マクロスコープ:政府与党内、日米会談への評価広がる トランプ氏の真意不明とも
[東京 23日 ロイター] - 米ワシントンで19日に開かれた日米首脳会談を受け、政府・与党内では高市早苗首相の外交姿勢を評価する意見が多く聞かれた。ホルムズ海峡への自衛隊派遣は現時点で回避されていると見られ、訪米前にささやかれた「最悪のシナリオ」に至らなかったとの安堵感があるからだ。ただ、会談後初めての平日となった23日、政府の中枢からは日本側の説明にトランプ米大統領が本当に納得したのか疑問を投げかける声も上がった。
<「経済はノーサプライズ」>
「高市氏は全体的に外交がうまい。外交は経験でなくセンスだなと思った」。自民党の政務三役経験者は首脳会談後、ロイターの取材にこう話した。同党の参院議員も「一番評価したのは高市氏がトランプ氏と対等に話せたことだ」と指摘。別の政務三役経験者も「トランプ氏から無理難題を押し付けられずに済んだのは最大の成果だ」とした上で、「日本が自衛隊の艦船を派遣しないことが一番大事。イラン側も高市氏の姿勢を評価してくれるのではないか」と期待感をにじませた。
経済関係の議題については、政府内にも「事前の想定通りだった」との見方が広がっている。日本側は首脳会談で、米国の追加関税に端を発した対米投融資について、「第2陣」として計730億ドル(約11兆6000億円)のプロジェクトで合意。これに、ある政府関係者は「経済・通商面ではノーサプライズだった。すべて事前に閣僚、事務レベルで調整していた通りに進んだ」と胸をなでおろした。
政府は当初、トランプ氏が土壇場で無理な投資を提起するなど不測の事態を想定していたが、米国産エネルギーの輸入拡大など対米投融資にも絡む「新たなカード」を用意したこともあり、無難に乗り切った形だ。
<「誰も語ろうとしない」>
一方、最大の焦点だった中東情勢への自衛隊の関与については、疑念もくすぶる。政府の中枢を担う前出の関係者は「高市氏からトランプ氏に対して『日本にはできることとできないことがある』と説明したのは事実だ」と述べる一方、「ではそれにトランプ氏がどう反応したのか、米国に同行したメンバーが誰も語ろうとしない」と明かす。
トランプ氏が高市氏の説明に納得していなかった場合、日本はより踏み込んだ「関与」を検討する必要が出てくる可能性がある、とも同関係者は付け加えた。ある経済官庁幹部も「表面上は『密約』のようなことはなかったように見える」とする一方、「内々どういう話があったかはまだ聞こえてこないので分からない」と多くを語らなかった。
木原稔官房長官は23日午前の記者会見で、首脳会談で自衛隊派遣を約束したのか記者団から問われると、「日本として何か具体的な約束をした事実はない」と語った。
高市氏は首脳会談直後、記者団に「機微なやりとりだが、やはりホルムズ海峡の安全確保ということは非常に重要だということだった。ただ、日本の法律の範囲内でできることとできないことがあるので、これについては詳細に、きっちりと説明をした」と話している。
首脳会談が終わっても、高市氏が求める「事態の早期沈静化」が実現したわけではない。トランプ氏の発言も一貫性を欠いており、日本政府は引き続き情勢を慎重に見極める構えだ。前出の関係者は「米国が中東への関与を段階的に弱めていく事態に備える必要がある」とも案じる。「米国が中東から引き揚げ、イスラエルだけが戦っている。それでも相変わらずホルムズ海峡は通れない。そうなった場合に日本に何ができるのか。米国のいない『有志連合』ができた場合、どう関わるべきか。考えなければならない課題は山積している」
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)
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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。