〈密着〉絶滅したはずのガラパゴスゾウガメ、175年ぶりに故郷へ帰る(ナショナル ジオグラフィック日本版)

 エクアドル、ガラパゴス諸島のフロレアナ島で、9人の男たちが軍隊のように一列になって進んでいる。赤道直下の太陽の下、背中に約45キログラムもの箱を背負い坂を上っている。鋭い溶岩石や噴石丘が点在する尾根にようやく辿り着いたとき、彼らは汗だくだった。しかし、休んでいるひまはない。慎重に箱を下ろし、そこからが本番だ。 【関連動画】175年ぶりに故郷に帰った子ゾウガメ 「日陰に入れろ!」 目出し帽とサングラスで日差しから顔を隠した男が叫ぶ。 「こっちだ」。別の覆面の男が指さし、枯れ草を踏みしめてパロサントの木々へと向かった。一行は箱を持ち上げて後に続く。すると、箱の中身が命を吹き込まれたかのように動き出した。  彼らは兵士か、あるいは密売人と見間違われるかもしれない。ある意味ではその両方であり、運搬人であり、探検家であり、ベビーシッターですらある。なぜなら、ガラパゴス国立公園のレンジャーだからだ。  彼らは生物多様性で世界的に知られるこの場所で、野生動物を最前線で守っている。そして、箱の中で音を立てているのは、この島から175年もの間姿を消していた種の子孫、ガラパゴスゾウガメだ。 「これは歴史的な出来事です」と、チームのリーダーであり、ガラパゴス国立公園局の生態系ディレクターを務めるクリスチャン・セビージャ氏は宣言する。  この日の朝、50頭のゾウガメが“帰郷”を果たした。数日以内には合計158頭が放される予定だ。さらに数百頭が再導入を待っており、サンタ・クルス島の繁殖センターにも数百頭が控えている。  もっとも、箱の中のカメはまだ「巨人」とは呼べない。年齢は7歳から15歳。体重は4.5キロから18キロほどだ。  彼らはすでに絶滅したフロレアナゾウガメ(Chelonoidis niger)の交雑種で、フロレアナ島固有の系統と、ウォルフ火山の系統(Chelonoidis becki)の両方を受け継いでいる。一部の交雑種には、同地域のサンティアゴ島やエスパニョラ島の種の遺伝子も含まれている。  過去15年間の繁殖プログラムにより、720頭の新しいフロレアナ島交雑種のゾウガメが育てられた。野生復帰への最後の一歩は、南半球の暑い2月の朝、セビージャ氏らのチームの背中に揺られて踏み出された。 「さあ、行きましょう」とセビージャ氏が言った。氏はこの48時間、船やトラック、そして最後は人力でゾウガメを運び、休みなく働いてきた。  箱が開けられると、若ガメのペアが這い出し、地にのびるつるを食べ始めた。フロッピーハットをかぶり軍用ブーツを履いた、柔らかな口調の米国ニューイングランド出身の男が傘を閉じ、カメラを構える。 「これはいい兆候です」と、写真を撮りながらジェームズ・ギブス氏が言う。保全生物学者であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探究者)でもある氏は、多くの意味でこの瞬間の実現に最も貢献した人物の一人だ。  ゾウガメがゆっくりと歩き去るのを見守るギブス氏の姿は、まるで誇らしげな父親のようだ。「こんな日が来るとは思ってもみませんでした」と氏は言った。

ナショナル ジオグラフィック日本版

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