準備した国会での訴え「馬鹿らしく…」直前に出席拒んだ冤罪被害者 [福井県]:朝日新聞

ストーリー

荻原千明

 刑事裁判をやり直す再審制度見直しのための改正刑事訴訟法が17日、国会で成立した。その3日前、参院法務委員会で意見陳述を予定していた冤罪(えんざい)被害者の男性は、直前に出席を取りやめた。「馬鹿らしくなった」という。なぜ、そう思ったのか。

改正刑訴法が成立した日の夜、思いを語る前川彰司さん=7月17日、福井市、荻原千明撮影

 前川彰司さん(61)。福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件で有罪となり服役し、昨年8月に再審で無罪が確定した。

 参院委を翌日に控え、福井から東京に発つ直前の13日昼、電話で知人らとやりとりする中で、「改正法は17日に成立する見通しだ」と告げられた。

 気持ちの糸が切れた。

 「一生懸命、法案を変えるつもりで訴えに行くのに、もうストーリーはできている。俺は何をしに行くのか。馬鹿にしている」

 支援者らに「行かない」と告げ、参院に断りの電話を入れた。東京行きの新幹線の切符は払い戻した。「行かないことで、自分をあらわしたかった」という。

 参考人招致の打診があったのは6月だった。

 日程が決まると、10分間の意見陳述に向け、訴えるべきテーマを便箋(びんせん)2枚の表と裏に手書きでつづった。

 《証拠の全面開示は再審請求における生命線》

 《人間は時に判断を間違う生き物であるという反省の上に立って》

 《再審法が変われば、世の中が変わる》

 《司法の暗闇を照らす明かりに》

参院法務委に向けて前川彰司さんが準備した草稿

 会期末が迫っていることは意識していた。「継続審議になって秋の臨時国会あたりで成立するのでは」と考えていた。

「これでは無実の人が救われない」

 今回の再審制度見直しでは、捜査機関がもつ証拠の開示のルール化と、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)の禁止が議論の柱になっていた。これらの問題点を、身をもって知っていた。

 無罪の決め手の一つとなった…

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