高市早苗政権の成長戦略会議、財源論と切り離し 諮問会議より重視
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高市早苗首相は自らが発足させた「日本成長戦略会議」を経済政策の司令塔に位置づけた。国費を使った大型投資を財源論と切り離す狙いがある。経済財政諮問会議は法律で経済・財政を一体で議論する場だと規定される。成長戦略の具体化に使うのを避ける政権の姿勢が透ける。
日本成長戦略会議は10日、初会合を開いた。月内にも決定する経済対策の重点施策をまとめ、来夏に向け成長戦略の議論も始めた。議長を務める首相は「従来の枠組みにとらわれない大胆な発想で検討を進めていただきたい」と呼びかけた。
人工知能(AI)やバイオなど17の戦略分野を掲げた。スタートアップや労働市場改革など8つの分野横断的課題も挙げた。成長戦略の肝とする「危機管理投資」を具体化する。
首相が毎回指示を出し、各府省に政策を推進させる。関係閣僚のほかに元日銀審議委員の片岡剛士氏やクレディ・アグリコル証券の会田卓司氏らの民間議員を入れた。いずれも首相の「積極財政」の考え方に近い。
特徴のひとつは経団連や日本商工会議所、連合という労使トップがメンバーであることだ。岸田文雄、石破茂両政権で司令塔だった新しい資本主義実現会議の構成を踏襲している。
政府は閣議決定で新しい資本主義実現本部を廃止し、日本成長戦略本部を設置した。高市政権の発足に合わせ、すぐに会議の看板を替えられたのは政府だけで決められるからだ。首相のカラーを出しやすい。
首相が議長として経済政策を主導するために設けたのは経済財政諮問会議も同じだ。2001〜06年の小泉純一郎政権で首相が各府省の抵抗を抑えて政策決定する場だった。郵政民営化や社会保障改革などあらゆる課題を取り上げた。
諮問会議は内閣府設置法に規定される。01年に官邸主導の行政組織を目指し、中央省庁再編にあわせて発足した。毎年夏に経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を取りまとめる。
閣議決定を根拠とする成長戦略会議より諮問会議のほうが法的な位置づけは重い。
首相は政府だけで設置を決めた会議を成長戦略をつくる舞台として重視する。理由のひとつは諮問会議の役割だ。内閣府設置法で「経済全般の運営の基本方針」「財政運営の基本」「予算編成の基本方針」など重要事項を調査審議すると明記する。
財政を主要なテーマのひとつと定め、財務省が発言しやすい。「経済あっての財政」を掲げる首相は成長戦略が財源論に縛られるのを嫌う。骨太の方針は成長戦略会議でまとめた内容をそのまま反映させる流れを想定する。
こうした運用はいまに始まったわけではない。12年からの第2次安倍晋三政権で定着したスタイルだ。
諮問会議の開催は小泉政権で年平均30回を超えていた。第1次安倍、福田康夫、麻生太郎各政権でもおおむね30回だった。
第2次安倍政権は民主党政権下で休止していた諮問会議を再開させた。その際に頻度は年20回程度に低下した。直近の石破政権はおよそ1年間の在任期間中に15回だった。小泉政権時代の手法には戻っていない。
政権復帰した安倍首相は閣議決定で日本経済再生本部を発足させ、成長戦略の推進を担わせた。16年には「未来投資会議」を立ち上げた。新原浩朗氏ら経済産業省出身の官僚が切り盛りした。新しい資本主義実現会議や成長戦略会議はこの流れを受け継ぐ。
東大の牧原出教授は「財務省の意向を切り離して単年の予算主義に縛られない経済政策をどう進めるかは従前から議論になってきた」と話す。「官邸主導で政策を決めていた安倍首相の再現を目指している」と分析する。
諮問会議の意義がなくなったわけではない。日銀総裁が出席する特色がある。金融政策や物価動向の分析、中長期の財政見通しを検証する役割を持つ。高市首相は12日の諮問会議で就任後初めて日銀の植田和男総裁と意見を交わす。
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