中国は人民元切り下げ回避、管理緩めるだけ-予測トップのアナリスト
中国はウォール街の一部で予想されているような大幅な人民元切り下げには踏み切らず、管理通貨を緩やかに弱めるだけにとどめる公算が大きい。ダンスケ銀行のチーフアナリスト、アラン・フォンメーレン氏はこうみている。
ブルームバーグがまとめた1-3月の人民元予測でトップとなった同氏は、米国と中国の貿易戦争が悪化すれば、今後6カ月で最大5%元安リスクがあるとみている。中国が慎重に元下落を容認するとの見方だ。
中国当局は関税対策で通貨を使うのではなく、「混沌(こんとん)と不安定の中で世界のアンカー(いかり)となる」という野心的な目標を優先しているという。
同氏の意見は、米関税の影響を打ち消すために中国が意図的に人民元を最大30%切り下げ得るとの一部の予想よりも保守的だ。
人民元の相場動向は、米国が仕掛けた全面的な貿易戦争に中国がどう対処するかの手がかりとなる。米国が課す145%関税による衝撃を和らげるため、新たな刺激策が発表されるのではないかとの期待も高まっている。
コペンハーゲンを拠点とするフォンメーレン氏は現在、中国で銀行やアナリストらとの会合を開いている。「実際に切り下げが行われる可能性はかなり低い」とみており、「中国は今、不安定さを増大させたくはない」と分析。市場の騒ぎは「誇張されていると思う」と述べた。
中国はトランプ政権に対する報復関税を発表。10日の本土市場では人民元が2007年以来の安値となった。オフショア人民元も今週、過去最安値を記録した。
トランプ米大統領とベッセント米財務長官はいずれも、通貨を貿易手段として使用しないよう中国に呼びかけている。
ブルームバーグ「マーケッツ・ライブ」チームのストラテジスト、メアリー・ニコラ氏は「大幅な元切り下げの公算は小さい。むしろ、18年の米中貿易戦争時に採用された戦略と同様、管理された段階的な元安が現実的な道筋だ。資本逃避の圧力を緩和することで中国を支え、また強力な交渉材料を提供し、世界的な通貨安競争を回避することにもつながる」と話した。
フォンメーレン氏は「中国にはそれを実行する手段がある」と説明。また、外貨準備高を活用するだけでなく、「オフショア市場の金利を押し上げる」ことで、人民元売りにコストがかかるようにできるとも語った。
同氏は、米国の貿易関税に対して、中国は他の手段で反撃を続けるとみている。中国でのこの1週間の観察結果として、市民や企業が自国の経済成長を重視していることを踏まえ、例えば人工知能(AI)やロボット工学などの分野で米国に対抗しようとしているという。
「中国が単に格好の標的になることはないし、米国やトランプ氏に何の影響も及ぼさないわけではない」と述べ、中国側は「何も目新しいことではない。米国が貿易制裁を行うことには慣れている」と考えているとの認識を示した。
原題:Shock Yuan Devaluation Calls Are Overblown, Top Forecaster Says (抜粋)