中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が直面する脅威
米国防総省が12月24日に発表した中国軍事力報告書によると、中国は極超音速兵器を含む弾道ミサイルの配備を進めており、米本土西海岸の軍港を攻撃可能な能力を持つことが明らかになった。 【マップ】中国ミサイルの種類と射程 米国がアジア太平洋地域で維持する軍事プレゼンスに対抗する形で、中国は長距離弾道ミサイルを中核とした戦略を採用し、米艦艇撃沈能力を強化している。 国防総省は報告書の中で、「中国は米国本土を直接脅かす能力を保持・拡大しており、アジア太平洋地域の紛争時に米軍の展開を妨げる手段を整えている」と指摘している。中国外交部は本件に関するコメント要請に対し、現時点で回答していない。 西太平洋の同盟国を脅かす中国の軍事的圧力に対抗するため、米国は空母を含む艦隊を「列島線」と呼ばれる島嶼防衛ラインに沿って抑止力を維持しようとしている。 一方中国軍は、米軍の接近や行動を制限する「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略を進めており、西太平洋における有事への米軍介入を阻止する狙いがある。 今回の報告書には、中国の通常弾頭ミサイルの最大射程を示す地図が掲載されている。中でも「DF-27」と呼ばれる大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、最長約8000キロに達し、アラスカ、ハワイ、そして米国本土の西海岸に到達可能とされている。
このミサイルは地上攻撃だけでなく、対艦攻撃にも使用可能。米西海岸には、サンディエゴのノースアイランド海軍航空基地やワシントン州ブレマートンのキトサップ海軍基地があり、合計5隻の空母が配備されている。 また、ハワイは米本土と西太平洋を結ぶ中継地点であり、駆逐艦の母港として機能するとともに、原子力潜水艦も配備されている。 米国際戦略研究所(IISS)の研究員ズザンナ・グワデラによると、DF-27は2021年に米国防総省の報告書で初めて取り上げられたが、中国側は公式には存在を認めていない。 昨年の報告書では、中国がこのミサイルを「配備した可能性がある」とし、通常弾頭による地上攻撃・対艦攻撃にも、核攻撃にも対応できるミサイルと記述されていた。 DF-27にはロケットブースターで高速で飛ばす極超音速滑空兵器(HGV)が搭載できる。HGVは音速の5倍以上で飛行しながら自律的に方向を変えるため、迎撃が極めて困難とされる。 なお、今回の報告書ではDF-27の射程が地図上に新たに記載されたが、これが同ミサイルの「運用開始」を意味するかは明記されていない。昨年の地図には含まれておらず、当時は中国メディアの報道に基づき「アラスカとハワイまで届く」とされただけだった。