住宅地そばの巨大データセンター建設は「新しい公害」か 都市部で相次ぐ摩擦 浮かぶ情報開示と法整備の課題

 生成AI(人工知能)の普及で需要が急増するデータセンター(DC)が、住宅地に近い都市部でも相次いで計画されている。東京都日野市では、日野自動車工場跡地の大規模DC計画をめぐり、住民側が情報開示の不足を訴えて審査請求に踏み切った。千葉県印西市では住民が建築確認の取り消しを求めて提訴。利便性と地域環境をどう両立させるかが問われている。 【写真】昭島市のデータセンター建設予定地。着工前は緑に覆われていた *    *    *  高さ3メートルほどのフェンスが道路を囲むように続いている。 「この向こうに巨大なデータセンター(DC)が建つなんて、想像もしていませんでした」  東京都日野市日野台に暮らす山崎康夫さん(69)は言う。市民団体「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」の共同代表だ。  フェンスの向こうは、日野自動車の工場跡地。ここに、生成AI(人工知能)などの膨大なデータ処理を支えるDCがつくられようとしている。  DCは、インターネット用のサーバーやデータ通信などの装置を設置・運用することに特化した建物の総称。生成AIの急速な普及を背景に、需要が拡大している。 ■日野の大型DC計画、住民側は情報開示不足を問題視  日野市で進む「日野DC計画」を手がけるのは、大手ディベロッパーの三井不動産だ。2023年9月、同社は経営再建中の日野自動車の工場跡地、約11万4千平方メートルを取得。翌24年7月、同社は跡地にデータセンター3棟などを整備する「日野DC計画」を公表した。今年10月ごろ着工し、31年2月の完成を予定している。  計画が明らかになると、地元住民の間に動揺が広がった。DCが建つ西側と北側は、高さ制限が設けられた「第1種低層住居専用地域」になっていて、住宅地が広がる。先の山崎さんの自宅は、建設予定地の西側直近にあり、そこで22年間暮らしてきた。 「まず問題は、建物の高さによる圧迫感や日陰の影響です」  建物の高さは最高点で72メートルに達し、20階建てのマンションに相当する。完成すれば日野市内で最も高い建物となる。その結果、夏至のころには、道路沿いにある公園や山崎さんの自宅などは午前8時半頃まで日が当たらなくなるという。他にも火災や騒音、排熱、地盤沈下などで平穏な生活を侵害されると訴える。  加えて、市民の会側のシミュレーション結果では、稼働による二酸化炭素(CO2)の排出量は日野市の目標値の2倍以上の量となり、周辺の気温を最大3度上昇させる可能性があるという。  市民の会は三井不動産に対し、DC稼働時の電力使用量やCO2排出量、サーバーを冷却する際に生じる空調設備からの排熱量などの開示を求めてきた。だが、同社は情報公開に応じていないという。今年1月と2月、市民の会は市に対し、DC計画を認めた「適合通知」の撤回を求め、行政不服審査法に基づく審査請求を提出した。  山崎さんは「われわれは建設反対ありきではない」と言う。建物の高さや電力消費量をより低く抑えたり、排熱を利用し地域に還元したりするなど、話し合いによって解決できる道はある、という。 「しかし、情報も開示しないまま巨大なデータセンター計画を進めることには納得できません。未来の子供たちに、負の遺産を負わせたくありません」(山崎さん) ■市は「適切に指導」、業者は「圧迫感低減」 住民側は「情報開示不足」を問題視  市の都市計画課は本誌の取材に「まちづくり条例に基づき、市民が意見書を提出する機会を設けるなど一連の手続きを経て事業者(三井不動産)に指導書を交付している。引き続き、まちづくり条例に基づき事業者に対して適切に指導してまいります」と回答した。  一方、三井不動産は本誌の取材に、「建物最高高さを80メートルから72メートルに引き下げたほか、建物西側には最大約78メートルのセットバック幅を設け、敷地北側には約6900平方メートルの公園を計画するなど、圧迫感の低減を図ってきた。さらに歩道状空地や緑地、防災拠点などを整備し、地域住民が安全に利用できる憩いの場づくりや災害時のレジリエンス(復元力)強化にも寄与する計画としている」などと、これまでの経緯を説明した。  市民側が求める電力消費量やCO2排出量、サーバー冷却時の排熱量などの開示については、『年間使用電力量』『脱炭素化に向けた目標値』『温室効果ガス削減方針・取り組み事項』などを記載した『特定開発区域脱炭素化方針提出書』を26年中に公表予定だという。  排熱については、「冷却方式は現時点で未定」としつつ、空冷型では排出空気が浮力によって上昇するため「周辺住民に影響を与える可能性は低い」。水冷型でも、気化熱として吸収されるため「周辺気温の上昇はほぼ生じない」との見解を示した。 「今後もご意見・ご質問等を伺いながら計画へのご理解を深めていただけるよう努めてまいります」(三井不動産)

AERA DIGITAL
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: