妙心寺の天球院が期間限定で特別公開中だぞ! この貴重な機会を逃すな!! / 鳥取民と岡山民は特にマスト
JR東海の「そうだ 京都、行こう。」が、また興味深いプランを実現したもよう。今年の夏は妙心寺の天球院だ……! 妙心寺は臨済宗妙心寺派の大本山にして、日本最大の禅寺。
花園駅から徒歩で5分程度の場所に約10万坪にも及ぶ広大な寺域を有し、40以上の塔頭(たっちゅう)を抱える。天球院はその1つ。通常非公開で、次の機会があるか不明……! これは行くしかないだろ!!
・妙心寺
ということでやって来ました妙心寺。
見た感じ、妙心寺は観光客の数自体がとてもまばらだった。この辺はインバウンド客もそんなに来ないようす。落ち着いて観光できる雰囲気だ。
これは意外。もう最近の京都なんて、あらゆる場所にあらゆる国から観光客が来ているイメージだった。場所を選べば、まだこういうスポットがあるんだな。
さて、先に述べた通り、妙心寺の敷地はすさまじく広い。Google Mapで見るとこうだ。花園駅から大きい道沿いに歩いてきたら到着するのが、上の写真の南総門。そして天球院は最北に位置する。
今回、本記事で紹介するのは天球院だけだが、妙心寺は仏殿や法堂など、多くの建築物が重要文化財に指定されており、とても見応えがある。そちらにも目を向けつつ、天球院を目指すと良いだろう。
道中で濃い甘い匂いがすると思ったらクチナシだ。そういえば今が開花シーズン。
京都ではよくその辺でクチナシを見るが、園芸種の八重咲のものも多い。ここのは一重だ。原種か、原種に近いように思われる。
クチナシを過ぎてほどなく天球院に到着!
入り口横には「そうだ 京都、行こう。」の看板が立っていた。今回のキャンペーンのCMやポスターの撮影地でもあるぞ。
・天球院
さて、天球院とは何なのか? ここは戦国大名の池田恒興(つねおき、別名 信輝)の三女 天久院のために、恒興の長男 池田輝政(てるまさ)の孫の光政(みつまさ)が建立したお寺。
資料によって光仲の名も出てくるのは、1631年の建設開始時に支援したのは鳥取藩主だった光政だったが、32年に光政は岡山藩主になり、かわりに光仲が鳥取藩主になってから完成したという流れの影響だと思われる。
つまり天球院は京都にあるが、出資者を考えれば鳥取と岡山みたいなもん。つまり鳥取民と岡山民はマストってことだ。
なお光正は輝政の長男 利隆(としたか)の子で、光仲は六男 忠雄(ただお)の子。どちらにとっても天久院は祖父の妹にあたる。ようは大叔母のためだ。
また天久院ではなく天球院なのは、建立の歳に地中から球が出てきて改名したからだそう。
そういえば、鳥取城の天球丸跡に丸い石垣がある。これは全国でも鳥取城だけのものゆえ、鳥取民にとって砂丘と並びビッグな存在だと思われるが、この “天球” も、天久院の居所があった説に因むものだ。天球院は球に因んだ天球だが、天球丸は丸い石垣ゆえの天球丸ではない。
・狩野
天球院の最大の見どころと言えば、江戸時代のレジェンド絵師、狩野山楽・山雪らによる方丈障壁画などだろう。重要文化財にも指定されている。
今回は取材のために、お寺から特別な許可を得て撮影させて頂いた。言うまでもないが、二次利用及び転載は禁止だ。
黄金に輝く「竹に虎図襖」や「梅花遊禽図襖」などはCanon渾身の高精細複製品で、本物は京都国立博物館で保管されているそう。
ちなみにこちらの「子猷訪戴図」や「山水人物図」のある「上間一の間」には本物が混ざっている。皆さんは見分けられるだろうか?
試される鑑定眼。
気になる答えは……
……
僧侶の案内付きで方丈と書院を拝観できるプランがあるので、それに参加すればきっと教えて貰えるだろう。皆さんの旅の楽しみを奪いたくないので、私からは伏せておく。
このプランで僧侶に案内してもらっている時のみ、方丈の室内と書院に入室できるので、ぶっちゃけこれ一択。
・風情
天球院の見どころは他にもある。個人的に特に美しさを感じたのは、書院と庭園のマリアージュ。こちら、まさに今回のキャンペーンのポスターにもなっている場所だ。
植物は常に美しさを変えるが、こと緑色に関しては今が最も瑞々しいのではないか。
梅雨時期の日本の湿度を孕んだうっすら青みがかった光のもとで、この波打つガラスを通して見る庭園の緑には、独特の良さがあると思うんだよな。
梅雨が過ぎると見え方も変わっていく。このしっとり感は今だけのものだ。梅雨は嫌われがちだが、梅雨ゆえの趣というものもある。その辺を いとをかし していくのがクールなジャパニーズスタイル。
ちなみに庭園はこんな感じ。
ということで、芸術面での見応えも相当ながら、美しさの面でも見応えのある妙心寺の天球院。これまでも公開される機会は限られていたうえ、次はあるのかすら不明だ! この貴重な機会を逃す手はないぞ!!
参考リンク:妙心寺、そうだ 京都、行こう。 執筆・一部撮影:江川資具 Photo:RocketNews24. JR東海、天球院
▼授与品もある。御朱印コレクターは今がチャンス。
▼猫絵業界では伝説的な、杉戸に描かれた狩野の「牡丹睡猫図」。ガラスで保護されている。
▼CM。途中で天球院も写る。