【米国市況】S&P500種が続伸、エヌビディア高い-ドル147円台半ば
13日の米株式市場ではS&P500種株価指数が続伸。貿易戦争を巡る緊張が和らぐとの見方から大手テクノロジー銘柄が買われ、年初来の相場下落を埋めた。4月の米消費者物価指数(CPI)では関税の影響がまだ限定されていることが示された。ドルが全面安となり、円は1ドル=147円台半ばに上昇。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5886.55 42.36 0.72% ダウ工業株30種平均 42140.43 -269.67 -0.64% ナスダック総合指数 19010.08 301.74 1.61%S&P500種は、過去最高値を更新していた2月以来の高値に上昇。同月にはナスダック100指数は1.6%高。半導体株が上げを主導し、フィラデルフィア半導体株指数は3.1%高。ハイテク7社で構成するブルームバーグの「マグニフィセント・セブン」指数は2.2%値上がりした。エヌビディアは5.6%高。
エヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、サウジアラビアの人工知能(AI)企業の巨大データセンタープロジェクト向けに半導体を供給する。
貿易摩擦の緩和と予想外に好調な決算シーズンが楽観ムードを後押ししている。これまでは、米企業が高い業績期待に応えられるのか疑念が広がっていた。トランプ米大統領は株式相場は「もっと大きく上昇する」と述べ、「投資と雇用の爆発的な増加」に言及した。同氏はサウジアラビアが米国に1兆ドル投資すると明らかにした。
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トランプ政権はまた、アラブ首長国連邦(UAE)に対して、エヌビディア製の最先端半導体100万基以上の輸入を認める取引について検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
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米中が互いに関税率を一定期間引き下げることで合意したことを受け、株式相場が急伸する中、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは、投資家はこの流れに追随せざるを得ないとの見方を示した。ジュネーブでの米中貿易協議前にBofAが実施した調査では、ファンドマネジャーの米国株のネットポジションは38%のアンダーウエートと、過去2年で最も弱気な水準だった。
BofAのストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は同調査結果について、米中合意が景気後退や信用市場のショックを回避することを考えれば「弱気で、痛みを伴う取引による株価の小幅な上昇を示唆している」とリポートで述べた。
4月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回る伸びにとどまった。これで3カ月連続で予想より低い伸びとなった。衣料品や新車の価格が落ち着き、企業が関税引き上げ分のコスト転嫁を今のところは急いでいないことを示唆した。
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米中対立の一時的な緩和が市場のセンチメントを支えているものの、貿易摩擦は今後も米経済に悪影響を及ぼす可能性がある。連邦公開市場委員会(FOMC)は年内に0.25ポイント利下げを2回実施するとの見通しがデリバティブ契約では引き続き織り込まれているが、主要銀行は2025年の米利下げ回数見通しを相次いで下方修正。JPモルガン・チェースとバークレイズはいずれも、年内の利下げはわずか1回と予想している。
クリアブリッジ・インベストメンツのジョシュ・ジャムナー氏は「米金融当局と同様、投資家もこの日のCPI統計をあまり重要視しない可能性が高い。貿易合意の見通しや財政調整プロセスに関する詳細の方が、今後数週間は株式にとって重要な材料となる」と指摘。その上で、「この日の統計でネガティブな要素がなかったことは、ヘッジの巻き戻しに伴うリスク資産の漸進的な上昇に寄与する」と述べた。
米中貿易摩擦の緩和を受けて株価が急伸する中、チャートを注視する市場関係者の間では、S&P500種が過去最高値を更新するとの見方が広がっている。マクロ・リスク・アドバイザーズのチーフテクニカルストラテジスト、ジョン・コロボス氏は、2月19日に記録した過去最高値の6144まで、もはや大きなレジスタンス(上値抵抗線)は残っていないとみている。
「S&P500種が200日移動平均線を上回って推移していることも、トレンドが上向きに転じつつあるもう一つの兆候だ」と同氏は指摘。「これにより、下落局面では買い需要が高まる可能性がある。戦略に変化を促し、弱気相場は終わったというシグナルを発している」と語った。
国債
米10年債はほぼ変わらず。米金融当局は関税の影響を精査する中、政策を維持するとの見方も根強い。
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国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.91% 0.4 0.08% 米10年債利回り 4.47% -0.2 -0.04% 米2年債利回り 4.00% -0.8 -0.20% 米東部時間 16時58分トランプ氏はこの日、米金融当局は「欧州や中国が行ったように金利を引き下げなければならない」と主張した。自身のSNSトゥルース・ソーシャルで、「インフレは見られないし、ガソリンやエネルギー、食品などほぼ全てのモノの価格が下落している!!!」と主張。「FRBは欧州や中国が行ったように金利を引き下げなければならない。『遅過ぎるパウエル』は何をしているんだ」と書き込んだ。
JPモルガンは米中の暫定的な通商合意を踏まえ、米経済の成長見通しを引き上げた。年内にリセッション(景気後退)に陥るとの従来予想を取り下げた。
米国担当チーフエコノミストのマイケル・フェローリ氏は「米政権が中国への厳格な関税を最近、一部を緩和したことで、今年中に米経済がリセッションに陥るリスクは低下する」とリポートで指摘。「リセッションリスクは依然として高いが、いまや50%未満に下がったと見ている」と述べた。
外為
外国為替市場ではドルが主要10通貨に対して全面安。米CPIの数字が弱かったことが響いた。円は対ドルで上昇し、一時0.7%高の1ドル=147円38銭まで買われた。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1231.29 -8.74 -0.70% ドル/円 ¥147.49 -¥0.97 -0.65% ユーロ/ドル $1.1184 $0.0097 0.87% 米東部時間 16時58分ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのストラテジスト、ウィン・シン氏は4月の米CPIについて「関税の影響はまだ顕著には表れていない」と指摘。「とはいえ、米金融当局は当面、様子見姿勢を続ける見通しだ」と述べた。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリスト、デレク・ハルペニー氏は、米国と中国が合意した関税の90日間延期は「8月に終了する。7月末に開かれるFOMC会合の直後だ」とリポートで指摘。「従って、両国による今回の発表で7月利下げの可能性は低下し、利下げの時期はさらに後ずれする」と述べた。
日本銀行の内田真一副総裁が13日、金融政策運営について、現在の実質金利は極めて低い水準にあるとし、見通しが実現していけば、「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と説明したことも円が対ドルで買われる材料となった。
原油
ニューヨーク原油相場は4営業日続伸。トランプ大統領が、イランと核合意に至らなかった場合は、同国産原油への制裁を強化すると警告したことが材料視された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)はこの日の上昇で、終値ベースでの年初来安値からの回復率が11%を超えた。トランプ氏はサウジアラビアで演説で、イランと合意に至らなければ、米国はイランのエネルギー輸出に最大限の圧力をかけると発言。米国務省はこれに先立ち、イラン産原油の中国への輸送を支援するネットワークに制裁を科すと発表している。
トランプ氏のイランに対する発言のほか、予想を下回った米インフレ指標や米中貿易摩擦の緩和に伴う安心感も原油の上昇を後押しした。
ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏は「全体的に見て、関税はまだ需要にそれほど影響を与えていない」と指摘。「現在起きている関税引き下げを受けて投資家は最悪のシナリオを織り込まなくなっており、関税が需要に大きな影響を与えない可能性は有意に高まっているように見受けられる」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は、前日比1.72ドル(2.8%)高の1バレル=63.67ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は2.6%上昇の66.63ドル。
金
金相場は上昇。年内利下げ観測を後押しする内容となったCPI統計が意識された。金利低下は、利息を生まない金にとっては追い風となる。
サクソバンクの商品戦略責任者、オーレ・ハンセン氏は、米中貿易対立の大幅な緩和を受けて、ごく短期的には金は値固めモードで推移すると予想。同氏は、金の重要な下値支持線を1オンス=3155-3165ドルとみている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比12.58ドル(0.4%)高の1オンス=3248.97ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、19.80ドル(0.6%)上げて3247.80ドルで引けた。
原題:Stocks Erase 2025 Drop as Nvidia Powers Tech Rally: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Lose Post-CPI Bid, End Cheaper Led by Long End
Dollar Falls After Soft US CPI as Peers Rise: Inside G-10
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Gold Rebounds as Dollar Pushes Lower After Softer US CPI Print