米PCE統計、コア価格指数の伸び加速-支出は微増にとどまる
6月の米個人消費支出(PCE)統計では、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するコア価格指数の前月比の伸びが加速。一方で支出は微増にとどまり、利下げへの道筋を巡って金融当局内の見解を二分する力が働いていることが改めて浮き彫りとなった。
キーポイント- PCE総合価格指数は前月比0.3%上昇-予想と一致
- PCEコア価格指数は前月比0.3%上昇-5月は0.2%上昇だった
- 実質個人消費支出は前月比0.1%増加-5月は0.2%減
今回の統計は、金融政策の方向性をめぐってFRB内で見解が分かれている経済の状況を反映している。インフレ抑制の進展は実質的に停滞しており、金融当局者の間ではトランプ大統領による関税政策が物価上昇圧力を一段と強めるとの懸念が広がっている。半面、労働市場の軟化に伴う個人消費の落ち込みが景気全体の減速につながるリスクも意識されている。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は29、30両日に開催した定例会合で、主要政策金利の据え置きを決定。ただ2人の理事が0.25ポイントの利下げを主張して反対票を投じた。パウエルFRB議長は、堅調な労働市場とインフレの上振れリスクを挙げ、当面の金利据え置きを正当化する姿勢を強調した。
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BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「個人消費の減速と関税による財価格の上昇は、FRBの政策運営をさらに複雑にしかねない」とリポートで指摘。「9月FOMC会合での利下げを促すには、インフレ指標のさらなる落ち着き、もしくは経済成長や雇用環境の一段の鈍化を確認する必要がある」と記した。
6月の支出増は非耐久財への支出回復を反映したもの。一方で、耐久財への支出は3カ月連続で減少し、2021年以来最長の落ち込み局面となった。サービス支出も伸び悩み、裁量的な消費の弱さがうかがえる内容となっている。
消費の弱さの背景には労働市場の冷え込みがある。5月に減少した実質可処分所得は6月も横ばいにとどまり、賃金や給与の伸びもわずかだった。8月1日発表の7月雇用統計では、雇用者数の伸びが鈍化し、失業率は若干上昇すると予想されている。
PCE統計とは別に発表された先週の米新規失業保険申請件数は、前週比1000件の増加。また第2四半期(4-6月)の米雇用コスト指数(季節調整後)は前年同期比で3.6%上昇と、2021年以来の低水準に並んだ。こうした状況から、労働市場がインフレ圧力の主因ではないとの見方が金融当局者の間で広がっている。
6月のPCE価格指数は、家具やスポーツ用品、衣料品などの上昇により押し上げられた。これは、輸入関税の一部が消費者に転嫁されていることを示唆している。先に発表された 6月の米消費者物価指数(CPI)では、玩具や家電などトランプ大統領が打ち出した関税措置の影響を受けやすい一部品目が数年ぶりの高い伸びを記録していた。
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住宅とエネルギーを除くコアサービス価格指数は0.2%上昇と、前月と同じ伸び率となった。
統計の詳細は表をご覧下さい。
原題:Key US Inflation Gauge Picks Up on Goods, Spending Barely Rises(抜粋)