるという。武蔵丘短期大学健康生活学科健康栄養専攻の長島洋介氏らの研究によるもので、「Physical Activity and Nutrition」に論文が掲載された。

日本人ジュニア選手の食事・栄養素摂取量をFFQJAで把握できるか?

アスリートにとって適切な食事・栄養素摂取は、健康の維持・増進はもとよりパフォーマンスの最大化に重要であり、さらにジュニア期では成長・発達のためにも、より精緻なモニタリングに基づく調整が必要とされる。しかし、栄養素摂取量の精緻な調査を全アスリート対象に行うことは現実的でなく、より簡便な手法として食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire;FFQ)を用いた評価が行われている。ただし、FFQは調査対象集団ごとに作成するか妥当性を検討する必要がある。アスリートでは、よく摂取する食品や1回の摂取量が非アスリートと異なる可能性があり、スポーツ栄養領域ではアスリートに特化したFFQが開発されてきている。

我が国でも、日本人の食文化を考慮に入れたアスリート対象のFFQであるFFQJA(FFQ for Japanese athletesの略)が2021年に開発された。このFFQJAは日本人の高校生以上のアスリートでは妥当性が検証されているが、日本人ジュニアアスリートにも適用可能かどうかは明らかでなかった。長島氏らは今回、中学生サッカー選手を対象に、詳細な食事記録およびFFQJAにより栄養素摂取量を評価し、FFQJAの妥当性を検討した。

食事記録とFFQJAによる食品・栄養素摂取量の評価結果の異同を検討

この研究では、埼玉県内のサッカークラブを通じて募集された13~15歳の中学生サッカー選手が対象とされた。研究参加の適格条件として、過去1年以上にわたって週3~4日以上のトレーニングを行い、継続的に試合に参加していることとされていた。113人がその条件を満たし研究に参加したが、食事記録またはFFQJAの回答の不備などにより49人が除外され、64人のデータが解析に用いられた。

食事記録は、平日の練習日、平日の非練習日、および休日の練習日という非連続の3日に(それぞれ3日前後の間隔を設定)取得された。参加者には食事記録ノートやスケールを配布し、摂取したすべての飲食物の種類と量(重量、サイズ)を記録してもらうとともに、それらの写真、および製品ラベル付きの食品はその写真も撮影し提出してもらい、管理栄養士が摂取栄養素量を算出した。

一方、FFQJAによる評価は、最後の食事記録実施日から1週間以内に行われ、過去2週間の食品摂取頻度を把握したうえで摂取栄養素量を算出した。

栄養素別摂取量、食品群別摂取量ともに妥当性が示される

解析対象者64人の年齢は中央値13歳(四分位範囲12~14)、BMIは同18.5kg/m2(17.0~20.1)、体脂肪率10.1%(8.1~13.0)だった。

論文には、食事記録とFFQJAによる栄養素別摂取量と食品群別摂取量の相関(エネルギー摂取量で調整前と調整後)、それらの摂取量の乖離の程度、級内相関(ICC)、および、摂取量の四分位数に基づき4群に分類した場合の誤分類の発生率が示されている。それらの一部を抜粋して紹介する。

栄養素摂取量のFFQJAによる評価の妥当性

エネルギー摂取量の中央値は、食事記録では3,083kcal、FFQJAでは2,906kcalで相関係数(r)は0.483、乖離の中央値は-109.6kcal(-3.4%)であり、ICCは0.417だった。

主要栄養素のうちタンパク質の相関は、エネルギー摂取量による調整前がr=0.433、調整後は同0.392、乖離の中央値は2.0%、ICC0.469だった。同様に、脂質はエネルギー調整前r=0.472、調整後0.476、乖離の程度-10.4%、ICC0.370、炭水化物は調整前r=0.522、調整後0.422、乖離-7.1%、ICC0.460だった。

微量栄養素については、エネルギー調整後の相関係数が0.340~0.722の範囲、乖離の程度は-23.7~39.2%の範囲、ICCは0.118~0.719の範囲だった。

すべての栄養素摂取量の中央値をみると、エネルギー調整後の相関係数は0.477、乖離の程度は-7.2%、ICCは0.469であり、全体としてFFQJAは食事記録よりも栄養素摂取量を過小評価する傾向がみられた。乖離が最も大きかったのはレチノールでありFFQJAが39.2%高く、一方で食物繊維(-27.7%)や鉄(-23.7%)は負の乖離が大きかった。

食品群別摂取量のFFQJAによる評価の妥当性

次に、食品群別の摂取量の評価結果を比較すると、相関係数はエネルギー摂取量による調整前がr=-0.077(砂糖)~0.684(乳製品)の範囲であり、中央値は0.386だった。エネルギー調整後はr=-0.122(砂糖)~0.744(乳製品)の範囲で中央値は0.384だった。

全体として、摂取量の乖離の中央値は-17.6%、ICCは0.214であり、FFQJAは食事記録よりも食品摂取量を過小評価する傾向がみられた。評価した17の食品群のうち、菓子(124.8%)や砂糖(-100.4%)、ナッツ・種子(-100.0%)、海藻(-91.7%)、果物(69.0%)などの乖離が大きく、魚(-0.3%)、乳製品(1.5%)、肉(-5.5%)、油脂(7.9%)、穀物(-9.4%)などは乖離が小さかった。

四分位数に基づき4群に分類した場合の誤分類の発生率

続いて、四分位数に基づき4群に分類した場合の誤分類の発生状況だが、まず、栄養素摂取量については重み付きカッパ係数(κw)の中央値が0.350(0.200〈レチノール〉~0.525〈鉄〉)だった。全体として、同一四分位群に分類される割合の中央値が41%であり、隣接する四分位群(例えば食事記録に基づく第2四分位群との比較でFFQJAに基づく分類の第1~3四分位群)までを含めるとその割合の中央値は83%となった。反対に、第1四分位群が第4四分位群(またはその逆)に分類されてしまうという誤分類の割合は中央値3%であった。

同様に、食品群別摂取量の検討では、κwの中央値が0.275(-0.055〈砂糖〉~0.535〈乳製品〉)であり、同一四分位群に分類される割合の中央値は34%、隣接する四分位群までを含めると77%、誤分類の割合は中央値6%であった。

FFQJAは中学生アスリートの栄養素・食品摂取量のスクリーニングツールになり得る

著者らは、本研究の解析対象が一つのサッカークラブの所属選手のみであること、FFQJAによる評価を食事記録最終日の1週間以内に行っていたため、記憶の影響がバイアスとなっている可能性があることなどの限界点を挙げ、追試の必要性を述べている。そのうえで、「FFQJAの中学生アスリートにおける妥当性は、高校生以上のアスリートにおける妥当性と同等であることが明らかになった。一部の栄養素や食品群については過小または過大評価する傾向があることに注意を要するものの、食事摂取量の適切さのスクリーニングや栄養指導または研究目的での使用に適したツールと言える」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Food frequency questionnaire for Japanese athletes: validation with junior high school athletes」。〔Phys Act Nutr. 2025 Dec;29(4):23-31〕 原文はこちら(Korean Society for Exercise Nutrition)

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スポーツ栄養Web編集部


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2025年もスポーツ栄養Webでは、スポーツ栄養を中心に食事、運動、健康など皆さんを元気にする幅広い情報をお届けしてきました。今年のランキングを見ると、日々の生活やスポーツにすぐ生かせるテーマが多くの関心を集めたことがわかります。

なかでも、筋力トレーニングに取り組む人に役立つ情報が数多くランクインしました。タンパク質やプロテイン、クレアチンといった身近な栄養素・栄養成分の話題に加え、「いつ食べるのがよいのか」「どのように取り入れるとよいのか」といった、筋トレと食事の関係をわかりやすく解説した記事が多く読まれています。

また、体重や体型、健康との関係を扱った記事や、熱中症対策、子どもや若い世代の体の変化に関する内容にも注目が集まりました。研究結果だけでなく、学校や家庭、指導の現場で「すぐに使える」資料やチェックシートが支持されたことも、2025年の特徴といえるでしょう。

このアクセス数ランキングを通して、2025年に多くの人が関心を寄せたテーマをあらためて振り返り、健康づくりや運動、筋力トレーニングとの向き合い方を考えるヒントにしていただければ幸いです。

スポーツ栄養Webでは、2026年も「スポーツ栄養で、日本を元気に!」を合言葉に、皆さんの毎日やスポーツライフをより健康的にする情報を、わかりやすく、継続してお届けしていきます。

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スポーツ栄養Web編集部


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脊髄損傷または下肢切断後のパラアスリートの栄養戦略を比較検討した論文を紹介する。どちらのパラアスリートも個別化された戦略が重要ではあるが、全体としては、エネルギーの摂取量と消費量、心肺運動負荷検査(CPET)の反応は類似しているという。イタリアからの報告。

脊髄損傷アスリートに比べ下肢切断アスリートの栄養は不明点が多く残されている

脊髄損傷と下肢切断はいずれも下半身に障害が生じ、その障害が永続的と診断されたアスリートはパラアスリートとして活動可能。パラアスリートには健常者アスリートとは異なる栄養戦略が必要とされ、まだエビデンスは少ないながらも、脊髄損傷によるパラアスリートの栄養戦略に関する知見は比較的充実しつつある。それに対して下肢切断によるパラアスリートの栄養戦略に関する知見は少ない。

例えば脊髄損傷によるパラアスリートでは、VO2maxが健常者アスリートより低いこと、グリコーゲン貯蔵量が少ない可能性のあることなどが報告されているが、下肢切断によるパラアスリートにもそのような変化や傾向が認められるのかは十分検討されていない。今回取り上げる論文の著者らは、このギャップを埋めるために以下の検討を行った。

下肢切断パラ選手の栄養戦略は脊損パラ選手に適用される戦略をベースに個別化すべき

この研究では、イタリアで2022年の5月と9月に実施されたトレーニングキャンプへの参加者から被験者を募集した。39人(脊髄損傷19人、下肢切断20人)のパラアスリートが適格条件を満たし、そのうち25人(同順に13人、12人)が研究参加に同意した。なお、研究参加者全員で、2022年の同国ベテラン全国大会において、6競技、20個のメダルを獲得した。

調査項目は、自記式質問票によるものとして、アスリート向けアレルギー質問票(allergy questionnaire for athletes;AQUA)、北欧筋骨格質問票(Nordic Musculoskeletal Questionnaire;NMQ)、飢餓症状質問票(Starvation Symptom Inventory;SSI)、アルコール使用障害同定テスト(alcohol use disorders identification test;AUDIT)、地中海食遵守度(Mediterranean diet adherence;MDS)を用い、また、神経性腸機能障害(neurogenic bowel dysfunction;NBD)、および、摂食障害傾向を表すと考えられているオルトレキシア(score for orthorexia;ORTO-15/ORTO-7)の程度を評価した。

測定項目としては、食事性酸素ラジカル吸収能(oxygen radical absorbance capacity;ORAC)、エネルギー摂取量、基礎エネルギー消費量(basal energy expenditure;BEE)、体組成、握力、最大酸素摂取量(VO2peak)、最大パワー、最大心拍数、運動後のケトーシス、心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise test;CPET)後の抗酸化反応などを含めた。

研究参加者の特徴と両群の比較

研究参加者のうち、脊髄損傷のパラアスリートは全員、下肢切断のパラアスリートは23%が車椅子を使用していた。その他の主な特徴は以下のとおり。いずれも、脊髄損傷群、下肢切断群の順。

年齢45.2±3.4、45.2±3.0歳、障害発生からの経過14.7±3.3、15.7±3.3年、競技歴8.0±1.6、8.2±1.7年、トレーニング時間5.9±0.8、5.5±0.7時間/週、睡眠時間は中央値8.0(四分位範囲7.2~8.0)、同7.0(6.0~8.0)時間。

行っている競技は、脊髄損傷群が陸上、アーチェリー、ハンドバイク、車椅子バレーボール、水泳、パワーサッカー。下肢切断群が陸上、バスケットボール、自転車、車椅子バレーボール、水泳、車椅子テニス。

上記の他、アスリート向けアレルギー質問票(AQUA)や飢餓症状質問票(SSI)のスコアなどは両群間に有意差がなかった。ただし、神経性腸機能障害(NBD)のスコアは、下肢切断群は中央値0.0(四分位範囲0.0~0.0)点であるのに対して、脊髄損傷群は同8.0(4.5~11.7)点であり有意に高かった。

体重、BMI、ウエスト周囲長に有意差はなく、体脂肪率(脊髄損傷群、下肢切断群の順に28.8±2.8、25.3±2.5%)、握力(33.8±4.6、42.3±2.9kg)についてはやや差がみられたが統計学的には非有意だった。そのほか、エネルギー摂取量、基礎エネルギー消費量、主要/微量栄養素摂取量には有意差がなかった。

位相角とオルトレキシアの評価指標に有意差

体組成関連のパラメーターの中では唯一、利き足の位相角(PhA)に有意差が認められ、脊髄損傷群は3.9±0.4°と下肢切断群の6.7±0.6より低値だった。なお、PhAの低さは栄養状態や細胞機能などが最適でない可能性を示唆している。

また、摂食障害傾向を表すとされるオルトレキシアの評価指標であるORTO15にも有意差が認められ、同順に34.3±1.0、37.8±0.9であった。ORTO15のスコアの低さはオルトレキシアリスクの高さを表すとされており、脊髄損傷群のほうがそのリスクが高い可能性が示唆された。

CPET後の抗酸化反応、グルコース、ケトン体レベルには有意差がなかった。

著者らはこれらの結果を総括して、「本研究により、脊髄損傷パラアスリートと下肢切断パラアスリートは、ライフスタイル、エネルギー摂取量、基礎エネルギー消費量、CPETに対する代謝反応に関して同様の特徴が示された。両群の類似性を考慮すると、下肢切断パラアスリートの栄養戦略は健常者アスリートの典型的な栄養戦略に基づくものではなく、脊髄損傷パラアスリートの戦略を利用し、個別化したアドバイスが必要と考えられる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Comparative Study of Paralympic Veterans with Either a Spinal Cord Injury or an Amputation: Implications for Personalized Nutritional Advice」。〔J Funct Morphol Kinesiol. 2025 Aug 6;10(3):305〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部


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総合格闘技選手の試合前の減量を安全・確実に行うための構造化された戦略の有用性を、前向き介入試験で検討した研究結果が報告された。31人のエリートレベルの選手が参加し、平均10%以上の減量、および計量後から試合開始までに11%以上の増量を達成したという。ブラジルからの報告。

総合格闘技では計量前に極端な減量を行う選手が少なくない

格闘技は体重別階級が設けられており、多くの選手が有利な条件で戦うために計量前に急速な減量(rapid weight loss;RWL)を実施する。報告によると、格闘技選手全体の試合前の平均的な減量幅は5%とされている。それに対して総合格闘技の選手は、より極端な減量を行うことが多く、減量幅が10%を超えることもある。

減量が極端であるほど、疲労、めまい、動悸、痙攣などを経験することが増え、トレーニングの質や試合結果へ負の影響を及ぼすリスクが高まる。そのため、最適な減量および計量後の増量のための戦略を探る研究が行われてきている。ただ、これまでに報告されてきたアプローチは構造化されたものでなく、実際の試合に適用して安全性・有効性を検証するという研究が少ない。

以上を背景として今回取り上げる論文の研究は、ブラジルのエリートレベルの総合格闘技選手を試合に出場する前に研究参加登録して、スポーツ栄養士などの専門家の介入のもと体系化されたRWL戦略を適用し有用性を検証するという、前向き介入研究として実施された。

体系化されたRWLアプローチで10%の減量と計量後の増量を安全に達成できるか

この研究の目的は、10%の減量を達成するための戦略を新たに開発し、その適用可能性を探ることとされ、31人のエリートレベルの総合格闘技選手が参加した。研究参加の適格条件は、プロ選手として1年以上の経験があること、急速な減量(RWL)を行い試合に出場する予定があることであり、除外条件として、アナボリックステロイドの使用歴があること、競技を妨げる怪我等の状態があることとされた。

参加選手は全員ブラジル人であり、男性28人、年齢28±4歳で、22.6%は国際大会出場レベル、その他の77.4%は国内大会レベルだった。なお、本研究に参加直後に出場した試合の成績は、21人(67.8%)が勝利し、敗戦が8人(25.9%)、引き分けは2人だった。

研究は試合日の6週間前からスタートし、体重のモニタリングとともに、個々にあわせた日々の食事・水分補給計画が立案された。実際の急速な減量(RWL)および計量後から試合までの増量に充てられた期間は、平均34±19.5日だった。

スポーツ栄養士の介入によるRWL戦略

試合前の介入期間は大きく以下の四つの段階に分類され、スポーツ栄養士が個別介入した。介入に際して、選手は個人用メッセージアプリ(WhatsApp)を用いて毎日、スポーツ栄養士に摂取した飲食物の写真を報告し、指導に対する遵守状況が確認され、是正のアドバイスがなされた。

フェーズ0:RWL開始前の29.2±17日

摂取エネルギー量1,812.3±2501.7kcal。タンパク質31.3%、炭水化物42.8%、脂質23.3%。食物繊維30.3±12.4mg。

フェーズ1:RWL開始後3.5±1.0日

摂取エネルギー量を約30%減少し1,299.7±305.4(前値の-512.7)kcal。タンパク質38.6%、炭水化物34.6%、脂質22.7%。食物繊維18.8±8.4mg。水分摂取量は、1日7.5Lから開始し5.5Lまで減少。

フェーズ2:フェーズ1に続く2.5±0.5日

摂取エネルギー量981.3±154.7kcal。タンパク質45.3%、炭水化物22.4%、脂質27.8%。食物繊維10.0±3.4mg。水分摂取量は、1日4.5Lから3.5Lへと減少。

フェーズ3:計量直前の2.0±0.3日

摂取エネルギー量669.5±167.6kcal。タンパク質51.6%、炭水化物17.4%、脂質30.4%。食物繊維5.2±2.8mg。水分摂取量は、1日1Lから0.5Lへと減少。

計量後の増量戦略

計量をパスした後、直ちに1.5Lの電解質飲料を90分で摂取。全粒穀物や食物繊維の多い食品を避けるようにアドバイスし、試合までの1±0.5日(24~36時間)で2,146.6kcal、タンパク質16%、炭水化物70%、脂質14%、食物繊維7.0±0.5mgを摂取。水分摂取量は、試合の前日が7L、試合当日の試合前が2.5L。

平均7.4kg(10.5%)の減量と、計量後の7.5kg(11.3%)の増量を達成

上記の体系化されたアプローチによる介入の結果、7.238±8.4kgの減量に成功し、これは介入開始時の体重の10.56%の減少に相当する。また、計量パス後の試合までの約30時間で、7.5±1.7kgの増量を達成した。これは計量時の体重から11.25%の増加に相当する。

一連の介入期間中に、58%の選手が疲労を報告した。そのほか、32%が痙攣、22%がめまいを報告。動悸、頭痛、嘔気などは15%未満だった。失神などの重篤な症状は報告されなかった。試合の結果は前述のように、21人が勝利、8人が敗戦、引き分け2人だった。

これらの結果に基づき著者らは、「体系化された栄養アプローチによる試合前の減量は、コントロールされていない他の方法に比べて安全な効果的な代替手段となる可能性が示された。今後、大規模な無作為化比較試験によって、このような手法の生理学的、心理学的、およびパフォーマンスへの影響を検証する必要があるだろう」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「An alternative structured weight management protocol to rapid weight loss in mixed martial arts: a prospective interventional study of pre-competition weight management strategies in professional athletes」。〔Front Nutr. 2025 Oct 8:12:1581698〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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スポーツ栄養Web編集部


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トップレベルで活躍している女性アスリートの中で、出産後も競技スポーツを続けている選手を対象に、出産の経験や復帰後のパフォーマンスなどを調査した結果がカナダから報告された。アスリートの育児支援、授乳とトレーニングの両立など、多くの課題が浮き彫りにされている。

出産後も競技スポーツを継続しているカナダのトップ女性アスリート対象調査

かつてエリート女性アスリートの多くが家庭をもつとともに競技スポーツからは引退していたが、今日では結婚・出産後も活躍し続ける選手が増えてきている。また、産後のスポーツ活動に関する推奨事項も既に存在する。ただしその推奨は主としてレクリエーションレベルのアスリートに対するものであり、根拠とされたエビデンスの質も高いとは言えない。現状において、エリート女性アスリートの出産とその後のスポーツへの復帰に関する情報は乏しい。

これを背景としてこの研究では、カナダ国内の出産後のアスリートを対象とするオンラインアンケート調査が行われた。調査期間は2023年11月~2024年7月で、回答の適格条件は、カナダにおいて全国レベル以上の競技会に参加し、キャリア中に出産を経験して出産後に復帰しようとしたことのある女性アスリート。妊娠前または妊娠中に引退したアスリートや、出産後に復帰を目指さなかったアスリートは除外された。

この適格条件を満たすアスリートはそれほど多くないと予測されたため、サンプル数を確保するためにソーシャルメディアを活用するなどして回答を呼び掛けた。なお、回答は匿名とした。

解析対象アスリートの特徴

受付期間中に回答した17人に対して適格性が調査され、競技レベルが十分でない、出産の時期がキャリア期間に重複していないとの理由で3人が除外された。ほかに4人が回答を終了しなかったため、解析対象は10人となった。

10人のうち人口統計学的特性のセッションに回答したアスリートは9人であり、年齢中央値38歳(範囲29~43、四分位範囲8.5)で、全員が法的な婚姻状態にあり配偶者と同居している白人女性だった。2人は出産後に復帰後、調査回答時点では引退していた。

参加競技は7人が陸上、2人がバスケットボールで、競技歴は平均24年(範囲2~30)、エリートレベルでの競技歴は16年(2~25)であり、全選手が国家代表の経験を有しており、6人はオリンピックまたは世界選手権に出場していた。

トップアスリートの出産後の競技への復帰を妨げる因子が明らかに

この調査では、妊娠から出産、その後の復帰に関して、10以上のセクションにわたるさまざまな質問が行われ、論文ではその解析結果が報告されている。ここではその一部を紹介する。

妊娠計画と出産

妊娠計画に関するセクションについては10人が回答していた。

全員が計画的に妊娠し、競技スケジュールなどを考慮して妊娠していた。妊娠に要した期間は1カ月未満から1年以上までと広範囲に分布しており、5人が1年以上を要していた。半数以上の選手が計画した期間内に妊娠しなければならないというプレッシャーを感じたと回答し、その大半は主要な大会を欠場したくないという理由だった。

子どもの数は、1人が50%、2人が40%、3人が10%であり、初産年齢は平均32.5歳(26~36歳)で、20%の選手が帝王切開による出産を経験していた。

母乳育児

10人全員、母乳育児をしたと報告した。授乳期間について回答した9人中7人は1年以上と回答した。

全員が授乳中もトレーニングを続けられたと回答した一方、80%はトレーニングスケジュールと授乳のタイミングの調整が困難と報告した。また1人のアスリートはトレーニング再開のために授乳を中止していた。

授乳を続けながら競技に復帰したアスリートの大半が、子どもを競技会場に連れて行くことの苦労を報告した。スポーツ界におけるこの領域のサポートは不足しており、会場内でベビーカーの使用が許可されていなかったり、授乳室がなかったり、海外遠征時に子どものケアにあたる保護者を帯同する資金を得られなかったと述べた。

トレーニングパターン

妊娠中のトレーニング

10人中7人が妊娠中もトレーニングを続けていた。他の3人のうち1人も妊娠中に活動は続けていたものの、競技に特化したトレーニングは行わなかったと回答し、別の1人はコーチからの指導がなかったため妊娠中にはトレーニングを行わなかったと述べた。もう1人は早産のリスクを指摘されたためトレーニングをしなかった。

妊娠中にトレーニングを継続した7人のうち6人は、第3三半期も含めて妊娠中の全期間、トレーニングを行っていた。妊娠前の週あたりのトレーニングセッション数は中央値10回で計12時間であり、妊娠初期には7回、8時間、妊娠の経過とともに6~4回、7~4時間へと減少していた。

出産後のトレーニング

9人が出産後にトレーニングを再開していた。別の1人は妊娠前の怪我が妊娠中に放置されていた影響で、出産後のトレーニング再開が妨げられた。

出産後のトレーニング量は12週間を過ぎると、大幅に増加していた。75%は12週間以上経てから妊娠前のトレーニングレベルに到達し、25%は10~12週間で到達していた。

出産後のパフォーマンス

出産後にトレーニングを再開した9人のうち7人が競技に復帰した。産後の最初の競技出場までの期間は中央値8カ月(4~11)だった。

出産後のパフォーマンスは、向上したと回答した選手が4人、1人は不変、低下したとの回答が2人だった。パフォーマンスが向上または不変だった5人は全員が陸上競技の選手であり、このうち4人は回答したパフォーマンスレベルに達するまでに1年以上かかり、1人は3カ月未満で到達していた。

出産後の競技会への参加頻度は選手によって大きく異なり、1人は出産前の1割未満に低下していたが、3人は出産前よりも増えていた。

本人の反省や意見

競技スポーツに復帰した7人のアスリートのうち、5人は育児との両立が産後復帰の大きな障壁になったと述べた。1人のアスリートは、適切な栄養摂取と体系的なスポーツトレーニングへの復帰に関する情報が不足しており、そのことが復帰をさらに困難にしていると回答した。

1人を除くすべての選手が、産後の復帰と育児の両面において、配偶者や家族の存在と精神的な励ましが重要だったと語った。

文献情報

原題のタイトルは、「Exploring the postpartum return to sport and performance in Canadian elite athletes」。〔Front Sports Act Living. 2025 Oct 7:7:1665212〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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スポーツ栄養Web編集部

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